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それぞれの10年間

10 RYO

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 秘書はRYOを自宅のマンションではなく、宝条明宏の別宅に連れて行った。
「RYOさん、こちらが考えていたより大統領は君にご執心でね。ロシア大使館は引き続き君の捜索継続を命じられたらしい。大使は捜索しても見つからないという演技を続けなければならなくなった。そのため、まず住まいは変えて欲しいと要望されたので、君の住まいのマンションは解約させてもらった。それで、今後の住むところなんだけど、美樹の会社の寮に潜伏するのが一番いいと思い用意させてもらった。オメガのみだから安心だと思う。後、今のお店で働くのも見つかるので辞めてもらう。もうお店に退職手続きは取らせてもらった。普通にひっそり暮らしてもらえれば、大使は探しても見つからないと言い逃れできると言っていた。証人保護プログラムになるから生活費は心配しないで」
 RYOは呆然とする。美樹は明宏に代わり説明を続けた。
「うちの会社の寮の部屋は2人部屋なの。RYOさんもカタログ撮影の時に会ったことあると思うけど、ヘアメイクしてた由里ちゃんと同室ね。荷物なんだけど、家具と服飾品は申し訳ないけど処分させてもらった。あんなにたくさん部屋には入らないので。買い取り額500万は、この貯金通帳に入れてある。取り敢えず私の名義になってるけど、近いうちにRYOさんの名義の貯金通帳に移すね。売れなかった物と身の回り品はダンボールに詰めて部屋に運び込んであるわ」
 あまりの急展開にRYOは目を白黒させる。美樹はRYOを連れて寮に案内した。
「部屋はここ」
 コンコンとノックしたら、中から「はーい」と声がしてドアが開いた。由里が顔を出した。
「RYOさんだ」
「由里ちゃん、今日からよろしくね。RYOさんに色々教えてあげてね」
 RYOを部屋の中に入れ、美樹は去っていった。
 部屋は8畳くらい。両端にベッドと机と棚が一つずつ。真ん中にテーブルと冷蔵庫が置いてある。RYOのスペースと思われる方にはダンボール箱が積みあがっていた。
「まず、ご飯食べに行こっか」
 由里に案内してもらい、食堂に行く。部屋には自炊の設備がなく、3食ここで食べるらしい。今日の夕食はサバの味噌煮定食だった。
「大変なのに好かれちゃったね」
 由里は経緯を聞いているようだ。
「商売あがったりだよ」
 RYOは大げさにがっかりした顔をしてみせる。
「RYOさん、借金全て返済してるんだってね。すごい。私の知り合いの風俗の子で借金返せてる人って見たことない。身請けでもされないと普通は難しいんでしょ」
「確かに、そうかも」
「親に売られて、親がどんどんお金引き出すから、いつまでたっても借金なくならない可哀想な子もいるよね」
「いるいる。うちの親は自分もキャストで、それなりに稼いで死んだから、借金の額は少なかったと思う。恵まれてる方だったんだと思うよ」
「これを機会に別の仕事を考えるのもいいんじゃない?」
「俺の取柄はこの美貌だからな。顔出しNGだったら何ができるかな」
「RYOさんの美貌生かせないのは確かに痛いね」
 由里とはカタログ撮影の時に、顔を合わせて雑談程度はしていた。さっぱりしていて感じがいい。いい人と同室になれたと安心した。
「由里ちゃんはヘアメイクできるからいいよね。手に職あるって」
「違うよ。私はまだ素人。資格持ってないの。センスがいいからって美樹さん使ってくれてるけど、よそでは仕事できない。そもそも中卒なんだよ。今、夜間高校行ってる。高校卒業できたら専門学校行って、美容師にまずなりたい。道のりは遠いよ」
「……そっか、頑張ってるんだね」
「うん。美樹さんに出会えて、チャンスもらったから頑張りたいと思う」
 由里の話を感心して聞きながら食事をした。
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