10 / 43
それぞれの10年間
10 RYO
しおりを挟む
秘書はRYOを自宅のマンションではなく、宝条明宏の別宅に連れて行った。
「RYOさん、こちらが考えていたより大統領は君にご執心でね。ロシア大使館は引き続き君の捜索継続を命じられたらしい。大使は捜索しても見つからないという演技を続けなければならなくなった。そのため、まず住まいは変えて欲しいと要望されたので、君の住まいのマンションは解約させてもらった。それで、今後の住むところなんだけど、美樹の会社の寮に潜伏するのが一番いいと思い用意させてもらった。オメガのみだから安心だと思う。後、今のお店で働くのも見つかるので辞めてもらう。もうお店に退職手続きは取らせてもらった。普通にひっそり暮らしてもらえれば、大使は探しても見つからないと言い逃れできると言っていた。証人保護プログラムになるから生活費は心配しないで」
RYOは呆然とする。美樹は明宏に代わり説明を続けた。
「うちの会社の寮の部屋は2人部屋なの。RYOさんもカタログ撮影の時に会ったことあると思うけど、ヘアメイクしてた由里ちゃんと同室ね。荷物なんだけど、家具と服飾品は申し訳ないけど処分させてもらった。あんなにたくさん部屋には入らないので。買い取り額500万は、この貯金通帳に入れてある。取り敢えず私の名義になってるけど、近いうちにRYOさんの名義の貯金通帳に移すね。売れなかった物と身の回り品はダンボールに詰めて部屋に運び込んであるわ」
あまりの急展開にRYOは目を白黒させる。美樹はRYOを連れて寮に案内した。
「部屋はここ」
コンコンとノックしたら、中から「はーい」と声がしてドアが開いた。由里が顔を出した。
「RYOさんだ」
「由里ちゃん、今日からよろしくね。RYOさんに色々教えてあげてね」
RYOを部屋の中に入れ、美樹は去っていった。
部屋は8畳くらい。両端にベッドと机と棚が一つずつ。真ん中にテーブルと冷蔵庫が置いてある。RYOのスペースと思われる方にはダンボール箱が積みあがっていた。
「まず、ご飯食べに行こっか」
由里に案内してもらい、食堂に行く。部屋には自炊の設備がなく、3食ここで食べるらしい。今日の夕食はサバの味噌煮定食だった。
「大変なのに好かれちゃったね」
由里は経緯を聞いているようだ。
「商売あがったりだよ」
RYOは大げさにがっかりした顔をしてみせる。
「RYOさん、借金全て返済してるんだってね。すごい。私の知り合いの風俗の子で借金返せてる人って見たことない。身請けでもされないと普通は難しいんでしょ」
「確かに、そうかも」
「親に売られて、親がどんどんお金引き出すから、いつまでたっても借金なくならない可哀想な子もいるよね」
「いるいる。うちの親は自分もキャストで、それなりに稼いで死んだから、借金の額は少なかったと思う。恵まれてる方だったんだと思うよ」
「これを機会に別の仕事を考えるのもいいんじゃない?」
「俺の取柄はこの美貌だからな。顔出しNGだったら何ができるかな」
「RYOさんの美貌生かせないのは確かに痛いね」
由里とはカタログ撮影の時に、顔を合わせて雑談程度はしていた。さっぱりしていて感じがいい。いい人と同室になれたと安心した。
「由里ちゃんはヘアメイクできるからいいよね。手に職あるって」
「違うよ。私はまだ素人。資格持ってないの。センスがいいからって美樹さん使ってくれてるけど、よそでは仕事できない。そもそも中卒なんだよ。今、夜間高校行ってる。高校卒業できたら専門学校行って、美容師にまずなりたい。道のりは遠いよ」
「……そっか、頑張ってるんだね」
「うん。美樹さんに出会えて、チャンスもらったから頑張りたいと思う」
由里の話を感心して聞きながら食事をした。
「RYOさん、こちらが考えていたより大統領は君にご執心でね。ロシア大使館は引き続き君の捜索継続を命じられたらしい。大使は捜索しても見つからないという演技を続けなければならなくなった。そのため、まず住まいは変えて欲しいと要望されたので、君の住まいのマンションは解約させてもらった。それで、今後の住むところなんだけど、美樹の会社の寮に潜伏するのが一番いいと思い用意させてもらった。オメガのみだから安心だと思う。後、今のお店で働くのも見つかるので辞めてもらう。もうお店に退職手続きは取らせてもらった。普通にひっそり暮らしてもらえれば、大使は探しても見つからないと言い逃れできると言っていた。証人保護プログラムになるから生活費は心配しないで」
RYOは呆然とする。美樹は明宏に代わり説明を続けた。
「うちの会社の寮の部屋は2人部屋なの。RYOさんもカタログ撮影の時に会ったことあると思うけど、ヘアメイクしてた由里ちゃんと同室ね。荷物なんだけど、家具と服飾品は申し訳ないけど処分させてもらった。あんなにたくさん部屋には入らないので。買い取り額500万は、この貯金通帳に入れてある。取り敢えず私の名義になってるけど、近いうちにRYOさんの名義の貯金通帳に移すね。売れなかった物と身の回り品はダンボールに詰めて部屋に運び込んであるわ」
