聖女も聖職者も神様の声が聞こえないって本当ですか?

ねここ

文字の大きさ
上 下
20 / 21

王都囁き班 1

しおりを挟む
ラングドシャが大のお気に入りになり、勇者様の娘の賢者様の力になれると、王都囁き班の妖精達は張り切っていた。
囁き班の中の黒い妖精達の魔法で、影の中を移動して、あっと言う間にクシールの町から、エターリアナ王国の王都に到着した。

囁き班の任務は、いたずら好きの妖精の得意とするところで、ジョルクの家にいた妖精の中では希望者が一番多かった。
その妖精達から話を聞いたクラークスが大好きな妖精達が、我も我もと参戦し、ちょっと吃驚する数の妖精が王都に入った。

妖精達は3~4人でチームを組んで、王都中に散らばった。

『ウルグス・ダンバルド子爵が国に治めるお金を横領して、国外逃亡を企てている』

『Sランク冒険者のダミーが、ダンバルド子爵家から破格の金額で、裏の仕事を引き受けている』

それに加えて、ダンバルド子爵家の人間の悪行の数々を、ほんの少しのウソを混ぜながら、妖精たちは王都の市場で、酒場で、宿屋で、囁き続けた。
それはもう、楽しそうに。

大好きな、大切な勇者様を殺したやつら。
大好きな勇者様の、大切な聖者様を狙うやつら。
大好きな勇者様の力を宿した、可愛い賢者様を殺そうとするやつら。
絶対に許さないんだよ~、と朝も昼も夜も夜中も、囁き続けた。

噂はあっという間に王都に広がり、王宮で働く多くの官吏にも届いていた。

ところが、不確かな情報を上げると国王が不機嫌になり仕事をしなくなるため、官吏たちは国王には報告しなかった。

王都では赤子でも知っているような噂話が、国王の耳に届かないことに腹を立てた妖精達は、暴挙に出る。
深夜、眠っている国王の耳元で囁いた。

『これは神託である。ウルグス・ダンバルド子爵の家族を徹底的に調べよ。この国に害をなそうとしている証拠が見つかるであろう。神託に従わぬならば、この国は亡びの未来を迎えることとなる。』

そう、神を語ってしまったのだ。

しかし、勇者クラークスを死に追いやり、その家族を不幸に陥れようとしているベルク、ダンバルド子爵の息子が住むエターリアナ王国の、ダンバルド子爵と癒着している国王相手に行ったことだったので、怒れる神様達は、何も見なかった、聞かなかったことにした。

そして妖精達は、ついでだ~っとばかりに、噂が浸透していない王宮内に散って行った・・・





「ウルグスめ!儂が散々目をかけてやったというのに…許さん…許さんぞ!宰相を呼べ!」

偽の神託を受けた国王は、部屋の外にいる護衛に命令した。

自宅に戻っていた宰相が国王の元に参じた時には、1時間以上が経過していた。
国王は憤死しそうなほどの怒りを露わにしていた。

「ウルグス・ダンバルド子爵について、なにか報告はなかったか!?」

宰相は真っ青になりながら答える。

「恐れながら、国王様に申し上げます。ウルグス・ダンバルド子爵についての黒い噂は、現在王都中に広まっております。しかしながら、ただの噂でございます。故に、報告は控えさせていただいておりました!」

怒りに震える国王は、宰相を王笏で殴りつける。
ただの噂が、王都中に広まる訳がないだろう!

「愚か者が!今すぐ王宮内で働く者達を総動員して、ウルグス・ダンバルド子爵とその家族を徹底的に調べよ!お前が惰眠を貪っている間に、神託が下ったのだ。あの者達がこの国に害をなそうとしていると、神託に従わない時は、この国は亡びると!!お前達が無能なせいで、この国が神罰を受けることになるのだぞ!!責任を取れ!」

激高し過ぎた国王は、そのまま倒れて意識を失ってしまった。
そして寝たきりの状態になり、2度とまともに会話をすることができなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】

佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。 人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。 名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。 婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。 それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。 婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。 だけどどうにかなっちゃうかも!? 誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。 作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。 王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。 勢いで描いたショートストーリー。 サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に! 以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

悪役令嬢、まさかの聖女にジョブチェンジ!?

空月 若葉
ファンタジー
 婚約破棄を言い渡された私、クロエは……なんと、前世の記憶っぽい何かを思い出して!?家族にも失望されて……でも、まだ終わってないぞ。私にはまだ、切り札があるんだから! カクヨム、ツギクルにも掲載していたものです。 書き終わっているものを書き直してのせます。146話、14万文字ほど。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~

ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」 聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。 その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。 ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。 王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。 「では、そう仰るならそう致しましょう」 だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。 言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、 森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。 これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。

だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。 ヒロインの意地悪な姉役だったわ。 でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。 ヒロインの邪魔をせず、 とっとと舞台から退場……の筈だったのに…… なかなか家から離れられないし、 せっかくのチートを使いたいのに、 使う暇も無い。 これどうしたらいいのかしら?

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

処理中です...