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鑑定の儀
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この世界では3歳になると教会で職業とスキルの「鑑定の儀」を受ける義務がある。
「鑑定の儀」を受けるとスキルが開放され、スキルに関連する能力を使うことができるようになる。
「鑑定の儀」を受けたその瞬間から、スキルや身体能力、魔力のレベルアップが可能となる。
「鑑定」
私の額に掌を近づけて神父様が呟く。
途端、頭の天辺からつま先まで、静電気が走るような感覚に襲われる。
「アリア……あなたの職業は…………私には分かりません。」
私、アリアが住んでいるのは、エターリアナ王国の東南に位置する小さな町だ。
人口200人程の小さな土地が「町」と呼ばれているのは、隣国バラスチアン帝国との国境に面していて、陸路での小規模な輸出入が行われおり、人口より商売人の数の方が多く、人口200人の町には思えないほど賑わっているからだ。
主要産業は、交易のための宿泊施設と商業施設。
私の家は小さな薬店をやっている。
3歳の誕生日に教会に「鑑定の儀」を受けに来て、鑑定スキルのある神父様がお母さんに告げたのがさっきの言葉だ。
鑑定スキル持ちは多くはないが珍しくもない。
どのような業種にも重宝される鑑定スキルだが、「鑑定の儀」を1人で執り行える「聖職者」で「鑑定スキル」持ちは超エリートの花形職業だ。
ただ、鑑定スキルと一言で言っても、レベル差が大きい。
辺境の小さな町ではあるが、隣国との国境に面しているこの教会では、バラスチアン帝国の子供の「鑑定の儀」を執り行うことも多く、比較的レベルの高い優秀な聖職者が派遣されてきていたのだが…
「申し訳ありません。私が「鑑定の儀」を執り行うようになってから、職業が鑑定できないのは初めてのことです。」
30代半ばの神父様はそう言って項垂れている。
自身の「鑑定の儀」を終えすぐに神殿入りし、10代から1人で20年以上も「鑑定の儀」を執り行ってきたほどの優秀な人物だった。
自分の能力や地位に奢ることのない、聖職者としても、人としても人格者な彼であった。
「スキルも…私には鑑定できないものが多く、かろうじて鑑定できたものは…」
そう言いながら、私の「鑑定の儀」の証明スクロールをお母さんに渡す。
名前:アリア
職業:?????
スキル:光魔法 ?????????????????????????????
「そんな…これからどうすれば…」
スクロールを見て、お母さんの顔色がみるみる悪くなっていく。
「あの、アリアさんには光魔法のスキルがあります。浄化や治癒の才能があるかもしれません。そして、私では鑑定ができないということは、未知の職業とスキルか・・・私より高いレベルの職業とスキルの可能性がございます。教会本部に入信し、聖女候補になるか、治癒師を目指すのはいかがでしょう。」
神父様の提案にお母さんは時間が欲しいと言い、私たちは無言のまま、家に向かって歩き出した。
頭の中にはたくさんの?が渦巻いていた。
私には前世の記憶がある。
この世界とは違う世界で生きた記憶だ。
記憶と言っても、内容が少しあやふやになってしまった数年前に観た映画のようなものだけれど、それでも3歳児には過ぎた知識だ。
だからたくさんの?が増え続けている。
「なんで聖職者なのに神父様には神様の声が聞こえないの?私にはあんなにはっきりと聞こえたのに。」
神父様が「鑑定」と呟いた途端、教会の中が神聖な光で満たされた。
神聖な光が満ちた時、私の頭の中に声が響いてきた。
『職業は「賢者」と「大聖女」、スキルは「光魔法」「聖魔法」「木魔法」「火魔法」「土魔法」「水魔法」「風魔法」「雷魔法」「時空間魔法」「重力魔法」「召喚魔法」「創造魔法」。偉大な職業と多くのスキルを与えられたが、汝に使命はない。使命を担った賢者と聖女は他の地で生まれておる。汝のステータスを全て知ることができる者はこの世には存在しない。汝は汝の思うがままに生きよ。汝の人生に幸あれ。』
