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その夜、徹はアントンのレストランに話し合いに向かった。
アントンも美月が頻繁にレストランに来てリュカに話しかけていたので2人の関係に気が付いていたようだった。
「リュカは合意で美月さんと番ったのですか? 無理やりではないんですね?」
アントンは冷静に質問する。
「2人は運命の番のようで、将来は結婚したいと言ってます」
徹は説明する。
「まだ若い学生のようだが、リュカが経済的に困りはしないだろうか」
「日本の三大出版社である伊集社の次期社長なので経済的には困りません」
アントンは奥に行ってワインを持ってきた。グラスに注ぎ徹にも勧めた。アントンは自分の思いを語り出した。
アントンはリュカの母が好きだった。リュカの父が死んだら番関係が解除になるので再婚できるかと思っていた。しかし、父が死ぬと、母はあっという間に衰弱して死んでしまった。
「番っていうのはすごい結び付きですよね」
アントンはくーっとワインを飲む。好きな人が目の前でどんどん弱って死んでしまうのを見ているのはとても辛かった。リュカの母は死の床でアントンに頼み込んだ。
リュカと番になって結婚してやって欲しいと。
リュカは母そっくりの美少年でオメガと判定されていた。両親が死んでしまい、アントンに引き取ってもらわないとリュカは孤児院行きになる。ヒートが始まると孤児院に居られなくなり、仕方なく性風俗の仕事につくオメガが多いのが現状だ。リュカの母はリュカの将来を心配しアントンに縋った。アントンも好きな人の最期の頼みは断れず約束した。リュカの母は安心して息を引き取った。
美少年とは言え、小さな男の子に恋愛感情は抱けず、子供あるいは弟のように思っていた。アントンの嗜好としては恋愛の対象は女性であった。
リュカは料理のセンスがあり、それは天才だったリュカの父の血を引いていると思った。自分は凡人のアルファだったが、先輩のリュカの父が親切にしてくれたので辛い修行時代を乗り越えられたと感謝していた。その恩返しにリュカの父の作った借金を肩代わりし、リュカ一家の面倒を見た。そして才能あるリュカを一人前の料理人にしてあげたかった。自分やリュカの父が修行した三ツ星レストランではオメガは番持ちしか修行できない条件があったので、リュカのヒートが始まったら修行のために即番になろうと予定していた。
男性のリュカと通常であればその気にならないが、ヒートになればフェロモンでこちらもラットになり性交したり、番になれるであろう。結婚できる年齢になったら結婚し、ヒートの時に子供を作れば、家族としての愛はあるので家庭生活は成り立つであろう。
「リュカを可愛いとは思ってるんです。でも、子供や弟に対するような気持ちなんです。普段、性欲をかき立てられるのはグラマーな女性なんです」
アントンはワインをカプカプと飲み、自分の心の中を語り続けた。
「リュカが好きな人と番になったのなら良かったです。嫁にやる寂しさはありますが、天国にいるリュカの両親にも堂々と報告できます」
アントンが代わったリュカの父の借金とリュカの両親の入院費用、リュカの養育費を十分に賄える額を徹は提示した。最初は遠慮したが、受け取った方がリュカが解放されると理解し受け取ってくれた。
徹の話を聞きながらリュカは涙を零していた。父が病に倒れてから、リュカは満足に食べられずいつもお腹をすかせていた。アントンはそれを助けてくれて、自ら作ったオニオンスープを飲ませてくれた。
その美味しさは今でも忘れない。
アントンはリュカの父が天才で自分は才能がないと良く言っていたが、誠実なアントンが作った料理はいつも人を安心させる味だった。リュカはアントンを尊敬していた。
美月は泣いているリュカを抱き締め、リュカの髪に口付けを落とした。
翌朝、レストランが始まる前に徹と美月とリュカはアントンに挨拶に行った。
涙で声が出ないリュカにアントンは「幸せになれよ」と優しく言った。
美月は「リュカを守って育ててくれてありがとうございます」と深々と頭を下げた。
アントンは美月に「頂いたお金で、このレストランを改装し、町のレストランではなく今度は星を狙ってみます。星が取れたらご招待しますので是非いらして下さい。リュカは料理の才能がありますので、主婦として閉じ込めておかず、チャンスを与えてあげて下さい」と言った。
色々な手続きを終え、徹と雅志とリュカは3人で日本に戻った。美月はまだ留学期間があったためきちんと勉強するよう徹に言いつけられた。
「クリスマス休暇には日本に帰るから」
