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カミサマは味方? 001
しおりを挟む見渡す限り真っ白な世界。
そこにいるのは、僕と、見知らぬ女の子。
「あれ、反応が薄いね。どうやらまだ寝ぼけているみたいだけど、それなら早急に意識を覚醒させてくれたまえ、イチカくん。これから私たちは、大事な大事な話をしなければならないのだから」
「……」
はじめましてなのに名前を知られていることは置いておいて……神様だって?
「漢字じゃなくてカタカナでよろしく。そういうのが意外と重要なんだ、形から入るってやつ……まああもっとも、この場合は形というより設定なんだけどね」
「……僕は、その、イチカ・シリルです」
名乗る前に名前を呼ばれてしまったので変な感じになってしまったが、一応挨拶をする。
僕のお辞儀を見て、カミサマはケラケラと笑った。
「そんなにかしこまらなくていいよ、一夏くん……おっと、これは漢字じゃいけないんだった。ややこしいねー、設定ってやつは。嫌いじゃないけど距離を置きたい、円満に別れた元恋人を彷彿とさせるよ」
どうやらこのカミサマとかいう女子は、お喋りが好きらしい。
それも、自分で完結させる独り言タイプのお喋りだ。
聞いているこちらとしては、迷惑という感想しか出てこない。
「おっと、露骨に私を見る目が悪くなったね? おっけーおっけー、それじゃあまず、君の疑問を解決するところから始めようか。警戒を解いてからでないと話は先に進みそうもない」
僕の疑問は「ここはどこであなたは誰」というシンプルなものなのだが、シンプルが故に難しい問いな気もする。
というか、どんな答えが返ってきても理解できる気がしない。
「第一に、ここがどこかという疑問……これはまあ、精神世界的なものだよ。漫画とかでよくあるだろ? 時間の概念も空間の概念もない、説明の義務も必要もない、そういう場所だと思ってくれたまえ」
「くれたまえって……ちょっと説明が適当過ぎませんか?」
「だから説明じゃないんだって。なんとなくイメージできればいいよ。場所なんて究極、どうでもいいんだから……私と君が話していることが重要で、後は付属品さ」
彼女と彼女が腰かける椅子以外何もない、真っ白な空間。
果てしなく続くようにも見えるし、反対にとても狭くも見える。
場所なんてどうでもいい、か。
「第二に、私が誰かという疑問……これはもう答えたけど、私はカミサマだ。これに関しては説明の義務も必要もあるんだけど、タイミングは今じゃあない。とりあえず、キュートで可愛い女の子が、意味ありげなことをペラペラ喋っていることだけわかっていればいい」
キュートで可愛い女の子はそう言って、舌をペロッと出す。
あざとい表情のつもりなのだろう。
「さて、これで話を進めるための疑問は解決したかな。君は精神世界の中で、可愛い女子の話を聞いている、と……はははっ。これだけ切り取ると、まるで思春期真っただ中のエロガキみたいで笑えてくるね」
「……あの、笑うのはいいんですけれど、そろそろ本題に入って頂けませんか?」
まあ、もし本題なんてものがあればの話なのだが。
この状況が、知らぬ間に寝落ちした僕の見ている夢という説も否定できないのだし。
僕の深層心理は、中学生の女子と話したがっているのだろうか……もしそうだとしたら、嫌な夢過ぎる。
「はははっ。残念ながらこれは夢じゃない。だから目覚めることはない。君が、元いた世界からこの異世界に転生したのが夢でないように……私は君の妄想の産物ではないから安心したまえ、イチカくん」
「……」
彼女は、僕が高野一夏として生きていたことを知っているらしい。
そんなことを知っているのは、恐らく。
神様ってやつだけだろう。
「いくら時間という概念がないといっても、物事には尺がある。テレビコマーシャルを一時間放送したり、ライトノベルの第一巻に百万文字を使ったり、そんな蛮行は許されない……ってことで、パパっと本題に入ろうか」
例えが俗っぽいのは気になるが、しかしどうやら、本題はあるようだ。
僕がここにいる理由……いや、違うか。
場所はどうでもいいと言っていたっけ。
ならば――僕が彼女と話している理由。
カミサマは、不敵な笑みを崩さずに口を開いた。
「単刀直入に言うと、私は君に謝らないといけないんだよ……君のレベルが1のまま上がらないのは、私の所為なんだ。ごめーんねっ☆」
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