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諜報員からの報告
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『ベルクが一人ぼっちになった』
鼻から滑り落ちる緑の妖精(スリップちゃんと呼ぼう)がそう言うと、5人の緑の妖精さんがやって来た。
『ベルクが手下を蹴った』
『ベルクは手下にメリーアンを連れて来いって言った』
『連れて来ないと手下を処刑するって言った』
『みんな怒って、町から出て行った』
『追手は今は1人もいない』
6人の緑の妖精さん達にラングドシャを1枚ずつ渡す。
それを見た妖精さん達が一斉に寄ってこようとする。
「順番だよ。」
次に来たのは黄色い妖精さん達。
『金庫のお金が無くなった』
『王様に渡すお金がなくなった』
『王様に渡すお金がなくなって、領主が怒ってる』
黄色い妖精さん達にもラングドシャを1枚ずつ渡す。
ひょっとして、色ごとにグループを組んで行動してる?
「ねぇ、ジョルクおじさん。妖精さんの色の違いには、なにか理由があるの?」
「ああ、ほとんどの妖精は使える魔法の属性で色が変わるらしい。」
「そうなんだ。」
色で識別できるって、めっちゃ分かりやすい。
『私は緑の妖精』
『植物とお話ができるの』
『木やお花からお話を聞けるの』
すごい!
『私は土の妖精』
『自我のある土と金属とお話ができるの』
『お家や剣や花瓶や食器からお話が聞けるの』
文化圏で生活している人を調査させたら、最強じゃない?
青い妖精さん達が、私の目の前で高速飛行を始めた。
相当ラングドシャが欲しいご様子。
『私は風の妖精』
自己紹介から始まった。
『私はどこにでも行ける』
『私はどこででも話が聞ける』
あなた達も凄いね。
『領主の家族は金遣いが荒い』
『領主の家族は悪いことをいっぱいしてる』
『領主と家令も悪いことをいっぱいしてる』
『それで金庫のお金が無くなった』
嬉しそうにラングドシャを頬張る風の妖精さん達を横目に、黒い妖精さん達が集まってくる。
『私は闇の妖精』
『私は闇に溶け込める』
『私は影の中を移動できる』
闇の妖精さん達、凄すぎませんか?
『ベルクは勇者様の殺害依頼に白金貨10枚払った』
『冒険者のダミーに白金貨10枚払った』
「ダミー、だと?」
ぶわっと、ジョルクおじさんの殺気が膨れ上がった。
ジョルクおじさん、ダミーっていう冒険者のこと知ってるんだ。
・・・そうなるよね。
私も初めて知った時は、そうなった。
腹が立ったし、お父さんと同じ目に遭えばいいのに、って思った。
つら過ぎた。
今でもつらい。
『ダミーが召喚した魔物が村を襲った』
『ダミーが召喚した魔物を討伐するために、指名依頼が出された』
『指名依頼はベルクが出した』
『領主の名前を騙って出した』
私はそっとラングドシャを黒い妖精さん達に渡す。
嬉しそうな妖精さん達と対照的に、ジョルクおじさんは殺気を抑え込むこともせず、目に怒りを宿している。
私は悲しくなる。
ジョルクおじさんとお母さんには、お父さんの最期を知られたくない。
「ジョルクおじさん、落ち着いて。今のジョルクおじさんを見たら、お父さん悲しむと思う。ね?落ち着いて、これからのことを考えよう?」
何度も深呼吸をして、気持ちを落ち着けて殺気を散らしたジョルクおじさんが、私の目を見る。
真剣過ぎて、怖い。
「アリアはどうしたい。」
「ざまぁはするよ。」
「ざまぁ?なんだそりゃ。」
「ジョルクおじさんが言ったんだよ。妖精さん達のこと「ほとんどの人間は、見ることができないのに声は聞こえるんだ。」って。妖精さん達に、あの領主一家の悪事が暴かれるよう、噂を流してもらうことができるんじゃないのかな?」
「気の長い話だ。」
「お父さんは、復讐なんて望んでいないよ。私たちの幸せしか考えていない。物理的に手を出すのはダメ。」
「また難しいことを・・・お前がそれでいいなら、俺は暫くは大人しくしておいてやる。だが・・・何も変わらないようだったら、動くぞ。」
だめだ。
私ではジョルクおじさんの思いを留めることができない。
ジョルクおじさんの決意は固そうだ。
「その時は、必ず動く前に教えて。」
「考えておく。」
これは、だめかもしれない。
「よーし、お前ら。クラークスの娘アリアと、俺からの依頼だ。領主一家偵察班希望者はソファーの上に、王都で噂をばら撒く囁き班希望者は絨毯の上に、クラークスを殺した冒険者ダミーの偵察班希望者はテーブルの上に別れてくれ。それぞれに依頼内容を伝える。属性ごとに固まるなよ。」
領主一家偵察班には緑と土の妖精多め、王都での囁き班には黒と風の妖精多め、お父さんを殺した冒険者ダミーの偵察班には偏りなく妖精さんが集まり、ジョルクおじさんの指示を聞いていた。
「一番大切なのは、お前達の命だ。もし偵察中にお前達妖精のことが見える人間を見つけたら、何もせずに戻って来い。いいか、自分の命を一番に守るんだぞ。分かったか?」
妖精さん達がみんな片手を上げる。
「クラークスがな、理解できた時には手を上げろって言いだしてな。分かりやすいだろ?」
お父さん、私の転生前の世界でも子供が大勢集まるところでは、同じことしてたみたいだよ。
お父さん、前々世の記憶もあったりして?
