20 / 48
20
しおりを挟む
木原真希が10月に行われる桐生柊里10周年記念パーティの打ち合わせにやってきた。そのパーティで蓮の漫画家デビューも発表する予定であった。蓮本人はアルファも多くいるパーティは不安なので出席しないつもりであった。
「蓮も出てみたら?」と柊里が言い出す。
「え?」
「新人漫画家として名前と顔を売ったら?」
「出ましょう」
真希ものりのりになった。
「美形親子の共演。ファンも見たいと思います」
「でも……オメガってばれたら嫌だな」
「Azu先生だってオメガってカミングアウトしているじゃないですか」
(あず先輩は女性だから……。男性オメガは少数派で偏見多いし……)
蓮は柊里の急な提案に戸惑いを感じた。柊里と真希が招待客のリストの確認や当日のスケジュールの確認、料理のメニューなど打ち合わせをしているのをぼんやりと眺めた。
真希が「この内容でホテル側と打ち合わせておきますね」と言って帰った。
柊里に「どうして急にパーティに出席するように言ったの?」と質問する。
「蓮は沢渡君と番になって結婚したいんだよね」
柊里は蓮に確認する。蓮は強く頷く。
「沢渡君はまだ学生だけど、美月さんが選んだ人だから優秀なアルファと思うんだ。美月さんも優秀なアルファだろ。蓮はどうだろう?」
蓮ははっとする。
「世間はオメガっていうと底辺って考えちゃうだろ。沢渡君は美月さんに振られて底辺オメガと結婚したみじめなアルファって思われちゃうよ。それって悔しいよね。お父さんは今回2人が付き合うのをすぐ公表しないのは蓮のためにもいいと思う。蓮はAzu先生みたく漫画家として活躍してから沢渡君と結婚してほしい。蓮の絵は上手だと思うし、木原さんも才能あるって言ってくれてるから自信を持って。お父さんの七光りも利用しちゃっていいから。美月さんのお父さんの徹さん、運命の番がいるんだよね。林沙雪さんって言ってT大のそばの定食屋さんの娘さんだったんだ。すごい美少女で有名だったんだけど、静さんがいるから正式な結婚はできていないんだ。静さんも素晴らしい人だから比べられちゃって、色仕掛けで取り入ったと言われてひっそりと生きているんだ。お父さんは蓮には日陰の存在ではなく堂々と生きて欲しい。蓮は子供の頃から絵が上手だったから才能を伸ばしたくて早くに絵画教室に通わせたのもその為なんだ。勉強やスポーツはアルファに勝てないけど芸術ならチャンスあるかな、と思って。でも、そこからどう才能を生かせばいいのか分からなくなってたんだけど、木原さんが俺の作品のコミカライズって言ってくれて目から鱗が落ちたよ。Azu先生っていう成功しているお手本の先輩もいるし」
柊里が自分の将来をそんな風に考えてくれていたことを初めて知る。
「俺は自分で言うのもなんだけど顔がいい。見た目で騒がれるのは嫌で作品で勝負したいと思ってて、新人賞取った後もあまりメディアに露出しなかったんだ。本はそこそこしか売れなくて、あせって次の作品書こうとしても売れる小説かどうか気になって上手く書けなくなって。小説家は続けられないかと絶望してたんだけど、静社長にアドバイスされて女性誌のグラビアやったんだよね。そしたらみんなの目に留まって本も売れだしたんだ。一生懸命書いてても読んでもらわなければ面白さは伝わらない。見た目も能力だから、アルファに勝つためには全部売って勝負しなきゃだめだな、て分かったんだ。蓮も顔がいいと思うし、俺の息子っていう七光りもあるし、全部使った方がいいよ。沢渡君に肩を並べられる人間になる為に」
(底辺オメガとは言われたくない。沢渡さんに相応しい人間になりたい)
柊里の言葉は蓮の心に響いた。
「分かった。パーティに出席する。仕事も頑張る」
「蓮も出てみたら?」と柊里が言い出す。
「え?」
「新人漫画家として名前と顔を売ったら?」
「出ましょう」
真希ものりのりになった。
「美形親子の共演。ファンも見たいと思います」
「でも……オメガってばれたら嫌だな」
「Azu先生だってオメガってカミングアウトしているじゃないですか」
(あず先輩は女性だから……。男性オメガは少数派で偏見多いし……)
蓮は柊里の急な提案に戸惑いを感じた。柊里と真希が招待客のリストの確認や当日のスケジュールの確認、料理のメニューなど打ち合わせをしているのをぼんやりと眺めた。
真希が「この内容でホテル側と打ち合わせておきますね」と言って帰った。
柊里に「どうして急にパーティに出席するように言ったの?」と質問する。
「蓮は沢渡君と番になって結婚したいんだよね」
柊里は蓮に確認する。蓮は強く頷く。
