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出国準備
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店舗兼住宅は賃貸なので、備え付けの物を除いた、私たち家族の荷物をすべてアイテムボックスに入れるよう想像する。
「収納」
一瞬で薬品や備品が消え、店舗内がガランとする。
刹那、ジョルクおじさんが腰の剣に手を添えて身構える。
「驚かせてごめんなさい!私の創造魔法で作ったアイテムボックスに収納したの。これで荷造りは要らない。すぐに出発できるよ。」
「お、おう。」
「お母さん、家の中の物で私が見たことがある物は全部収納できたと思うけれど、念のため、忘れ物がないか確認してください。急いで!」
鑑定の儀を受けてからまだ一時間も経っていないが、あの男が弱みを握るために監視していたとしたら、もう動いているかもしれない。
ジョルクおじさんは外へ出ると、トントーンとあっという間に屋根の上に上り、周囲を警戒し始めた。
お母さんは、台所、居間、2階をまわって、数分で戻ってきた。
冒険者をやっていただけあって、身体能力は高めなのだ。
「忘れ物は、無かったわ。ただ、庭に大切な花や薬草が・・・諦めるしかないわね。」
お父さんが冒険から帰る度に、お母さんにお土産と言って渡していた花と薬草だ。
そんな顔しないで、お母さん。
「大丈夫!全部持って行く。持って行くお花さんたちを教えて。」
お母さんの手を引いて、裏庭に出る。
「ディメンションホーム!」
ディメンションホームを展開して、お母さんが植えた花と薬草だけでなく、お母さんとお父さんが植えた樹木も土ごと入れていく。
ありがたいことに、持って行きたいものに「中に入って」と思いながら焦点を合わせるだけで、ディメンションホームの中に植え替えられているようだ。
力仕事にならなくて良かった。
お母さんは口をぽかんと開けたまま、その様子を見ている。
そんな姿も可愛いんだから。
屋根からジョルクおじさんが飛び降りてくる。
「準備はできたか?」
「もう少しだよ、ジョルクおじさん。」
最後に。
「お母さんも入って。」
「え?」
お母さんの安全のためだ。
誰の目にもお母さんを触れさせず、この国から出たい。
「この中の方が安全なの。」
お母さんがまた固まってしまった。
「大丈夫。信じて。この中には人が生活できる空間が広がっているから。って言っても、まだ暮らすための家なんかは無いけど、危険のない野山が広がっているだけだから。お願い、暫く中に入っていて。私はお母さんが一番大切なの!守りたいの!」
動かないお母さんに、最後は泣きながら訴えた。
泣きながら訴える私をお母さんが抱きしめる。
「ジョルク、アリアをお願いね。」
「おう。ちびっ子一人だけなら、なんの問題もなく出国できるさ。」
私の額にキスを落としてから、お母さんはディメンションホームに入ってくれた。
不安を隠せないお母さんを安心させるために、ジョルクおじさんがお母さんと一緒に中に入ってから出てきた。
「とんでも3歳児め。」
ジョルクおじさんは、優しく私の頭に手を置く。
「頼りになり過ぎだ。俺の良い男ぶりが霞んじまったじゃねえか。」
言いながら、私に魔法をかけてくれる。
「変化」
私の自慢の栗色の巻き毛は金髪に、碧翠の目は茶色の目に、性別は男の子に見えるように変わった。
ジョルクおじさん自慢の幻想魔法だ。
更に腕輪を付けられる。
先ほどの変化から更に変化をさせる念の入れようだ。
性別は男の子。髪は濃い青、目は空のような青。
これで、魔道具を外された段階で相手は追及を止めるだろうとのこと。
マジックボックスの中から男の子に見える服を取り出して着替え、ジョルクおじさんと手を繋いで国境に向かう。
家から出て5分も経たないうちに、ベルクがお抱えの兵士達を引き連れて私の家があった方向に向かって行くのが見えた。
間一髪!
