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『運命に逆らって』のコミカライズは順調に売れ重版となった。主人公オメガを女性と捉えるか男性と捉えるかで2通りの読み方ができると分かった読者により柊里の小説の『運命に逆らって』がまた売れ出した。柊里の小説家としての能力も再評価されるようになった。

 蓮はあず先輩から別の依頼を受けたので、その内容を優斗に相談した。
「あず先輩の従姉で宝条美樹さんって言う、この前のテレビで着た衣装のデザイナーさんがいるんだけど、テレビの評判がいいらしくて問い合わせ殺到しているんだって。それでカタログのモデルやってくれないかって頼まれたんだよね」
 優斗は「え……」と絶句する。
「今のファッション業界ってアルファのデザイナーがアルファを輝かせるための服が主流なんだ。ベータの人もアルファっぽく見えるのがカッコいいと思ってアルファのデザイナーの服が人気出るんだよね。宝条さんはオメガなんだけど、オメガのオメガによるオメガのための服をコンセプトに作り続けてて、また積極的にオメガの子たちを雇っているんだ。オメガの子って貧困になりやすいから、それを少しでも何とかしたいって考えてて、寮を作って希望する子には働きながら夜間高校や夜間大学に通わせてあげているんだ」
「それはいい社会活動だね」
「あず先輩も、従姉というのを抜きにして宝条さんの精神に賛同しているんだって。純粋にデザインが好きっていうのもあるらしいけど。今まで男性オメガの服っていうのがアルファのデザイナーが作った画一的な物しかなくて、宝条さんのデザインが新鮮に見えたみたい。テレビで見て男性オメガが番のアルファに宝条さんデザインの服をねだったようでテレビ放映後、僕の着た服や同じラインの服売り切れたんだって」
「あれは殺人的に可愛かったから番のオメガにねだられたらアルファはプレゼントするよ」
「僕は運よく流行作家の子に生まれて、父はベータだけどオメガに理解があってラッキーだった。オメガだっていうだけで捨てられてしまった子達もいて、そういう子の居場所を提供したいという宝条さんの考えステキだなって思う。僕もお手伝いしたいからモデルも協力したいんだけどいい?」
 優斗は、はあっと溜め息をつく。
「蓮がやりたいことを反対するわけないよ。でも狭量だけどみんなが可愛い蓮に気付いて俺から取ろうとするんじゃないかと心配で」
 蓮はふふっと笑う。
「それは贔屓目だよ。オメガって基本美男美女が多くって僕なんて地味な方なんだよ」
 優斗は溜め息を繰り返す。
「もー、無自覚なんだから。撮影には俺も付き添うからね」
「……ごめん。モデル全員オメガだから撮影現場はアルファ立ち入り禁止なの。カメラマンもスタッフも全員オメガらしいので安心して」
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