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アストラシティ
24 お見合いが申し込まれる
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初めてのヒートは5日間で終わった。看護師さんが、定期的にフェロモンカウンターで数値を測定し、抑制剤を調整してくれた。アデルは中等症の抑制剤で良い様だった。
2kg痩せてしまったが、ヒート明けは食欲が回復して、なんでも美味しく食べられたので、すぐ元に戻るだろう。体力的には問題なさそうだった。
早速、授業に戻った。5日間分進んでいるので復習を頑張らなければいけないのが辛かった。担任のアリサ先生がまとめのプリントをくれた。
放課後、アリサ先生に呼ばれた。恐る恐るついていくと、校長室に連れていかれた。
「アデル君だね。こんにちは。私は校長のミントンだ」
聖マリアンナ学園の職員は全てオメガである。ミントン校長は男性で、アデルと同じ男性オメガなのであろう。
「……こんにちは」
「先日、ヒートを迎えたそうで、これで立派なオメガだね。おめでとう」
「……ありがとうございます」
「ヒートを迎えると、お見合いが開始になることは知ってるね」
「……はい」
「早速、君にお見合いが申し込まれている」
校長はにこにこして、写真を差し出した。
「な、なんと、1人目は王太子様だ」
アデルはドヤ顔の校長をぽかんとして見つめる。アデルの反応が薄いのは、驚いたせいと校長は勝手に解釈した。
「そうだろうね。思いもよらないよね。君は平民だからね。アリサ先生」
校長はアデルの担任の方を見る。
「礼儀作法の授業は受けていると思うけど、王太子様とのお見合い前に個人レッスンして、粗相のないようにしてあげてくれ」
「わかりました」
「そしてね、2人目は誰だと思う?」
校長は、またアデルの方を見る。
「……わかりません」
「なんと、王様なんだよ」
「!!」
これにはアリサ先生も驚く。
「ミントン校長、王様はもう4人奥様をお持ちでは?」
「我が国では王様のみ何人でも妻を持てる法律だから」
確かにそうだ。しかし、普通は1番目のオメガの妻が番になっているため、その妻に先立たれたり、アルファの王子を産むことができない以外は、2番目以降の妻は自由恋愛のベータになることがほとんどだ。今の王様の王妃様はオメガでまだ、ご健康だし、アルファの立派な王子様もいる。その条件には当てはまらない。5番目の妻に貴重なオメガを求めるとは。
アリサ先生のとまどいを感じて、ミントン校長は説明する。
「おそらく、シルフの一族の末裔という噂を信じてるのだろう。家臣の妻には渡したくないと言う思いではないか。結局、お見合いも王太子様と王様が名乗り上げてしまったので、他の有力貴族達は申し込めなくなった」
アリサ先生は納得したと頷く。そして、アデルに言い含める。
「あなたは、王太子様か王様を選ばなければならないわ。いずれにしてもお妃教育が必要になるわね。明日から放課後に個人レッスンを組むわ」
アデルは性急な事の運びに慌てる。
「僕、王太子様か王様と結婚するんですか?」
アリサ先生は微笑む。
「王家に嫁ぐのは、大抵、貴族のオメガだから、予想外よね。どちらがいいか、よく考えるといいわ」
アリサ先生の言い方ではアデルに拒否権はないようだ。アリサ先生に促されアデルは校長室を退出した。
アリサ先生はアデルを部屋まで送ってくれた。
「急な話で驚いたと思うけど、誰からもお見合いを申し込まれない子も辛いのよ」
アリサ先生はぽつんと語る。
「貴族のオメガは、家同士の関係で、すぐ結婚相手が決まるのだけど、平民のオメガの中にはなかなか相手が決まらない子もいるの。あなたは、この国で最も高位のアルファ2人から求婚されているので恵まれているのよ。今は驚きすぎて、お見合いも怖いと思うけど、落ち着いたら自分がどんなに幸福なのか分かると思うわ」
呆然としているアデルを慰めた。
アリサ先生と別れて部屋のベッドに横たわる。夕食の時間だが、全くお腹は減らない。
授業でも聞いていたのに、お見合いも卒業と同時の結婚も他人事のように思っていた。ここを卒業したら、エーリクの所に帰るつもりでいたのだ。
エーリク!
