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 初めてのクリスマスは相談して箱根の温泉宿のお泊りにした。優斗が予約してくれた所は立派な旅館で部屋に露天風呂が付いていた。
 チェックインして荷物を置いてから2人で町をぶらついた。
「寒いでしょ」
 優斗が蓮の手を恋人繋ぎして自分のコートのポケットに入れる。いつも部屋でデートだったから2人で散歩できるのが嬉しい。
 蓮はにこにこして「お外デートだ。嬉しい。初めて」と喜ぶ。
 優斗は顔をしかめて「そんな外で急に可愛い顔をされると困る」と変な困り方をしていた。
 ぶらぶらとお土産物屋を見て回る。寄木細工の店があり、蓮は柊里にオルゴールをお土産に買った。柊里は工芸品が好きで机の周りに色々飾っている。そうこうしてると小説の中に小道具として出てくる。これも新作の小道具になれればいいなと思いながら選んだ。
 優斗はEASTに持っていくお菓子を買っていた。お土産を買い部屋に戻る。
 12月22日放映したあず先輩の密着テレビを録画したものを2人で見た。最後の10分で蓮が出てきた。
「……!!」
 優斗が声にならない絶叫をする。停止ボタンを押し「こんな格好するなんて聞いてない!」と蓮に噛みつく。
「あず先輩の希望で……、僕はやっぱり似合ってないよね」
 蓮はしょんぼりして答える。優斗は慌ててぶんぶん首を振る。
「違う……可愛すぎる。こんなの公共の電波に乗せたなんて信じられない。俺が見る前に何人に見られてしまったのか」
「優斗……、それは贔屓目だよ」
 再生ボタンを押し、続きを見る。
 蓮は助手役なのであず先輩がクリスマスケーキを作る横で材料を持ってきたり、使い終わったのを片付けたりしていた。ゴスロリ服はあず先輩がミニスカで蓮はショートパンツだった。スカル模様の黒タイツをはいている。白いエプロンはゴージャスなレース付きで汚したらどうしようと少しはらはらしていた。
(あず先輩は似合ってて可愛い)
(僕もちょっと似合ってるかも)
 あず先輩が行きつけのゴスロリ店はあず先輩の従姉の宝条美樹、24歳オメガ女性のショップ、Miki Hojoである。オメガのオメガによるオメガのためのファッションがポリシー。蓮にも着こなせるようにデザインしてくれてプロってすごい。
 最後に蓮のインタビューで番組は終わった。蓮はあず先輩のおかげで自分のやりたい事がわかり漫画を描き始めたと話した。1月に発売する『運命に逆らって』のコミカライズも宣伝してもらえた。上手く編集されていて、てきぱき話しているように見えた。いつもの蓮より賢そうに映っている。テレビ制作の人にも感謝だ。
 番組が終わりCMになったので再生を終了した。優斗がいきなり蓮にがばっと抱きつく。
「どうしよう。どうしよう」
 優斗が呟くので「どうしたの?」と聞く。
「こんな犯罪的に可愛い蓮の姿が全国ネットで放映されたなんて。みんな蓮を好きになっちゃう。どうしよう」
 冗談かと思ったが優斗が真剣な顔で蓮を見ている。蓮は勇気を出して自分から優斗にちゅっと啄むようなキスをした。
「僕が好きなのは優斗だけだよ」
 優斗はあっという間に笑顔になり、がばっと蓮を抱き締め、噛みつくようにキスし始めた。
 盛り上がりかけたところでトントンとノックされる。仲居さんが「夕食です」と食事を運んできたのでいちゃつきは中断した。料理は美味しくすっかり満腹になった。ごろごろいちゃいちゃの続きをしながら蓮は小一時間うたた寝をしてしまった。
 はっと起きるとそばで見ている優斗と目が合う。
「ごめん、寝ちゃった」
「いいよ。今日はずっと一緒にいれるから、時間はまだある。寝顔も可愛かったし」
 優斗は起き上がる。
「でも、せっかく来たから温泉入ろ」
「うん」
 蓮も起き上がる。
 2人で服を脱ぎ、部屋に付いている露天風呂に入った。夜の冷たい風が頬に心地よく当たり何時間でも入っていられそうだった。
「いいお湯。疲れ取れそう」と蓮は優斗に言った。
「疲れが取れた所で、また疲れることしようね」と優斗が微笑み、蓮が赤くなった。
「ふう」と優斗は立ち上がり腰掛け直す。温まったので上半身を湯から出し夜風を受けた。
 蓮がちらっと優斗を見る。綺麗に筋肉の付いた優斗の裸はミケランジェロの彫刻のようだった。
(カッコいいな)
 蓮は自分の貧相な体をお湯に沈めて隠した。すっぽり首までお湯に浸かっているとだんだんのぼせてくる。
「そんなにすっぽり入っていたら、のぼせてしまうよ。こっちにおいで。お水あげるよ」
 優斗に軽く手を引っ張られ蓮は渋々立ち上がる。蓮の白いしなやかな体は火照ってピンク色になっていた。優斗の膝に腰掛け、冷えたお水を飲ませてもらう。氷をたっぷり入れたポットのお水はキンキンに冷えていて、とても美味しくごくごくと飲んだ。飲み終わって優斗を見ると、優斗の目が欲望でとろんと溶けている。
「蓮、綺麗だね」
「優斗の方がカッコいいよ」
「こんなに美味しそうで我慢できない」
 蓮の胸の尖りがふっくらとピンク色に盛り上がっている。火照った肌のピンクと同じ色に染まっている。優斗は胸の尖りを口を寄せた。ちゅっと吸い付き、舌で転がした。柔らかくふわふわしていた胸の尖りが芯を持ち、さらに赤く染まる。胸の尖りからお腹の奥に快感が走り、蓮が喘ぐ。
 蓮の喘ぎ声を聞くと、優斗はもう我慢できなくなり、蓮を抱いて風呂から寝室に向かった。優斗は蓮の全身を舐め回し、蓮は何回もイッた。他のアルファを牽制するように首筋から胸をじゅっと吸い、キスマークをつける。たくさん付けると優斗の心が安心した。
「ゆうと、おくがさびしい。きて」
 優斗は喜んでいそいそとゴムを装着し蓮の中に入る。柔らかくぬかるんで優斗のペニスをうれしそうに飲み込んだ。前を扱きながら奥をトントンとノックする。蓮はイキすぎて段々、出る蜜が薄まってきた。
 優斗が堪えきれずに快感を蓮の奥に吐き出す。ゴム越しの振動を感じながら蓮は意識を手放した。
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