あまりの急展開にRYOは目を白黒させる。美樹はRYOを連れて寮に案内した。
「部屋はここ」
コンコンとノックしたら、中から「はーい」と声がしてドアが開いた。由里が顔を出した。
「RYOさんだ」
「由里ちゃん、今日からよろしくね。RYOさんに色々教えてあげてね」
RYOを部屋の中に入れ、美樹は去っていった。
部屋は8畳くらい。両端にベッドと机と棚が一つずつ。真ん中にテーブルと冷蔵庫が置いてある。RYOのスペースと思われる方にはダンボール箱が積みあがっていた。
「まず、ご飯食べに行こっか」
由里に案内してもらい、食堂に行く。部屋には自炊の設備がなく、3食ここで食べるらしい。今日の夕食はサバの味噌煮定食だった。
「大変なのに好かれちゃったね」
由里は経緯を聞いているようだ。
「商売あがったりだよ」
RYOは大げさにがっかりした顔をしてみせる。
「RYOさん、借金全て返済してるんだってね。すごい。私の知り合いの風俗の子で借金返せてる人って見たことない。身請けでもされないと普通は難しいんでしょ」
「確かに、そうかも」
「親に売られて、親がどんどんお金引き出すから、いつまでたっても借金なくならない可哀想な子もいるよね」
「いるいる。うちの親は自分もキャストで、それなりに稼いで死んだから、借金の額は少なかったと思う。恵まれてる方だったんだと思うよ」
「これを機会に別の仕事を考えるのもいいんじゃない?」
「俺の取柄はこの美貌だからな。顔出しNGだったら何ができるかな」
「RYOさんの美貌生かせないのは確かに痛いね」
由里とはカタログ撮影の時に、顔を合わせて雑談程度はしていた。さっぱりしていて感じがいい。いい人と同室になれたと安心した。
「由里ちゃんはヘアメイクできるからいいよね。手に職あるって」
「違うよ。私はまだ素人。資格持ってないの。センスがいいからって美樹さん使ってくれてるけど、よそでは仕事できない。そもそも中卒なんだよ。今、夜間高校行ってる。高校卒業できたら専門学校行って、美容師にまずなりたい。道のりは遠いよ」
「……そっか、頑張ってるんだね」
「うん。美樹さんに出会えて、チャンスもらったから頑張りたいと思う」
由里の話を感心して聞きながら食事をした。
10
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話
十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。
ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。
失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。
蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。
初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。
愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】
華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。
そんな彼は何より賢く、美しかった。
財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。
ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?
君は俺の光
もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】
ヤンデレです。
受けが不憫です。
虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。
もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。
ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。
結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを―――――
明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
完結•枯れおじ隊長は冷徹な副隊長に最後の恋をする
禅
BL
赤の騎士隊長でありαのランドルは恋愛感情が枯れていた。過去の経験から、恋愛も政略結婚も面倒くさくなり、35歳になっても独身。
だが、優秀な副隊長であるフリオには自分のようになってはいけないと見合いを勧めるが全滅。頭を悩ませているところに、とある事件が発生。
そこでαだと思っていたフリオからΩのフェロモンの香りがして……
※オメガバースがある世界
ムーンライトノベルズにも投稿中
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる