聖女も聖職者も神様の声が聞こえないって本当ですか?

ねここ

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英雄

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「お父さんが勇者でジョルクおじさんが英雄って、どういうことなのかな。」

ちょっと惚けて聞いてみる。
ジョルクおじさんは、少し考え込んでから、ゆっくりと話し始めた。

「・・・お前が生まれる7年くらい前にな、2人で悪魔を討伐したんだよ。」

「悪魔?」

想定外の答えに、背筋が寒くなる。
お父さんを殺した、悪魔…

「ここ数百年現れていなかったんだけどな。絵本なんかに勇者が悪魔を倒す話があるだろ?あれはずいぶん控えめな悪魔になっているが、国が厳重に保管している歴史書の中には、当時のことが記録として残っている。この前は帝国は自然災害や魔物なら大丈夫っつったがな、悪魔は別だ。」

ジョルクおじさん。
3歳児にその真剣な眼差しは怖すぎます。

「クラークスとは悪魔の討伐で初めて会った。あいつは討伐隊のメンバーじゃなくてな。どこから湧いて来たんだって、最初は警戒してやりあってなぁ。今思うと俺、よく生きてたよ。」

お父さん、何したんですか?

「国が1つ2つ消えるくらいの被害が出ると覚悟していたんだが、クラークスが危なげなく討伐した。俺はほんの少し手伝っただけだったんだが、クラークスが平穏な暮らしがしたいからと、俺に討伐の栄誉を押し付けやがった。」

あっけ。

「俺は国では英雄扱い。んで、クラークスが真の功労者であることを知っている妖精たちは、クラークスを「勇者」と呼ぶようになった。なぜ「勇者」の称号で呼び始めたのかは、俺には分からん。」

んー、なんか、なんかなんだよなぁ。
上手いこと誤魔化してる感が・・・嘘発見機って、創造魔法で作れないかな?
でも、信じてる人に使うのは、違う気がするし。

「満足したか?」
「満足はしていないけど、一応納得しておく。」

「可愛くないぞ。」
「ジョルクおじさんが可愛いと思うのは、お母さんだけでしょ?」

「お前、ほんと、そういうの止めてくれよ。メリーアンの前では、絶対に言ってくれるなよ。」
「心得てますとも。」

「どうだか。とんでも3歳児だからなぁ。」

ぷっくー!
もう応援してやらないぞ?

「クラークスは本当に凄い奴だった。強さはもう、伝説の勇者級だった。誇れよ、お前の父親は「」だったんだ。」

ジョルクおじさんは少し遠い目をして、お父さんのことを思い出しているようだ。

「俺もあんなふうに強くなりたくて、教えを乞うためにクラークスを追いかけまわして、散々嫌がられたなぁ。今ではSランク冒険者として恥じない強さを手に入れたと自負している。クラークスには遠く及ばないが、安心して守られてろ。・・・と言いたいところだが、クラークスの娘のお前には、俺は必要ないかもな。ははっ。」

「そんなことあるわけないじゃん!私はひ弱な3歳児だよ。ちゃんとお母さんと私を守ってください。」

「おう。」

私の頭をぐしゃぐしゃにしながら、ジョルクおじさんは妖精さんたちに声をかける。

「じゃ、報告を聞かせてくれ」

『クッキー美味しい』
『クッキー美味しい』

『クッキー美味しい、もう1枚』
『クッキー美味しい、あと2枚』

「却下」

『英雄はけち』
『英雄はけちんぼ』

『英雄は器が小さい』
『英雄は器がすっごく小さい』

「だぁーもう!クラークスはどうやってこいつらと上手く付き合っていたんだ?」

「妖精さん。ちゃんと報告してくれたら、もう1枚クッキーをあげるよ。報告してくれた妖精さんにだけ、特別だよ。」

けっこうな大音量で、妖精が一度に喋り出した。
五月蠅すぎ~!!

「静かにして~!順番に聞くから!」

まだざわざわしているけれど、さっきよりはましだ。

「みんな並んでください。報告する内容や順番でクッキーの種類や量が変わることはありません。でも私が受けている報告と自分の報告の内容が同じだと思ったら、すぐに私のところに来て一緒に報告してください。では、あなたからお願いします。」

一番近くにいる妖精さんに声をかける。

うん。
この子、いつも私の鼻に座ろうとして、滑り落ちている子だ。
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