アデルの体から分身が放たれた。窓を通り抜け、一心に走り始める。
2kg痩せてしまったが、ヒート明けは食欲が回復して、なんでも美味しく食べられたので、すぐ元に戻るだろう。体力的には問題なさそうだった。
早速、授業に戻った。5日間分進んでいるので復習を頑張らなければいけないのが辛かった。担任のアリサ先生がまとめのプリントをくれた。
放課後、アリサ先生に呼ばれた。恐る恐るついていくと、校長室に連れていかれた。
「アデル君だね。こんにちは。私は校長のミントンだ」
聖マリアンナ学園の職員は全てオメガである。ミントン校長は男性で、アデルと同じ男性オメガなのであろう。
「……こんにちは」
「先日、ヒートを迎えたそうで、これで立派なオメガだね。おめでとう」
「……ありがとうございます」
「ヒートを迎えると、お見合いが開始になることは知ってるね」
「……はい」
「早速、君にお見合いが申し込まれている」
校長はにこにこして、写真を差し出した。
「な、なんと、1人目は王太子様だ」
アデルはドヤ顔の校長をぽかんとして見つめる。アデルの反応が薄いのは、驚いたせいと校長は勝手に解釈した。
「そうだろうね。思いもよらないよね。君は平民だからね。アリサ先生」
校長はアデルの担任の方を見る。
「礼儀作法の授業は受けていると思うけど、王太子様とのお見合い前に個人レッスンして、粗相のないようにしてあげてくれ」
「わかりました」
「そしてね、2人目は誰だと思う?」
校長は、またアデルの方を見る。
「……わかりません」
「なんと、王様なんだよ」
「!!」
これにはアリサ先生も驚く。
「ミントン校長、王様はもう4人奥様をお持ちでは?」
「我が国では王様のみ何人でも妻を持てる法律だから」
確かにそうだ。しかし、普通は1番目のオメガの妻が番になっているため、その妻に先立たれたり、アルファの王子を産むことができない以外は、2番目以降の妻は自由恋愛のベータになることがほとんどだ。今の王様の王妃様はオメガでまだ、ご健康だし、アルファの立派な王子様もいる。その条件には当てはまらない。5番目の妻に貴重なオメガを求めるとは。
アリサ先生のとまどいを感じて、ミントン校長は説明する。
「おそらく、シルフの一族の末裔という噂を信じてるのだろう。家臣の妻には渡したくないと言う思いではないか。結局、お見合いも王太子様と王様が名乗り上げてしまったので、他の有力貴族達は申し込めなくなった」
アリサ先生は納得したと頷く。そして、アデルに言い含める。
「あなたは、王太子様か王様を選ばなければならないわ。いずれにしてもお妃教育が必要になるわね。明日から放課後に個人レッスンを組むわ」
アデルは性急な事の運びに慌てる。
「僕、王太子様か王様と結婚するんですか?」
アリサ先生は微笑む。
「王家に嫁ぐのは、大抵、貴族のオメガだから、予想外よね。どちらがいいか、よく考えるといいわ」
アリサ先生の言い方ではアデルに拒否権はないようだ。アリサ先生に促されアデルは校長室を退出した。
アリサ先生はアデルを部屋まで送ってくれた。
「急な話で驚いたと思うけど、誰からもお見合いを申し込まれない子も辛いのよ」
アリサ先生はぽつんと語る。
「貴族のオメガは、家同士の関係で、すぐ結婚相手が決まるのだけど、平民のオメガの中にはなかなか相手が決まらない子もいるの。あなたは、この国で最も高位のアルファ2人から求婚されているので恵まれているのよ。今は驚きすぎて、お見合いも怖いと思うけど、落ち着いたら自分がどんなに幸福なのか分かると思うわ」
呆然としているアデルを慰めた。
アリサ先生と別れて部屋のベッドに横たわる。夕食の時間だが、全くお腹は減らない。
授業でも聞いていたのに、お見合いも卒業と同時の結婚も他人事のように思っていた。ここを卒業したら、エーリクの所に帰るつもりでいたのだ。
エーリク!
アデルの体から分身が放たれた。窓を通り抜け、一心に走り始める。
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