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白の国境で
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「馬車で3日はかかるんじゃないの?」
エタ―リアナ王国とバラスチアン帝国の、それぞれの検問所の間にある国境の距離の話である。
両国の間には魔物が多く住む山と森が存在している。
その地域は「白の国境」と呼ばれ、どちらの国にも属していない土地である。
魔物は多いが、小規模な集落であれば暮らしていける土地を確保することも可能であるため、どちらの国にも属さない者が、自給自足で暮らしている。
属国があっても柵を嫌い、好んで白の国境で暮らす者もいる。
さっきの台詞は、ジョルクおじさんがいつも徒歩で移動していると聞いての質問だ。
馬車で3日かかるところを、徒歩でって……
「俺は身体強化のレベルが高いからな。走った方がはるかに速いんだよ。馬だの馬車だのは体は楽なんだが、いざという時には壊しちまう可能性が高いからな。自分だけだったら身軽だし。」
そういうことですか。
流石はSランク冒険者ですね。
はるかに速いって、どのくらい速いのか、めっちゃ興味あります。
私も創造魔法で身体強化魔法が創れたら、お母さんにディメンションホーム入ってもらって、どこまでも走って逃げることができるかもしれないですね。
「ほうほう。そうなのですか。ジョルクおじさんはお母さんに会うために、お仕事がお休みになると速攻で走って来ていたんだ。凄い。愛だね。」
ぼんっ、と音がしそうな勢いで、ジョルクおじさんが真っ赤になった。
年齢の割に初心だなぁ。
可愛いかも。
「私たちは白の国境に住んだ方がいい?バラスチアン帝国に行って、市民権を得て暮らすことは難しいんじゃないの?」
「お前、本当に3歳児か?」
「どこからどう見ても3歳児でしょ?私が赤ん坊の時からのお付き合いじゃないですか。生まれてすぐお父さんと一緒に部屋の中に入ってきて、自分のことのように喜んでくれていたの覚えてるよ。」
「まじでとんでも3歳児だな…」
なんでお父さんじゃない男の人が、出産直後の女性のいる部屋に入って来てるんだ?とは思ったけどね。
3人の関係性を考えると、自然なことだったんだと、今では分かっている。
「真面目な話、お母さんが居ない内に、できるだけこの先のことを決めておきたいのですよ。お母さん…弱ってるから、冷静に考えられないと思うんだ。お母さんも私も頼りにしてるんだよ、ジョルクおじさん。」
「おう。頼れ頼れ。取り敢えず俺の実家に行こう。実家に行けば市民権くらいどうとでもなる。」
聞き捨てならないことを聞かされた気がするぞ?
バラスチアン帝国の市民権という名の永住権は、移住者希望者には一生かけても手に入れることが難しいもの、手に入れることができるのはほんの一握りの人だけって、お父さんに聞いたことがあるんだけど。
居住許可権は、毎年申請して認められれば更新。
市民権は、国に貢献して認められないと貰えないんじゃないの?
軽くどうとでもなるものじゃないでしょ。
「実家って…まさか、お貴族様?どこかのご領主様?」
「…貴族、ではないな。」
なんですか、その歯切れの悪さは。
聞きたくないけれど、聞いておかないと激しく後悔する予感がする。
「…ジョルクおじさんのお名前って……ひょっとして家名があったりする…のですか?…フルネーム…をお伺いしても?」
「気持ち悪い話し方すんな。」
小首を傾げての上目遣い攻撃をしてみる。
「フルネーム。教えて欲しいな?」
「……………ジョルク・フォン・クリス・バラスチアン…だな。」
「はあっ!?」
「…だな。」
なにが、「だな。」ですか。
「王子様?」
「一番上の兄貴が、王様やってるだけだ。」
えーっ!!
「だけだ」って、だけだだけで済む訳ないじゃないですか!
それって、王弟殿下ってことですか!?
「貴族、ではないな。」って…間違ってないけど。
間違ってはいないけれども!
吃驚続きの今日の驚いたことランキング、断トツの1位獲得ですよ!
