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再会
30 林 雅
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小学校の創立記念日で平日の休みがあった。良一が有休を取ろうとしたのだが、雅が小学校の友人の誕生会に招かれて遊びに行くから大丈夫、と仕事に行くよう勧めた。
良一が電話で友人の親に確認したところ、雅も司も小学校で人気者で、2人が来てくれることを子供がすごく喜んでいるので是非来てくださいと言われた。近所の子だったので当日持たせるプレゼントを買い、良一と由里は普段通り仕事に出かけた。
「楽しみだね。ケーキあるかな」
司が朗らかに笑う。司は太陽のような子だと、雅は思う。
「司、一生のお願いがあるんだ」
「何? 雅、どうした」
司が心配そうに雅を見る。2人は共働きの両親の元、支え合って育ってきた。
「今は言えないんだけど、大事な用事があって、今日の誕生会、司1人で行ってもらえないかな?」
「何だよ、水臭い。僕も一緒に行くよ」
司が心配そうに言う。雅が首をふる。
「お願い。僕1人だけで行かせて。お父さんとお母さんには内緒なんだ。内緒で行けるのは平日休みの今日だけなんだ。僕、風邪気味だって理由で司だけ誕生会に行って。お父さん、お母さんには2人で誕生会に行ったことにして」
司は雅の顔をしみじみと見る。
「ヘンな事に巻き込まれてないよな」
「違う」
「分かった。なんか、困ったことになりそうだったら、すぐ僕に言えよ」
司もアルファなのでアルファの雅が固く決意したら曲げないことは分かっていた。それなら相棒として完璧にアリバイ工作してあげると決めた。
「うん。真っ先に司に頼る。ありがとう」
司に雅からのプレゼントも持って行ってもらう。司を見送った。
雅は小学校のコンピュータールームで林雅司の勤務している法律事務所を調べていた。日本の五大事務所の一つで大手であった。林雅司のプロフィールはT大法学部卒業となっており、おそらく優秀なアルファなのだろう。
(この人が僕と司のお父さんだ)
双子の名前に父親の名前を一文字ずつ取ってつけている。良一は何を考えてそうしたのだろう。
そして、良一は何故、林雅司と結婚せず、自分達を産んだのだろう。エリートのアルファだから能力の低いオメガとは結婚できないと拒否されたのだろうか。
雅は今日、法律事務所を訪れ、林雅司に会ってみようと思っていた。創立記念日で小学校が平日休みになった今日がチャンスだった。
会ったことを後悔するようなクズのアルファかもしれない。それならそれで仕方ない。自分達が良一と由里を守り、今まで通りの4人家族で生きていこう。
(でも、もし、いい人だったら……)
雅はまだ見ぬアルファの父親を慕う気持ちがあった。
良一が電話で友人の親に確認したところ、雅も司も小学校で人気者で、2人が来てくれることを子供がすごく喜んでいるので是非来てくださいと言われた。近所の子だったので当日持たせるプレゼントを買い、良一と由里は普段通り仕事に出かけた。
「楽しみだね。ケーキあるかな」
司が朗らかに笑う。司は太陽のような子だと、雅は思う。
「司、一生のお願いがあるんだ」
「何? 雅、どうした」
司が心配そうに雅を見る。2人は共働きの両親の元、支え合って育ってきた。
「今は言えないんだけど、大事な用事があって、今日の誕生会、司1人で行ってもらえないかな?」
「何だよ、水臭い。僕も一緒に行くよ」
司が心配そうに言う。雅が首をふる。
「お願い。僕1人だけで行かせて。お父さんとお母さんには内緒なんだ。内緒で行けるのは平日休みの今日だけなんだ。僕、風邪気味だって理由で司だけ誕生会に行って。お父さん、お母さんには2人で誕生会に行ったことにして」
司は雅の顔をしみじみと見る。
「ヘンな事に巻き込まれてないよな」
「違う」
「分かった。なんか、困ったことになりそうだったら、すぐ僕に言えよ」
司もアルファなのでアルファの雅が固く決意したら曲げないことは分かっていた。それなら相棒として完璧にアリバイ工作してあげると決めた。
「うん。真っ先に司に頼る。ありがとう」
司に雅からのプレゼントも持って行ってもらう。司を見送った。
雅は小学校のコンピュータールームで林雅司の勤務している法律事務所を調べていた。日本の五大事務所の一つで大手であった。林雅司のプロフィールはT大法学部卒業となっており、おそらく優秀なアルファなのだろう。
(この人が僕と司のお父さんだ)
双子の名前に父親の名前を一文字ずつ取ってつけている。良一は何を考えてそうしたのだろう。
そして、良一は何故、林雅司と結婚せず、自分達を産んだのだろう。エリートのアルファだから能力の低いオメガとは結婚できないと拒否されたのだろうか。
雅は今日、法律事務所を訪れ、林雅司に会ってみようと思っていた。創立記念日で小学校が平日休みになった今日がチャンスだった。
会ったことを後悔するようなクズのアルファかもしれない。それならそれで仕方ない。自分達が良一と由里を守り、今まで通りの4人家族で生きていこう。
(でも、もし、いい人だったら……)
雅はまだ見ぬアルファの父親を慕う気持ちがあった。
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