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 ピコンとメッセージがくる。
 蓮がスマホを見ると、あず先輩からだった。
ーーれんれん お願いがあります
ーーなんですか
ーー電話していいですか
ーーいいです
 あず先輩からの電話はテレビ出演の依頼だった。あず先輩の密着ドキュメンタリーが企画されたらしい。内容としては普段の仕事の姿、瞬との家庭生活、友人の3本立てであり、友人として出演をお願いされた。
「あず先輩、お友達たくさんいるんじゃないですか? もちろん僕はいいですけど」
「うん、でもみんな奥様で、旦那のアルファがテレビ出演許してくれないの。あと、れんれんの話したらテレビ局の人すごく食いついてきて。この前のお父さんの10周年記念パーティが話題になってたでしょ。お父さんもイケメンなんだけど、れんれんが美少年だって。テレビ局の人も話題のれんれんが出てくれば視聴率アップ見こめるので是非出て欲しいみたい。お願いできる?」
「あず先輩のお役に立てるなら、もちろん」
「ありがとう。新刊の宣伝もさせてもらえるように頼んでおくね」
 結局、友人のシーンは2人であず先輩の家の台所でお菓子作って、その後、蓮が桜華時代の思い出を語るという流れになった。桜華学園は家庭科に力を入れていて、みんな料理が上手い。あず先輩も料理が上手で美的感覚が優れているので、お菓子を作ると味がいいだけではなく見た目も美しい物が作れる。漫画以外にもお菓子作りがパティシェレベルという特技披露にもなる。
 衣装は仕事の時はいつも通りのシンプルな動きやすい服で漫画に真剣に取り組む姿を撮る。瞬とは如月家のファミリーコンサートに参加し、その後2人で公園デートの流れでセミフォーマルな服を瞬の行きつけのブティックでリンクコーデしてもらうらしい。
 そうすると、あず先輩の行きつけのゴスロリ店、Miki Hojoの出番がなくなりオーナーが不機嫌になってしまった。オーナーはあず先輩の従姉の宝条美樹さんでプライベートでも親しくテレビ出演用に衣装を提供しようと張り切っていたらしい。仕事のシーンでゴスロリ服は実際着ていないし嘘っぽい。瞬とのシーンでは如月家のコンサートはクラシックなのでセミフォーマルでリンクコーデしてもらった衣装がぴったりしており、あず先輩がゴスロリ服に変更すると釣り合いが取れなくなるのでテレビ局の人も難色を示した。そうなると蓮とのシーンでゴスロリの双子コーデをしたいとあず先輩。テレビ局も賛成。蓮を見た宝条美樹も創作意欲が湧いたようで大喜びでデザインし始めた。
 放映はクリスマス直前の12月22日で、10月末にあず先輩の家で撮影された。2人でクリスマスケーキを作った。あず先輩がリードしてくれたのでカメラの存在を忘れてしまうくらい楽しかった。
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