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 12月に入り寒くなってきたので蓮は昨夜からビーフシチューを煮込んでいた。
 ピンポーン
 日曜日の午後1時きっかりにベルが鳴る。
「はーい」
 蓮はいそいそと迎えに行く。
 優斗はスーツ姿に薔薇の花束を抱えていた。
(え!?)
 柊里も出てくる。柊里はスーツ姿の優斗に驚かず、にこにこしている。
「桐生蓮さん、結婚を前提にお付き合いしてください」
 蓮に薔薇の花束を差し出す。
(どういうこと!?)
 蓮は薔薇の花束を受け取り柊里を見る。柊里は変わらずにこにこ微笑んでいる。
 優斗の方に向き直り「はい、よろしくお願いします」と言う。
 優斗はほっと一息ついて柊里の方を向く。
「私は今、大学3年生ですが、再来年の3月卒業します。在学中に公認会計士の試験にパスし、卒後は監査法人で3年程度勤め、その後はIT関連の企業にCFOとして就職します。もうインターンとして働いています。ベンチャーですがプログラミングの天才が始めた会社なので将来有望です。蓮さんには苦労させません。結婚前提の交際お許しください」
 優斗は柊里に深々と頭を下げる。蓮も一緒に頭を下げた。
「お父さん、お願い。僕たちの交際を認めて下さい」
 柊里は頷く。
「分かりました。もちろん交際は認めますよ。今日のお昼は昨日から蓮が腕を振るってたようで、さっきからいい匂いがしてるんだ。早くみんなで食べよう」
 優斗がほっとして靴を脱いで上がる。3人で居間に行った。
「どうして急に?」
 蓮はビーフシチューを運びながら質問する。
「伊集院美月さんからメールが来たんだ。『パリで運命の番と出会って番った』って」
 蓮は喜んだ。
「美月さん、幸せになったんだ。どんな人? フランス人?」
 優斗は首をかしげる。
「メールはその一文だけだったんだ。だから詳しいことは分からないけど、伊集院家の家柄だったら社交界ニュースでいずれ分かるよ。俺はそれより蓮と堂々と交際できるのが嬉しい」
 蓮もさらに笑顔になる。
「バイトも終了だね。もう聞くこともなくなってたから助かった。あとは自分でイメージを作る作業になるから」
 柊里もあっさりと言う。柊里は既に、静から美月の番の報告を受けていたらしい。
 みんなでお昼を食べ、柊里は自室へ行ってしまった。2人で蓮の部屋に行った。早速スマホを取り出しメッセージアプリのアドレス交換をする。お互いの写真を撮りあっこして待ち受けに設定した。2人のラブラブ写真も撮った。隠さなくてもいいという解放感に浸っていた。
 優斗が試験前なので次のデートは試験後になった。まずは優斗のマンションに遊びに行く。クリスマスも堂々とデートできる。色々相談して2人は浮かれていた。
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