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 伊集院美月はイライラしてた。金、土、日とパーティに行って、色々なアルファ男性と出会った。客観的に見ると優斗以上の家柄で優斗レベルの容姿、能力を持ったアルファ男性はそれなりにいた。
 でも、全然ときめかないのだ。
 結婚しろと命じられればできなくもないが、まだ18歳でそこまであせってはいない。運命の相手がいるのではないかと期待する気持ちもある。
 小学生からアメリカで育った。飛び級しており周囲は年上だったので実年齢より恋愛経験は豊富だった。周囲の女性を蹴散らし、レベルの高い男性に告白させるのは快感だった。ゲームのような高揚感が恋愛だと思ってたが、付き合って安定期に入ると飽きてくる。デートも詰まらなくなりドタキャンするようになって自然消滅するパターンが多かった。日本の体質に慣れるために大学は日本に戻ってくるように静に勧められ戻ったのも変化が欲しかったからだ。
 日本に帰って年齢相応にT大に入学したが、周囲の男性は子供っぽく感じた。みんなが物欲しげに自分を見るので、どの相手も簡単に手に入りそうで詰まらなくなった。自分は恋愛に向いていないのかもしれないと諦めていたら優斗に出会った。
 何故、優斗が良かったんだろう。優斗は地方出身の善良そうな二流のアルファだった。伊集社を継ぐ身としては相手はアルファで婿養子になってくれる人が良かったので優斗はその条件には合っていた。ただし、美月はまだ18歳だったので、そこまで条件に合う人を真剣に探す必要もなく、本当に好きな人と付き合っても良かった。条件に合うから優斗を選んだのではなく、ときめいたから優斗を選んだのだ。
 ときめいた相手だっただけに他に好きな人ができたと聞いた時は裏切られた気持ちでいっぱいだった。でも一流のアルファのプライドがあり縋り付くなんてできなかった。
 人は恋愛においてプライドなんて下らないと言うかもしれない。でも、美月にとってプライドは生きている意味なのだ。プライドを捨てたら最早、伊集院美月ではない。

 大学の掲示板をぼんやり眺めていると交換留学のポスターがはってあった。期間は半年。留学先で取った単位はこちらの大学でも有効となるので休学は必要ない。ポスターのソルボンヌ大学の写真に目が釘付けになる。以前からフランスには心が魅かれていた。色々、外国は訪問していたが、何故かフランスだけ行っていなかった。美月の中でフランスは特別で、何かのついでに行っていい所ではないと感じていたからだ。でも、今は行くべき時のように思った。驚くべき行動力でソルボンヌ大学の交換留学を勝ち取った。
 静も「T大は2年間教養だから、半年留学するのもいいわね」と反対しなかった。娘が失恋を前向きに乗り越えようとしていると理解したのだ。
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