6 / 79
オオカミ獣人の村
6 旅立ち
しおりを挟む
『エーリクを頼りなさい』
遺言とも思えるサーシャの言葉を思い出す。半信半疑だったが、本当の事だったんだ。
アデルにとっては夢のようだった。オオカミ獣人の村ではあいの子ということで皆にいじめられていたので人間の国に行けるのは魅力的だった。それに王子様のようなエーリクに手を差し伸べられて、自分は姫にでもなったような気持ちだった。
アデルは小さな手を伸ばしエーリクの手に触れた。
エーリクはアデルの腕をつかみ、引っ張ってひょいと抱っこする。
アデルは真っ赤になった。
「僕はエーリク。よろしくね」
エーリクはアデルに微笑みかける。
「……ぼくは、アデルです。よろしくお願いします」
アデルも真っ赤になりながら、挨拶した。アデルがエーリクに懐いているのを見て、おばあちゃんはほっとした。
「アデルが望むなら……」
おばあちゃんは、戸惑いながら言う。
エーリクはにっこり微笑みながらアデルに聞く。
「アデル君は、僕と一緒に人間の国に行くのでいいですか?」
アデルは嬉しくて、真っ赤になる。こくこくと頷く。
「エーリクさんと、一緒に行きたいです」
話はまとまった。明日のサーシャのお葬式が終わったら、アデルはエーリクとオオカミ獣人の村を去ることになった。
翌朝、数人のオオカミ獣人がやってきて、サーシャが入った棺を運んだ。アデルはおばあちゃんに連れられて、棺の後をついていった。
村の共同墓地に到着して、サーシャは埋葬された。
もう二度とサーシャに会うことができないと思い、アデルはぐずぐず涙を零し続けた。
埋葬が終わると、おばあちゃんはオオカミ獣人たちにお礼を言い、代金を支払った。オオカミ獣人たちは代金を受け取り、去っていった。
誰もいなくなると、おばあちゃんはサーシャの墓に向かって語りかけた。
「サーシャ、アデルはこの村から旅立つことになったわ。アデル、サーシャにお別れを言いなさい」
アデルもサーシャのお墓に向かう。
「お母さん、行ってきます」
そして、心の中で話しかける。
(お母さんの言った通り、エーリクさんが迎えに来てくれました)
おばあちゃんはアデルの頭を撫でる。
「大丈夫? もし、ここに残りたかったら、おばあちゃんがエーリクに断ってあげるわよ」
アデルはおばあちゃんを見つめ、にっこりと笑う。
「僕、エーリクさんと人間の国に行ってみたい」
おばあちゃんは黙り込む。この村に残っても、アデルの将来は暗い。こんな小さいのに追い出すようなことになって、自分のふがいなさが腹立たしかった。
おばあちゃんの葛藤に気付いて、アデルはおばあちゃんに抱きつく。
「おばあちゃん、今までありがとう」
アデルの思いやりに、おばあちゃんの躊躇いも払拭され、アデルの手を引いて歩き出した。
村の入り口に着く。そこにはエーリクが待っていた。
「アデルをよろしくお願いします」
おばあちゃんがエーリクに深々と頭を下げた。
「分かりました」
エーリクはアデルに手を伸ばす。
アデルはエーリクの手をとり、おばあちゃんにお辞儀した。
「おばあちゃん、今までお世話になりました。さようなら」
「元気で。体に気を付けてね」
おばあちゃんは手を振って、2人を見送った。
遺言とも思えるサーシャの言葉を思い出す。半信半疑だったが、本当の事だったんだ。
アデルにとっては夢のようだった。オオカミ獣人の村ではあいの子ということで皆にいじめられていたので人間の国に行けるのは魅力的だった。それに王子様のようなエーリクに手を差し伸べられて、自分は姫にでもなったような気持ちだった。
アデルは小さな手を伸ばしエーリクの手に触れた。
エーリクはアデルの腕をつかみ、引っ張ってひょいと抱っこする。
アデルは真っ赤になった。
「僕はエーリク。よろしくね」
エーリクはアデルに微笑みかける。
「……ぼくは、アデルです。よろしくお願いします」
アデルも真っ赤になりながら、挨拶した。アデルがエーリクに懐いているのを見て、おばあちゃんはほっとした。
「アデルが望むなら……」
おばあちゃんは、戸惑いながら言う。
エーリクはにっこり微笑みながらアデルに聞く。
「アデル君は、僕と一緒に人間の国に行くのでいいですか?」
アデルは嬉しくて、真っ赤になる。こくこくと頷く。
「エーリクさんと、一緒に行きたいです」
話はまとまった。明日のサーシャのお葬式が終わったら、アデルはエーリクとオオカミ獣人の村を去ることになった。
翌朝、数人のオオカミ獣人がやってきて、サーシャが入った棺を運んだ。アデルはおばあちゃんに連れられて、棺の後をついていった。
村の共同墓地に到着して、サーシャは埋葬された。
もう二度とサーシャに会うことができないと思い、アデルはぐずぐず涙を零し続けた。
埋葬が終わると、おばあちゃんはオオカミ獣人たちにお礼を言い、代金を支払った。オオカミ獣人たちは代金を受け取り、去っていった。
誰もいなくなると、おばあちゃんはサーシャの墓に向かって語りかけた。
「サーシャ、アデルはこの村から旅立つことになったわ。アデル、サーシャにお別れを言いなさい」
アデルもサーシャのお墓に向かう。
「お母さん、行ってきます」
そして、心の中で話しかける。
(お母さんの言った通り、エーリクさんが迎えに来てくれました)
おばあちゃんはアデルの頭を撫でる。
「大丈夫? もし、ここに残りたかったら、おばあちゃんがエーリクに断ってあげるわよ」
アデルはおばあちゃんを見つめ、にっこりと笑う。
「僕、エーリクさんと人間の国に行ってみたい」
おばあちゃんは黙り込む。この村に残っても、アデルの将来は暗い。こんな小さいのに追い出すようなことになって、自分のふがいなさが腹立たしかった。
おばあちゃんの葛藤に気付いて、アデルはおばあちゃんに抱きつく。
「おばあちゃん、今までありがとう」
アデルの思いやりに、おばあちゃんの躊躇いも払拭され、アデルの手を引いて歩き出した。
村の入り口に着く。そこにはエーリクが待っていた。
「アデルをよろしくお願いします」
おばあちゃんがエーリクに深々と頭を下げた。
「分かりました」
エーリクはアデルに手を伸ばす。
アデルはエーリクの手をとり、おばあちゃんにお辞儀した。
「おばあちゃん、今までお世話になりました。さようなら」
「元気で。体に気を付けてね」
おばあちゃんは手を振って、2人を見送った。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話
十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。
ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。
失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。
蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。
初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる