上 下
30 / 48

30*

しおりを挟む
 優斗の誕生日は11月29日でちょうどその前日が日曜日だった。朝からケーキを焼き上げた。1時ちょうどに優斗がやってくる。
「1日早いけど」とケーキを出した。
「誕生日おめでとう」
 優斗の目がまん丸になる。
「ケーキって自分の家で作れるものなの? 買ってくるものだと思ってた」
 スタンダードなストロベリーショートケーキ。ろうそくを吹き消した後は切って1ピースずつ配った。食事は鶏肉のトマトソース煮込みにパスタを添えたものと、付け合わせにポテトサラダ。こちらは前日に作っておいた。柊里がシャンパンを開け、優斗に勧めた。蓮は未成年なのでジンジャーエールを飲んだ。
「勉強はどう?」と柊里が聞く。
 優斗はにっこり笑って「順調です」と答える。
「12月の短答は絶対パスします」
 優斗は公認会計士を目指していた。それは蓮との安定した生活の為と分かっていたので柊里は応援していた。

 蓮の部屋に行くと待ちきれず抱き合いキスをする。蓮は綺麗になったと優斗は思う。10周年記念パーティが終わって、週刊誌に蓮の写真が載っているのを見るとはらはらする。
「蓮、好きだよ」
「ゆうと、ぼくもすき」
 蓮はとろんとする。この前11月初めに2回目のヒートを一緒に過ごした。出会ったばかりの頃はヒートが早まったり安定しなかったが、その後定期的にセックスするようになったためか、いつも通りの周期のヒートに戻ったようだ。蓮の体は優斗との行為に慣れてきて甘みが増してきた。
 蓮のシャツのボタンを外すと白い肌が現れる。もともと滑らかな肌だったが、最近はしっとりと吸い付くようでずっと撫で回したくなる。ピンク色の胸の尖りが少し膨らんできて美味しそうに誘惑する。軽くチュッとキスすると蓮の体がびくつく。もう少し強く吸って、反対側を指で捏ねる。
「あ、ゆうと、だめ」
 蓮から吐息が漏れる。その声を聞くと優斗も我慢できなくなり、蓮の残った服を剥ぎ取り始める。何回しても飽きずにまたしたくなる。最初は青く硬かった蓮の体が解れてきてしなやかに優斗の体に絡み付く。ゴムを装着し蓮の中に入る。温かく締め付けられほとんど我慢できない。

「ちょっと待ってて」
 行為が終わって体の火照りが醒めた後、蓮はベッドから降り、また戻ってくる。
「誕生日プレゼント」
 開けると革のサイフだった。手に馴染み使い込むと革がいい色になりそうだ。
「ありがとう」
「身に付けてくれるものがいいな、と思って」
「蓮と思って大事にする」
 蓮の頬に感謝のキスをする。
「今度、テレビに出るんだよ」
「すごいね。なんで?」
「あず先輩が『プロの仕事』っていう番組で密着取材されたの」
「それ人気番組じゃない? 時々、見てる」
「番組中に友人として出たの。あず先輩はお菓子作りすごく上手だからあず先輩の家で一緒に作って、桜華学園時代のあず先輩との思い出を話したの」
「え? いつ放送? 録画する」
「12月22日。でも僕の出番10分位だよ」
「何のお菓子作ったの?」
「放映が12月22日だからクリスマスケーキ。あず先輩が『さくゆり』のデコして凄いの出来上がったんだよ」
「さっきのケーキも美味しかったよ。蓮も料理上手だよね」
「僕は普通のお菓子しか作れないんだけど、あず先輩は独創的なお菓子も作れてプロ級なんだよ。僕は助手役やったんだよ」
 優斗はまた蓮の頬にキスして「可愛い助手さんだ。俺は助手さんを食べたいな」と呟いて頬を甘噛みした。くすぐったくて蓮はくすくす笑う。
「テレビ局の人に迫られなかった? マスコミってチャラい人が多そう」と優斗が聞く。
 蓮も優斗にもたれながら「オメガ2人の撮影だからテレビ局の人も気を遣ってベータ女性2人で来たよ。2人とも漫画やアニメの好きな人で撮影終わった後、残ったケーキを食べながらお喋りして楽しかったよ」と説明した。
「良かった。蓮、可愛いから心配」と優斗が蓮をぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ」と答える蓮の唇を優斗が塞ぎ、キスが深くなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

運命はいつもその手の中に

みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。 本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。 オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

サンタからの贈り物

未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。 ※別小説のセルフリメイクです。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...