鼻から滑り落ちる緑の妖精(スリップちゃんと呼ぼう)がそう言うと、5人の緑の妖精さんがやって来た。
『ベルクが手下を蹴った』
『ベルクは手下にメリーアンを連れて来いって言った』
『連れて来ないと手下を処刑するって言った』
『みんな怒って、町から出て行った』
『追手は今は1人もいない』
6人の緑の妖精さん達にラングドシャを1枚ずつ渡す。
それを見た妖精さん達が一斉に寄ってこようとする。
「順番だよ。」
次に来たのは黄色い妖精さん達。
『金庫のお金が無くなった』
『王様に渡すお金がなくなった』
『王様に渡すお金がなくなって、領主が怒ってる』
黄色い妖精さん達にもラングドシャを1枚ずつ渡す。
ひょっとして、色ごとにグループを組んで行動してる?
「ねぇ、ジョルクおじさん。妖精さんの色の違いには、なにか理由があるの?」
「ああ、ほとんどの妖精は使える魔法の属性で色が変わるらしい。」
「そうなんだ。」
色で識別できるって、めっちゃ分かりやすい。
『私は緑の妖精』
『植物とお話ができるの』
『木やお花からお話を聞けるの』
すごい!
『私は土の妖精』
『自我のある土と金属とお話ができるの』
『お家や剣や花瓶や食器からお話が聞けるの』
文化圏で生活している人を調査させたら、最強じゃない?
青い妖精さん達が、私の目の前で高速飛行を始めた。
相当ラングドシャが欲しいご様子。
『私は風の妖精』
自己紹介から始まった。
『私はどこにでも行ける』
『私はどこででも話が聞ける』
あなた達も凄いね。
『領主の家族は金遣いが荒い』
『領主の家族は悪いことをいっぱいしてる』
『領主と家令も悪いことをいっぱいしてる』
『それで金庫のお金が無くなった』
嬉しそうにラングドシャを頬張る風の妖精さん達を横目に、黒い妖精さん達が集まってくる。
『私は闇の妖精』
『私は闇に溶け込める』
『私は影の中を移動できる』
闇の妖精さん達、凄すぎませんか?
『ベルクは勇者様の殺害依頼に白金貨10枚払った』
『冒険者のダミーに白金貨10枚払った』
「ダミー、だと?」
ぶわっと、ジョルクおじさんの殺気が膨れ上がった。
ジョルクおじさん、ダミーっていう冒険者のこと知ってるんだ。
・・・そうなるよね。
私も初めて知った時は、そうなった。
腹が立ったし、お父さんと同じ目に遭えばいいのに、って思った。
つら過ぎた。
今でもつらい。
『ダミーが召喚した魔物が村を襲った』
『ダミーが召喚した魔物を討伐するために、指名依頼が出された』
『指名依頼はベルクが出した』
『領主の名前を騙って出した』
私はそっとラングドシャを黒い妖精さん達に渡す。
嬉しそうな妖精さん達と対照的に、ジョルクおじさんは殺気を抑え込むこともせず、目に怒りを宿している。
私は悲しくなる。
ジョルクおじさんとお母さんには、お父さんの最期を知られたくない。
「ジョルクおじさん、落ち着いて。今のジョルクおじさんを見たら、お父さん悲しむと思う。ね?落ち着いて、これからのことを考えよう?」
何度も深呼吸をして、気持ちを落ち着けて殺気を散らしたジョルクおじさんが、私の目を見る。
真剣過ぎて、怖い。
「アリアはどうしたい。」
「ざまぁはするよ。」
「ざまぁ?なんだそりゃ。」
「ジョルクおじさんが言ったんだよ。妖精さん達のこと「ほとんどの人間は、見ることができないのに声は聞こえるんだ。」って。妖精さん達に、あの領主一家の悪事が暴かれるよう、噂を流してもらうことができるんじゃないのかな?」
「気の長い話だ。」
「お父さんは、復讐なんて望んでいないよ。私たちの幸せしか考えていない。物理的に手を出すのはダメ。」
「また難しいことを・・・お前がそれでいいなら、俺は暫くは大人しくしておいてやる。だが・・・何も変わらないようだったら、動くぞ。」
だめだ。
私ではジョルクおじさんの思いを留めることができない。
ジョルクおじさんの決意は固そうだ。
「その時は、必ず動く前に教えて。」
「考えておく。」
これは、だめかもしれない。
「よーし、お前ら。クラークスの娘アリアと、俺からの依頼だ。領主一家偵察班希望者はソファーの上に、王都で噂をばら撒く囁き班希望者は絨毯の上に、クラークスを殺した冒険者ダミーの偵察班希望者はテーブルの上に別れてくれ。それぞれに依頼内容を伝える。属性ごとに固まるなよ。」
領主一家偵察班には緑と土の妖精多め、王都での囁き班には黒と風の妖精多め、お父さんを殺した冒険者ダミーの偵察班には偏りなく妖精さんが集まり、ジョルクおじさんの指示を聞いていた。
「一番大切なのは、お前達の命だ。もし偵察中にお前達妖精のことが見える人間を見つけたら、何もせずに戻って来い。いいか、自分の命を一番に守るんだぞ。分かったか?」
妖精さん達がみんな片手を上げる。
「クラークスがな、理解できた時には手を上げろって言いだしてな。分かりやすいだろ?」
お父さん、私の転生前の世界でも子供が大勢集まるところでは、同じことしてたみたいだよ。
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