ジョルクおじさんの危機察知能力と機転の速さに大感謝だ。
お父さんのことは大好きで愛しているけれど、お父さんはもうお母さんを守ることができない。
お母さんはまだ20歳と若いのだ。
この先私を育てるだけに人生を費やすには惜しい、いい女なのだ。
いい女だから、私がいても他の男が放っておかないと思うんだよね。
頑張ってよね。
私はジョルクおじさんを応援するよ。
どんな形でお母さんが受け入れてくれるかは分からないけれど。
私がジョルクおじさんと呼ぶのは、ジョルクおじさんが24歳とお父さんとお母さんよりちょっと年上で、髭面で老け顔だからなのだけれど・・・
これからはジョルクお兄ちゃんと呼ぼうかな。
「収納」
一瞬で薬品や備品が消え、店舗内がガランとする。
刹那、ジョルクおじさんが腰の剣に手を添えて身構える。
「驚かせてごめんなさい!私の創造魔法で作ったアイテムボックスに収納したの。これで荷造りは要らない。すぐに出発できるよ。」
「お、おう。」
「お母さん、家の中の物で私が見たことがある物は全部収納できたと思うけれど、念のため、忘れ物がないか確認してください。急いで!」
鑑定の儀を受けてからまだ一時間も経っていないが、あの男が弱みを握るために監視していたとしたら、もう動いているかもしれない。
ジョルクおじさんは外へ出ると、トントーンとあっという間に屋根の上に上り、周囲を警戒し始めた。
お母さんは、台所、居間、2階をまわって、数分で戻ってきた。
冒険者をやっていただけあって、身体能力は高めなのだ。
「忘れ物は、無かったわ。ただ、庭に大切な花や薬草が・・・諦めるしかないわね。」
お父さんが冒険から帰る度に、お母さんにお土産と言って渡していた花と薬草だ。
そんな顔しないで、お母さん。
「大丈夫!全部持って行く。持って行くお花さんたちを教えて。」
お母さんの手を引いて、裏庭に出る。
「ディメンションホーム!」
ディメンションホームを展開して、お母さんが植えた花と薬草だけでなく、お母さんとお父さんが植えた樹木も土ごと入れていく。
ありがたいことに、持って行きたいものに「中に入って」と思いながら焦点を合わせるだけで、ディメンションホームの中に植え替えられているようだ。
力仕事にならなくて良かった。
お母さんは口をぽかんと開けたまま、その様子を見ている。
そんな姿も可愛いんだから。
屋根からジョルクおじさんが飛び降りてくる。
「準備はできたか?」
「もう少しだよ、ジョルクおじさん。」
最後に。
「お母さんも入って。」
「え?」
お母さんの安全のためだ。
誰の目にもお母さんを触れさせず、この国から出たい。
「この中の方が安全なの。」
お母さんがまた固まってしまった。
「大丈夫。信じて。この中には人が生活できる空間が広がっているから。って言っても、まだ暮らすための家なんかは無いけど、危険のない野山が広がっているだけだから。お願い、暫く中に入っていて。私はお母さんが一番大切なの!守りたいの!」
動かないお母さんに、最後は泣きながら訴えた。
泣きながら訴える私をお母さんが抱きしめる。
「ジョルク、アリアをお願いね。」
「おう。ちびっ子一人だけなら、なんの問題もなく出国できるさ。」
私の額にキスを落としてから、お母さんはディメンションホームに入ってくれた。
不安を隠せないお母さんを安心させるために、ジョルクおじさんがお母さんと一緒に中に入ってから出てきた。
「とんでも3歳児め。」
ジョルクおじさんは、優しく私の頭に手を置く。
「頼りになり過ぎだ。俺の良い男ぶりが霞んじまったじゃねえか。」
言いながら、私に魔法をかけてくれる。
「変化」
私の自慢の栗色の巻き毛は金髪に、碧翠の目は茶色の目に、性別は男の子に見えるように変わった。
ジョルクおじさん自慢の幻想魔法だ。
更に腕輪を付けられる。
先ほどの変化から更に変化をさせる念の入れようだ。
性別は男の子。髪は濃い青、目は空のような青。
これで、魔道具を外された段階で相手は追及を止めるだろうとのこと。
マジックボックスの中から男の子に見える服を取り出して着替え、ジョルクおじさんと手を繋いで国境に向かう。
家から出て5分も経たないうちに、ベルクがお抱えの兵士達を引き連れて私の家があった方向に向かって行くのが見えた。
間一髪!
ジョルクおじさんの危機察知能力と機転の速さに大感謝だ。
お父さんのことは大好きで愛しているけれど、お父さんはもうお母さんを守ることができない。
お母さんはまだ20歳と若いのだ。
この先私を育てるだけに人生を費やすには惜しい、いい女なのだ。
いい女だから、私がいても他の男が放っておかないと思うんだよね。
頑張ってよね。
私はジョルクおじさんを応援するよ。
どんな形でお母さんが受け入れてくれるかは分からないけれど。
私がジョルクおじさんと呼ぶのは、ジョルクおじさんが24歳とお父さんとお母さんよりちょっと年上で、髭面で老け顔だからなのだけれど・・・
これからはジョルクお兄ちゃんと呼ぼうかな。
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