上 下
5 / 21

- side ベルク -

しおりを挟む
「メリーアンを捕まえて別邸に連れて行くのだ!」

ベルクはこの後のことを考えて、嫌らしい笑みを浮かべ続けている。
ベルクの兵士ならず者達も、おこぼれに与れるかもしれないと下卑た笑みを浮かべている。
中には異常な幼女趣味の性癖を持つ者もいた。

メリーアンとアリアは誰から見ても美形の母子だった。

初めてメリーアンを見たベルクはその美しさに惹かれ、自分の嫁にしたいと思った。
メリーアンが結婚していて子供がいると知ると、夫であるクラークスと子を殺し、自分の妾にしようと画策した。

クラークスは優秀なSランクに近いAランク冒険者だった。

何度刺客を送ってもなかなか死なないクラークスに業を煮やして、金に汚いことで有名なSランク冒険者で、性格は悪いが召喚術のランクが高いダミーという冒険者のパーティーに、を成功報酬として提示して、クラークス殺害を依頼した。

ダミーが召喚した魔物による、自作自演の被害を食い止めるため、領主名義でクラークスのパーティーに指名依頼が入った。
ベルクが偽造した、領主名義の依頼書だった。

討伐に向かったクラークスのパーティーは全滅した。

召喚したSランクの魔物だけではクラークス達を殺しきれず、ダミーは悪魔と契約してその力まで借りて、やっとクラークス達殺害の依頼を達成した。
禁忌の悪魔との契約に手を出すほど、成功報酬はだった。

邪魔なクラークスを殺しても、メリーアンはベルクに靡かなかった。
それどころか、隣国のSランク冒険者ジョルクがメリーアンのまわりをうろつき始め、手が出せなかった。
家にもメリーアンとその子供にも、何故か物理的に近づけなかった。

イライラが募る中、メリーアンを監視させていた者から報告があった。

- 娘のアリアの職業とスキルがまったく鑑定できなかったらしい -

チャンスだ!

鑑定できなかったということは、人ではないということだ。
あの子供は悪魔だ。
悪魔を殺して、メリーアンを悪魔を産んだ罪で投獄して、一生俺が可愛がってやろう。

兵舎でだらけ切っていた兵士ならず者達を連れ、メリーアンを捕獲し子供を殺すために急いでメリーアンの家に向かったが、そこはもぬけの殻だった。

「逃げやがったな!すぐに国境を封鎖して捕まえろ!あのバラスチアン帝国の冒険者が連れ出したに違いない!捕まえて殺せ!!」



ベルクが喚き散らしている頃、ジョルクは何事もなく無事に出国し、アリアは透明化インビジブルしてジョルクと手を繋いで歩いていた。
検問所が見えないところまで来ると、街道から森に入り、透明化インビジブルを解く。

「こっちの方が安全かなって思って。せっかく変化チェンジの魔法をかけてくれたのに、なんか、ごめんね?」

コテリと首を傾げて、上目遣いでジョルクおじさんを見上げる。

「本当に頼りになり過ぎだ。俺の良い男ぶりが・・・」

十分良い男だけど、お母さんの前でその台詞言わない方が良いと思うよ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

潦国王妃の後宮再建計画

紫藤市
ファンタジー
内乱の末に潦国の第九代国王に就いた游稜雅は、宰相の娘である桓蓮花を妃として娶った。王妃として後宮で三食昼寝付きの怠惰な生活を送れることを期待して嫁いできた蓮花は、後宮として使用される殿舎が先の内乱で焼け落ちて使えないことや、自分以外の妃がいないことに驚く。王は、戦禍を被った国を復興させるため、後宮再建に使える国費はほとんどないと蓮花に告げる。後宮必要論を唱え、なんとか後宮を再建させようと蓮花は動き始めるが、妃はひとりで良いと考える王や国費の浪費を心配する大臣たちの反対以外にも蓮花の計画を邪魔をする存在が王宮には跋扈していることが明らかになっていく――。 王宮にあるべき後宮を再建しようとする新米王妃の蓮花と、なりゆきで王に即位したものの一夫一妻が希望で妃の計画を阻止したい(蓮花ひとりを寵愛したい)稜雅の、なかなか平穏無事に新婚生活が始まらない王宮立て直し(王妃は後宮の建て直しも希望)の顛末。

【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪

鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。 「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」 だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。 濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが… 「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」

塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした

奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。 そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。 その時、一人の騎士を助けたリシーラ。 妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。 問題の公子がその騎士だったのだ。

ざまぁ系ヒロインに転生したけど、悪役令嬢と仲良くなったので、隣国に亡命して健全生活目指します!

彩世幻夜
恋愛
あれ、もしかしてここ、乙女ゲーの世界? 私ヒロイン? いや、むしろここ二次小説の世界じゃない? 私、ざまぁされる悪役ヒロインじゃ……! いやいや、冗談じゃないよ! 攻略対象はクズ男ばかりだし、悪役令嬢達とは親友になっちゃったし……、 ここは仲良くエスケープしちゃいましょう!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...