美月はリュカに深い口付けをした。
アントンも美月が頻繁にレストランに来てリュカに話しかけていたので2人の関係に気が付いていたようだった。
「リュカは合意で美月さんと番ったのですか? 無理やりではないんですね?」
アントンは冷静に質問する。
「2人は運命の番のようで、将来は結婚したいと言ってます」
徹は説明する。
「まだ若い学生のようだが、リュカが経済的に困りはしないだろうか」
「日本の三大出版社である伊集社の次期社長なので経済的には困りません」
アントンは奥に行ってワインを持ってきた。グラスに注ぎ徹にも勧めた。アントンは自分の思いを語り出した。
アントンはリュカの母が好きだった。リュカの父が死んだら番関係が解除になるので再婚できるかと思っていた。しかし、父が死ぬと、母はあっという間に衰弱して死んでしまった。
「番っていうのはすごい結び付きですよね」
アントンはくーっとワインを飲む。好きな人が目の前でどんどん弱って死んでしまうのを見ているのはとても辛かった。リュカの母は死の床でアントンに頼み込んだ。
リュカと番になって結婚してやって欲しいと。
リュカは母そっくりの美少年でオメガと判定されていた。両親が死んでしまい、アントンに引き取ってもらわないとリュカは孤児院行きになる。ヒートが始まると孤児院に居られなくなり、仕方なく性風俗の仕事につくオメガが多いのが現状だ。リュカの母はリュカの将来を心配しアントンに縋った。アントンも好きな人の最期の頼みは断れず約束した。リュカの母は安心して息を引き取った。
美少年とは言え、小さな男の子に恋愛感情は抱けず、子供あるいは弟のように思っていた。アントンの嗜好としては恋愛の対象は女性であった。
リュカは料理のセンスがあり、それは天才だったリュカの父の血を引いていると思った。自分は凡人のアルファだったが、先輩のリュカの父が親切にしてくれたので辛い修行時代を乗り越えられたと感謝していた。その恩返しにリュカの父の作った借金を肩代わりし、リュカ一家の面倒を見た。そして才能あるリュカを一人前の料理人にしてあげたかった。自分やリュカの父が修行した三ツ星レストランではオメガは番持ちしか修行できない条件があったので、リュカのヒートが始まったら修行のために即番になろうと予定していた。
男性のリュカと通常であればその気にならないが、ヒートになればフェロモンでこちらもラットになり性交したり、番になれるであろう。結婚できる年齢になったら結婚し、ヒートの時に子供を作れば、家族としての愛はあるので家庭生活は成り立つであろう。
「リュカを可愛いとは思ってるんです。でも、子供や弟に対するような気持ちなんです。普段、性欲をかき立てられるのはグラマーな女性なんです」
アントンはワインをカプカプと飲み、自分の心の中を語り続けた。
「リュカが好きな人と番になったのなら良かったです。嫁にやる寂しさはありますが、天国にいるリュカの両親にも堂々と報告できます」
アントンが代わったリュカの父の借金とリュカの両親の入院費用、リュカの養育費を十分に賄える額を徹は提示した。最初は遠慮したが、受け取った方がリュカが解放されると理解し受け取ってくれた。
徹の話を聞きながらリュカは涙を零していた。父が病に倒れてから、リュカは満足に食べられずいつもお腹をすかせていた。アントンはそれを助けてくれて、自ら作ったオニオンスープを飲ませてくれた。
その美味しさは今でも忘れない。
アントンはリュカの父が天才で自分は才能がないと良く言っていたが、誠実なアントンが作った料理はいつも人を安心させる味だった。リュカはアントンを尊敬していた。
美月は泣いているリュカを抱き締め、リュカの髪に口付けを落とした。
翌朝、レストランが始まる前に徹と美月とリュカはアントンに挨拶に行った。
涙で声が出ないリュカにアントンは「幸せになれよ」と優しく言った。
美月は「リュカを守って育ててくれてありがとうございます」と深々と頭を下げた。
アントンは美月に「頂いたお金で、このレストランを改装し、町のレストランではなく今度は星を狙ってみます。星が取れたらご招待しますので是非いらして下さい。リュカは料理の才能がありますので、主婦として閉じ込めておかず、チャンスを与えてあげて下さい」と言った。
色々な手続きを終え、徹と雅志とリュカは3人で日本に戻った。美月はまだ留学期間があったためきちんと勉強するよう徹に言いつけられた。
「クリスマス休暇には日本に帰るから」
美月はリュカに深い口付けをした。
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