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第1章 出会い編
狐につままれる
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人気絶頂の若手女優が自殺した。
連続ドラマ、CM、映画、舞台と活躍し、テレビで彼女の姿を見ない日はなかった。
それほどの人気女優だった。
恋の遍歴はワイドショーで度々取り上げられ、広告を含め、彼女が掲載されていない雑誌はないのでは、と思われる程。
彼女の名前を知らない人でも、顔だけは見たことがある、という人が国民の9割を超えるのではないかというくらい、広く知られている女優。
そんな人気絶頂の最中、彼女は自殺した。
原因は、不明。
彼女の自殺した翌日は、ワイドショーが挙って彼女の死を取り上げた。
1週間も経つと、彼女に関する情報は、すべてのメディアから流れることが無くなった。
追悼番組すら組まれなかった。
私は彼女に好感を持っていた。
所詮、別世界の人間だ。
判断材料は、彼女が出演したドラマと映画。
そのどれもが素晴らしい作品で、頻繁に何かしらの賞を受賞していた。
ミーハーではなく、流行を追うことをしない私でも、面白いと思う作品ばかりだった。
もう彼女が出演する新しい作品を観ることができない。
そう思うと、残念だった。
ファンでも知人でもないので、悲しいという気持ちはなかった。
それでも、彼女の死後の世間の動きには疑問を持った。
職場には彼女の大ファンだという男性が何人もいた。
彼女にしたい、嫁にしたいと、よく聞かされていた。
にも拘らず、
彼女の話をすると、一瞬時が止まったようになり、突然別の話題を話し始めるのだ。
疑問は深まる。
気持ち悪い。
そう思った。
今でも彼女の姿は、街中のポスターや雑誌、彼女が新人の頃脇役で出演したドラマの再放送で、度々見る機会がある。
そこにいるのに、誰も認識していない。
気持ちが悪かった。
彼女が何かの事件に巻き込まれて、実は自殺ではなく殺されていて、情報操作でマスコミで取り上げられなくなる。
フィクションの世界の話ならありえるかもしれない。
けれど、一般人にまで浸透しているのは、どう考えてもおかしい。
私のまわりのすべての人間の記憶から、彼女の存在が無くなっているのだ。
そんな言いようのない気持ちの悪い思いは、彼女が亡くなって1年を過ぎても消えなかった。
『なんで認識阻害も忘術も効かないのかしら?』
聞き覚えのある声が、頭の中に響いた。
続いて、子供のような声が聞こえる。
『女神様が人間世界にいた時のことをこんなにもはっきり覚えている人間は、初めてですね。』
『困ったわ。たまに下界に降りていたこともばれると困るけれど、今回はちょっと興味本位だけで女優というものをやってしまったのに。主神様に叱られてしまうわ。どうしようかしら。』
背筋が凍った。
連続ドラマ、CM、映画、舞台と活躍し、テレビで彼女の姿を見ない日はなかった。
それほどの人気女優だった。
恋の遍歴はワイドショーで度々取り上げられ、広告を含め、彼女が掲載されていない雑誌はないのでは、と思われる程。
彼女の名前を知らない人でも、顔だけは見たことがある、という人が国民の9割を超えるのではないかというくらい、広く知られている女優。
そんな人気絶頂の最中、彼女は自殺した。
原因は、不明。
彼女の自殺した翌日は、ワイドショーが挙って彼女の死を取り上げた。
1週間も経つと、彼女に関する情報は、すべてのメディアから流れることが無くなった。
追悼番組すら組まれなかった。
私は彼女に好感を持っていた。
所詮、別世界の人間だ。
判断材料は、彼女が出演したドラマと映画。
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ミーハーではなく、流行を追うことをしない私でも、面白いと思う作品ばかりだった。
もう彼女が出演する新しい作品を観ることができない。
そう思うと、残念だった。
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それでも、彼女の死後の世間の動きには疑問を持った。
職場には彼女の大ファンだという男性が何人もいた。
彼女にしたい、嫁にしたいと、よく聞かされていた。
にも拘らず、
彼女の話をすると、一瞬時が止まったようになり、突然別の話題を話し始めるのだ。
疑問は深まる。
気持ち悪い。
そう思った。
今でも彼女の姿は、街中のポスターや雑誌、彼女が新人の頃脇役で出演したドラマの再放送で、度々見る機会がある。
そこにいるのに、誰も認識していない。
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けれど、一般人にまで浸透しているのは、どう考えてもおかしい。
私のまわりのすべての人間の記憶から、彼女の存在が無くなっているのだ。
そんな言いようのない気持ちの悪い思いは、彼女が亡くなって1年を過ぎても消えなかった。
『なんで認識阻害も忘術も効かないのかしら?』
聞き覚えのある声が、頭の中に響いた。
続いて、子供のような声が聞こえる。
『女神様が人間世界にいた時のことをこんなにもはっきり覚えている人間は、初めてですね。』
『困ったわ。たまに下界に降りていたこともばれると困るけれど、今回はちょっと興味本位だけで女優というものをやってしまったのに。主神様に叱られてしまうわ。どうしようかしら。』
背筋が凍った。
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