「鑑定の儀」を受けるとスキルが開放され、スキルに関連する能力を使うことができるようになる。
「鑑定の儀」を受けたその瞬間から、スキルや身体能力、魔力のレベルアップが可能となる。
「鑑定」
私の額に掌を近づけて神父様が呟く。
途端、頭の天辺からつま先まで、静電気が走るような感覚に襲われる。
「アリア……あなたの職業は…………私には分かりません。」
私、アリアが住んでいるのは、エターリアナ王国の東南に位置する小さな町だ。
人口200人程の小さな土地が「町」と呼ばれているのは、隣国バラスチアン帝国との国境に面していて、陸路での小規模な輸出入が行われおり、人口より商売人の数の方が多く、人口200人の町には思えないほど賑わっているからだ。
主要産業は、交易のための宿泊施設と商業施設。
私の家は小さな薬店をやっている。
3歳の誕生日に教会に「鑑定の儀」を受けに来て、鑑定スキルのある神父様がお母さんに告げたのがさっきの言葉だ。
鑑定スキル持ちは多くはないが珍しくもない。
どのような業種にも重宝される鑑定スキルだが、「鑑定の儀」を1人で執り行える「聖職者」で「鑑定スキル」持ちは超エリートの花形職業だ。
ただ、鑑定スキルと一言で言っても、レベル差が大きい。
辺境の小さな町ではあるが、隣国との国境に面しているこの教会では、バラスチアン帝国の子供の「鑑定の儀」を執り行うことも多く、比較的レベルの高い優秀な聖職者が派遣されてきていたのだが…
「申し訳ありません。私が「鑑定の儀」を執り行うようになってから、職業が鑑定できないのは初めてのことです。」
30代半ばの神父様はそう言って項垂れている。
自身の「鑑定の儀」を終えすぐに神殿入りし、10代から1人で20年以上も「鑑定の儀」を執り行ってきたほどの優秀な人物だった。
自分の能力や地位に奢ることのない、聖職者としても、人としても人格者な彼であった。
「スキルも…私には鑑定できないものが多く、かろうじて鑑定できたものは…」
そう言いながら、私の「鑑定の儀」の証明スクロールをお母さんに渡す。
名前:アリア
職業:?????
スキル:光魔法 ?????????????????????????????
「そんな…これからどうすれば…」
スクロールを見て、お母さんの顔色がみるみる悪くなっていく。
「あの、アリアさんには光魔法のスキルがあります。浄化や治癒の才能があるかもしれません。そして、私では鑑定ができないということは、未知の職業とスキルか・・・私より高いレベルの職業とスキルの可能性がございます。教会本部に入信し、聖女候補になるか、治癒師を目指すのはいかがでしょう。」
神父様の提案にお母さんは時間が欲しいと言い、私たちは無言のまま、家に向かって歩き出した。
頭の中にはたくさんの?が渦巻いていた。
私には前世の記憶がある。
この世界とは違う世界で生きた記憶だ。
記憶と言っても、内容が少しあやふやになってしまった数年前に観た映画のようなものだけれど、それでも3歳児には過ぎた知識だ。
だからたくさんの?が増え続けている。
「なんで聖職者なのに神父様には神様の声が聞こえないの?私にはあんなにはっきりと聞こえたのに。」
神父様が「鑑定」と呟いた途端、教会の中が神聖な光で満たされた。
神聖な光が満ちた時、私の頭の中に声が響いてきた。
『職業は「賢者」と「大聖女」、スキルは「光魔法」「聖魔法」「木魔法」「火魔法」「土魔法」「水魔法」「風魔法」「雷魔法」「時空間魔法」「重力魔法」「召喚魔法」「創造魔法」。偉大な職業と多くのスキルを与えられたが、汝に使命はない。使命を担った賢者と聖女は他の地で生まれておる。汝のステータスを全て知ることができる者はこの世には存在しない。汝は汝の思うがままに生きよ。汝の人生に幸あれ。』
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