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「桐生蓮に会ってきたわ」
返事をしたいと呼び出された優斗に美月は告げた。驚いた顔をしながらも、この有能なアルファである美月ならそうするであろうと優斗は分かっていた。
「結論から言うと私達の交際は止めましょう」
「!」
冷静な美月に少し驚く。
「桐生蓮に会って分かったの。あなたにとって桐生蓮が1番で私が2番でしょ。そんなのプライドが許さないのよ。私が選ぶ相手は私が1番好きで、私を1番好きじゃなきゃ嫌なの」
一流のアルファである美月ならそう考えるであろう。
「条件があるわ。まず、私が振られたっていうのは嫌。私が振ったことにして」
「それは、もちろん」
「桐生蓮とは、私と別れてから出会ったことにして欲しいの」
「……わかった」
「私、これから婚活して、あなた以上に素敵な人を見つけて結婚する。私が本気出したらすぐだと思うわ。あなた達が付き合うのは私が恋人を作ってからにして。結婚も私の後」
「……」
「ふふん」と美月は意地悪な笑みを浮かべる。
「お生憎様。すぐ付き合いたいんだろうけど、これ位は嫌がらせさせてもらうわ。私より先にあなたが幸せになるのは許せない。私が本気出せば、すぐあなたより100倍素敵な人を見つけられるだろうし、結婚もできるわよ。あなた20歳で桐生蓮は私と同じ18歳でしょ。2、3年は余裕で待てるでしょ、運命だったら」
「分かった」
優斗はしぶしぶ頷く。
「桐生蓮? 会ってきたけど、清純派っていうのかな。今まで色っぽい媚びたオメガしか見たことなくて、こういうオメガもいるんだと思ったわ。オメガは少ないし、男性のオメガってさらに希少なんでしょう。桐生柊里の遺伝子が入っているから目鼻立ちが整っているわよね。もう少し大人になったら桐生柊里以上の美男子になりそう。すぐ付き合えないあなたじゃなくて他の素敵なアルファに取られちゃったりして」
青ざめる優斗を見て(これ位は当然よね)と美月は嫌がらせをする。
「私の母、伊集院静と桐生家は付き合い長くてね。私が恋人を作るまであなたたちのお付き合い禁止は桐生先生にもお願いしておくからね」
じゃ、ねと美月は去っていった。一流の女性アルファらしい未練の欠片もないさばさばとしたお別れだった。
1人になった優斗はしばらく呆然とする。美月のことはお互いに分かりあえる魂の片割れと思ってた。だから分かる。
一流のアルファらしい。湿っぽい所なく強気のお別れ。
その強さは今の優斗にとっては救いだった。こんな自分なんか足蹴にして、強く美しく美月らしく生きて欲しい。美月が万が一泣いて縋ったら、自分は別れられなかった。美月は優斗のために強気で別れてくれたのだ。
優斗は柊里の言葉を思い出す。
ーー美月を悲しませるような人間とはお付き合い許可できません。
柊里にとって美月は大事な存在なのだろう。美月は強気にちっとも悲しんでいないと示してくれたが、悲しませたのだろう。そんな自分が蓮と付き合うことを認めてもらえるだろうか。
不安な気持ちでいっぱいになるが、蓮さえ承諾してくれれば、駆け落ちしてもいいくらいの気持ちだった。蓮と引き離されることだけは考えられない。
(できれば認めてもらいたい)
誠心誠意を尽くすしかないと決意した。
返事をしたいと呼び出された優斗に美月は告げた。驚いた顔をしながらも、この有能なアルファである美月ならそうするであろうと優斗は分かっていた。
「結論から言うと私達の交際は止めましょう」
「!」
冷静な美月に少し驚く。
「桐生蓮に会って分かったの。あなたにとって桐生蓮が1番で私が2番でしょ。そんなのプライドが許さないのよ。私が選ぶ相手は私が1番好きで、私を1番好きじゃなきゃ嫌なの」
一流のアルファである美月ならそう考えるであろう。
「条件があるわ。まず、私が振られたっていうのは嫌。私が振ったことにして」
「それは、もちろん」
「桐生蓮とは、私と別れてから出会ったことにして欲しいの」
「……わかった」
「私、これから婚活して、あなた以上に素敵な人を見つけて結婚する。私が本気出したらすぐだと思うわ。あなた達が付き合うのは私が恋人を作ってからにして。結婚も私の後」
「……」
「ふふん」と美月は意地悪な笑みを浮かべる。
「お生憎様。すぐ付き合いたいんだろうけど、これ位は嫌がらせさせてもらうわ。私より先にあなたが幸せになるのは許せない。私が本気出せば、すぐあなたより100倍素敵な人を見つけられるだろうし、結婚もできるわよ。あなた20歳で桐生蓮は私と同じ18歳でしょ。2、3年は余裕で待てるでしょ、運命だったら」
「分かった」
優斗はしぶしぶ頷く。
「桐生蓮? 会ってきたけど、清純派っていうのかな。今まで色っぽい媚びたオメガしか見たことなくて、こういうオメガもいるんだと思ったわ。オメガは少ないし、男性のオメガってさらに希少なんでしょう。桐生柊里の遺伝子が入っているから目鼻立ちが整っているわよね。もう少し大人になったら桐生柊里以上の美男子になりそう。すぐ付き合えないあなたじゃなくて他の素敵なアルファに取られちゃったりして」
青ざめる優斗を見て(これ位は当然よね)と美月は嫌がらせをする。
「私の母、伊集院静と桐生家は付き合い長くてね。私が恋人を作るまであなたたちのお付き合い禁止は桐生先生にもお願いしておくからね」
じゃ、ねと美月は去っていった。一流の女性アルファらしい未練の欠片もないさばさばとしたお別れだった。
1人になった優斗はしばらく呆然とする。美月のことはお互いに分かりあえる魂の片割れと思ってた。だから分かる。
一流のアルファらしい。湿っぽい所なく強気のお別れ。
その強さは今の優斗にとっては救いだった。こんな自分なんか足蹴にして、強く美しく美月らしく生きて欲しい。美月が万が一泣いて縋ったら、自分は別れられなかった。美月は優斗のために強気で別れてくれたのだ。
優斗は柊里の言葉を思い出す。
ーー美月を悲しませるような人間とはお付き合い許可できません。
柊里にとって美月は大事な存在なのだろう。美月は強気にちっとも悲しんでいないと示してくれたが、悲しませたのだろう。そんな自分が蓮と付き合うことを認めてもらえるだろうか。
不安な気持ちでいっぱいになるが、蓮さえ承諾してくれれば、駆け落ちしてもいいくらいの気持ちだった。蓮と引き離されることだけは考えられない。
(できれば認めてもらいたい)
誠心誠意を尽くすしかないと決意した。
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