「沢渡君はまだ学生だけど、美月さんが選んだ人だから優秀なアルファと思うんだ。美月さんも優秀なアルファだろ。蓮はどうだろう?」
蓮ははっとする。
「世間はオメガっていうと底辺って考えちゃうだろ。沢渡君は美月さんに振られて底辺オメガと結婚したみじめなアルファって思われちゃうよ。それって悔しいよね。お父さんは今回2人が付き合うのをすぐ公表しないのは蓮のためにもいいと思う。蓮はAzu先生みたく漫画家として活躍してから沢渡君と結婚してほしい。蓮の絵は上手だと思うし、木原さんも才能あるって言ってくれてるから自信を持って。お父さんの七光りも利用しちゃっていいから。美月さんのお父さんの徹さん、運命の番がいるんだよね。林沙雪さんって言ってT大のそばの定食屋さんの娘さんだったんだ。すごい美少女で有名だったんだけど、静さんがいるから正式な結婚はできていないんだ。静さんも素晴らしい人だから比べられちゃって、色仕掛けで取り入ったと言われてひっそりと生きているんだ。お父さんは蓮には日陰の存在ではなく堂々と生きて欲しい。蓮は子供の頃から絵が上手だったから才能を伸ばしたくて早くに絵画教室に通わせたのもその為なんだ。勉強やスポーツはアルファに勝てないけど芸術ならチャンスあるかな、と思って。でも、そこからどう才能を生かせばいいのか分からなくなってたんだけど、木原さんが俺の作品のコミカライズって言ってくれて目から鱗が落ちたよ。Azu先生っていう成功しているお手本の先輩もいるし」
柊里が自分の将来をそんな風に考えてくれていたことを初めて知る。
「俺は自分で言うのもなんだけど顔がいい。見た目で騒がれるのは嫌で作品で勝負したいと思ってて、新人賞取った後もあまりメディアに露出しなかったんだ。本はそこそこしか売れなくて、あせって次の作品書こうとしても売れる小説かどうか気になって上手く書けなくなって。小説家は続けられないかと絶望してたんだけど、静社長にアドバイスされて女性誌のグラビアやったんだよね。そしたらみんなの目に留まって本も売れだしたんだ。一生懸命書いてても読んでもらわなければ面白さは伝わらない。見た目も能力だから、アルファに勝つためには全部売って勝負しなきゃだめだな、て分かったんだ。蓮も顔がいいと思うし、俺の息子っていう七光りもあるし、全部使った方がいいよ。沢渡君に肩を並べられる人間になる為に」
(底辺オメガとは言われたくない。沢渡さんに相応しい人間になりたい)
柊里の言葉は蓮の心に響いた。
「分かった。パーティに出席する。仕事も頑張る」
2
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!
白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。
現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、
ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。
クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。
正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。
そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。
どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??
BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です)
《完結しました》
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
運命はいつもその手の中に
みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。
本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。
オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。
ド天然アルファの執着はちょっとおかしい
のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。
【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる