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再会
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由里が帰ってきて4人で夕食を食べた。良一特製ハンバーグで、みんな美味しいとたくさん食べた。良一は1つも食べてなかったので、由里が「食欲ないの?」と質問した。
「うっかり焦がしちゃったの責任取って食べたから、お腹いっぱいになっちゃった」と良一は嘘をつく。
由里はその場ではそれ以上追及しなかった。
お風呂から上がり、子供達が寝てしまうと、由里と良一も寝室に行った。
「何か、あったの?」
良一は由里に雅司の名刺の件を説明した。
由里は「さすが、運命の番」とうっとりする。
「向こうが探してるってことは、まだ好きなんじゃない?」
良一は「うーん」という。
「俺、39歳。もうすぐ40歳なんだよね。もうすっかりおじさんじゃない。向こうの期待しているRYOじゃない」
由里は良一を眺める。確かに昔のRYOのような怪しげな色気はない。だからといって、おじさんという感じではない。身ぎれいなお兄さんという感じだ。
「おじさんではないよ。大丈夫」
良一は顔をしかめる。
「内緒で子供を生んでるし。向こうが結婚してたら、引くよね」
由里も考え込む。由里は雅司のことを知らない。34歳アルファの弁護士、大手事務所だから高収入……とくれば、まず既婚者だろう。番を囲う甲斐性はありそうだが。
(会うのも会わないのも決めるのはRYOさん次第。でも、2人が結ばれちゃうと、私、1人ぼっちになっちゃうな)
由里はベッドに横になり、ぼんやりする。由里は納得して給料をもらって良一の手伝いをしている。その間、高校を卒業し、美容師の免許も取れたから由里にとってもメリットがあった。Miki Hojoの寮に残っているより貯金も貯まっている。
(運命の番が現れたら、RYOさんの隣の席は返そう)
良一や雅と司とは近い将来、お別れが待っていることを自覚した。自分の道を探していかなければと秘かに決意した。
色々考えているうちに由里は眠ってしまった。由里の寝息を聞きながら、良一はいつまでも寝付けず物思いにふけっていた。考えはぐるぐる回り、会う結論にも会わない結論にも至らなかった。正直に言うと会いたい。でも、会うことにより今の幸せが無くなってしまうのが怖かった。
翌日、雅と司は小学校から帰った。雅は鍵を開け、良一の靴が無いことを確認した。
司は手も洗わずに台所へ直行した。
「みやびー! やっぱり今日のおやつはハンバーガーだったよ」
林家はハンバーグの次の日のおやつはお手製ハンバーガーと決まっていた。パンと具の入った皿がおいてあり、食べる時に自分ではさんで食べる。今日はチーズとトマトとレタスが付いていた。
「つかさー、手洗ってから」
雅は司に声を掛けながら、良一と由里の寝室に入る。
(大事な物はここ)
戸棚の引き出しを開ける。名刺が2枚入ってた。2枚とも同じ名前。新しい名刺と古い名刺。
ーー林 雅司
名前を見た瞬間、雅は全てを理解した。新しい方の名刺の住所と法律事務所の名前を頭に叩き込む。暗記して名刺を戻した。
「みやびー、食べないの? 僕2つとも食べちゃうよ」
「だめだよ。今行く」
雅は何喰わない顔をしておやつを食べに台所に戻った。
「うっかり焦がしちゃったの責任取って食べたから、お腹いっぱいになっちゃった」と良一は嘘をつく。
由里はその場ではそれ以上追及しなかった。
お風呂から上がり、子供達が寝てしまうと、由里と良一も寝室に行った。
「何か、あったの?」
良一は由里に雅司の名刺の件を説明した。
由里は「さすが、運命の番」とうっとりする。
「向こうが探してるってことは、まだ好きなんじゃない?」
良一は「うーん」という。
「俺、39歳。もうすぐ40歳なんだよね。もうすっかりおじさんじゃない。向こうの期待しているRYOじゃない」
由里は良一を眺める。確かに昔のRYOのような怪しげな色気はない。だからといって、おじさんという感じではない。身ぎれいなお兄さんという感じだ。
「おじさんではないよ。大丈夫」
良一は顔をしかめる。
「内緒で子供を生んでるし。向こうが結婚してたら、引くよね」
由里も考え込む。由里は雅司のことを知らない。34歳アルファの弁護士、大手事務所だから高収入……とくれば、まず既婚者だろう。番を囲う甲斐性はありそうだが。
(会うのも会わないのも決めるのはRYOさん次第。でも、2人が結ばれちゃうと、私、1人ぼっちになっちゃうな)
由里はベッドに横になり、ぼんやりする。由里は納得して給料をもらって良一の手伝いをしている。その間、高校を卒業し、美容師の免許も取れたから由里にとってもメリットがあった。Miki Hojoの寮に残っているより貯金も貯まっている。
(運命の番が現れたら、RYOさんの隣の席は返そう)
良一や雅と司とは近い将来、お別れが待っていることを自覚した。自分の道を探していかなければと秘かに決意した。
色々考えているうちに由里は眠ってしまった。由里の寝息を聞きながら、良一はいつまでも寝付けず物思いにふけっていた。考えはぐるぐる回り、会う結論にも会わない結論にも至らなかった。正直に言うと会いたい。でも、会うことにより今の幸せが無くなってしまうのが怖かった。
翌日、雅と司は小学校から帰った。雅は鍵を開け、良一の靴が無いことを確認した。
司は手も洗わずに台所へ直行した。
「みやびー! やっぱり今日のおやつはハンバーガーだったよ」
林家はハンバーグの次の日のおやつはお手製ハンバーガーと決まっていた。パンと具の入った皿がおいてあり、食べる時に自分ではさんで食べる。今日はチーズとトマトとレタスが付いていた。
「つかさー、手洗ってから」
雅は司に声を掛けながら、良一と由里の寝室に入る。
(大事な物はここ)
戸棚の引き出しを開ける。名刺が2枚入ってた。2枚とも同じ名前。新しい名刺と古い名刺。
ーー林 雅司
名前を見た瞬間、雅は全てを理解した。新しい方の名刺の住所と法律事務所の名前を頭に叩き込む。暗記して名刺を戻した。
「みやびー、食べないの? 僕2つとも食べちゃうよ」
「だめだよ。今行く」
雅は何喰わない顔をしておやつを食べに台所に戻った。
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