ベスト1ですよ!!
お母さんはそのこと知ってるんですかーっ!?
エタ―リアナ王国とバラスチアン帝国の、それぞれの検問所の間にある国境の距離の話である。
両国の間には魔物が多く住む山と森が存在している。
その地域は「白の国境」と呼ばれ、どちらの国にも属していない土地である。
魔物は多いが、小規模な集落であれば暮らしていける土地を確保することも可能であるため、どちらの国にも属さない者が、自給自足で暮らしている。
属国があっても柵を嫌い、好んで白の国境で暮らす者もいる。
さっきの台詞は、ジョルクおじさんがいつも徒歩で移動していると聞いての質問だ。
馬車で3日かかるところを、徒歩でって……
「俺は身体強化のレベルが高いからな。走った方がはるかに速いんだよ。馬だの馬車だのは体は楽なんだが、いざという時には壊しちまう可能性が高いからな。自分だけだったら身軽だし。」
そういうことですか。
流石はSランク冒険者ですね。
はるかに速いって、どのくらい速いのか、めっちゃ興味あります。
私も創造魔法で身体強化魔法が創れたら、お母さんにディメンションホーム入ってもらって、どこまでも走って逃げることができるかもしれないですね。
「ほうほう。そうなのですか。ジョルクおじさんはお母さんに会うために、お仕事がお休みになると速攻で走って来ていたんだ。凄い。愛だね。」
ぼんっ、と音がしそうな勢いで、ジョルクおじさんが真っ赤になった。
年齢の割に初心だなぁ。
可愛いかも。
「私たちは白の国境に住んだ方がいい?バラスチアン帝国に行って、市民権を得て暮らすことは難しいんじゃないの?」
「お前、本当に3歳児か?」
「どこからどう見ても3歳児でしょ?私が赤ん坊の時からのお付き合いじゃないですか。生まれてすぐお父さんと一緒に部屋の中に入ってきて、自分のことのように喜んでくれていたの覚えてるよ。」
「まじでとんでも3歳児だな…」
なんでお父さんじゃない男の人が、出産直後の女性のいる部屋に入って来てるんだ?とは思ったけどね。
3人の関係性を考えると、自然なことだったんだと、今では分かっている。
「真面目な話、お母さんが居ない内に、できるだけこの先のことを決めておきたいのですよ。お母さん…弱ってるから、冷静に考えられないと思うんだ。お母さんも私も頼りにしてるんだよ、ジョルクおじさん。」
「おう。頼れ頼れ。取り敢えず俺の実家に行こう。実家に行けば市民権くらいどうとでもなる。」
聞き捨てならないことを聞かされた気がするぞ?
バラスチアン帝国の市民権という名の永住権は、移住者希望者には一生かけても手に入れることが難しいもの、手に入れることができるのはほんの一握りの人だけって、お父さんに聞いたことがあるんだけど。
居住許可権は、毎年申請して認められれば更新。
市民権は、国に貢献して認められないと貰えないんじゃないの?
軽くどうとでもなるものじゃないでしょ。
「実家って…まさか、お貴族様?どこかのご領主様?」
「…貴族、ではないな。」
なんですか、その歯切れの悪さは。
聞きたくないけれど、聞いておかないと激しく後悔する予感がする。
「…ジョルクおじさんのお名前って……ひょっとして家名があったりする…のですか?…フルネーム…をお伺いしても?」
「気持ち悪い話し方すんな。」
小首を傾げての上目遣い攻撃をしてみる。
「フルネーム。教えて欲しいな?」
「……………ジョルク・フォン・クリス・バラスチアン…だな。」
「はあっ!?」
「…だな。」
なにが、「だな。」ですか。
「王子様?」
「一番上の兄貴が、王様やってるだけだ。」
えーっ!!
「だけだ」って、だけだだけで済む訳ないじゃないですか!
それって、王弟殿下ってことですか!?
「貴族、ではないな。」って…間違ってないけど。
間違ってはいないけれども!
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