8 / 43
出会い、そして別れ
8
しおりを挟む
3日目の朝、雅司が起きて仕事をしているとRYOがベッドルームから出てきた。にこにこして近寄り「おはよ」と笑顔。そして頬にチュッとキスしてきた。雅司が真っ赤になる。RYOは雅司の隣にぴったりとくっついて座る。
「お願いがあるんだけど……」
上目遣いで雅司を見るRYOはあざと可愛い。
「何ですか?」
昨夜の快感を体が覚えていて反応しそうになる。それを悟られないよう冷静を装って返事する。
「残りの5日間限定の恋人になってくれない?」
RYOは唐突に言う。
「今まで恋愛なんてできる身分じゃないとあきらめてた。神様がそんな俺を不憫に思って、こんな機会をくれたのかなと思うんだ」
雅司は言葉に詰まる。
恋人……いつもだったら、もう少し人となりを知ってから好きになるかどうか考える。
(その結果、今までは恋愛に至らず終わっていた。RYOは確かに不憫だ。5日間くらい恋人になってあげてもいいかもしれない。……というか、なりたい)
「俺で良ければ」
雅司は恥ずかしくて下を向きながら言う。RYOはぱーっと花が開いたように喜ぶ。
「林さんがいい。林さんだから恋愛したい。運命だもの」
(運命……なんだよな……)
ぴったりとくっついて隣に座っているだけで、ふわふわいい香りがし、ピリピリ電気が流れる。RYOは腕を絡ませ、頭を雅司の肩にもたれさせた。
ドキンドキン
雅司は煩悩と戦うのに必死だった。
(RYOは恋愛がしたいのであって、すぐセックスしたいは違う。ロマンを大事にしないと)
「まーくん」
RYOは顔を接近させ囁く。
「まーくんって呼んでいい?」
「いいですけど」
「ふふ」
ぴったりくっついたまま時間が過ぎる。雅司はどうしていいか分からず挙動不審になる。
「あの……」
「俺、本名、りょういちって言うの。名前で呼んで」
りょういちが笑う。
「りょう……いち?」
「なに、まーくん」
「……」
にこにこしているりょういちを見るといじらしいやら可愛いやら感情がごちゃまぜになる。
「お腹、すきませんか?」
「朝、食べてないもんね。もー昼か。なんか食べる?」
「何、頼みますか?」
ルームサービスのメニューを開く。りょういちはにこにこしてメニューではなく雅司を見つめる。
「まーくんの食べたいものでいいよ」
「そう言われても……」
雅司はりょういちに選んでもらおうとするが、りょういちは完全に遊んでしまい、真面目に選ぼうとしない。
(そう言えば、チョコ喜んで食べてたな。甘い物が好きなのかな)
「このホテル特製パンケーキは?」
「パンケーキ? 食べたことない。美味しそう。それがいい」
電話するのをにこにこして見る。電話を終えた雅司の手をぺたぺた触る。
「手、大きいね。ほら」
自分の手と合わせて、大きさを調べている。りょういちの手は白く、指がすっと長かった。爪は桜色にピカピカ光っている。
「綺麗な手だね」
「大事な商売道具だからね。手が荒れているとお客さんが痛かったら困るから」
「……」
話をしていると地雷を踏んでしまう。
パンケーキがやってきた。りょういちは目を丸くして喜んで食べ始める。
「甘い物、好きなんですね」
「俺、今の店で生まれ育ったんだけど、食事が質素で。おかみさん曰くケチってるのではなくダイエット食らしいんだけど。だから、甘い物なんてあまり食べたことなかったんだ。今、自由に食べられるようになって爆発してるの。虫歯もできなかったし、いい食生活だったんだろうけどね」
「店で生まれ育ったの?」
「うん。母親がキャスト。父親は誰か客」
りょういちは食べながら答える。反応に困る暗い境遇だ。
雅司が困っているのを見て、りょういちはふっと笑い、小さく切ったパンケーキをフォークに刺して、雅司の口に寄せる。
「はい、あーん」
雅司はモゴモゴ食べる。
「俺の話、暗いよね。まーくんの話、しようよ。まーくんの弟、男性オメガって言ってたよね。結婚相手って運命の番なの?」
「違うけど、すごく愛し合ってるよ」
「そっか。愛し合ってるのが一番だね。弟さんは何かお仕事してるの?」
「調理師目指してたけど、子供すぐできちゃったから、今は専業主夫してる」
「子供生むのも、専業主夫も大事な仕事だよ。調理師目指してたっていうことは料理上手なんだ」
「祖母が調理師でね。定食屋経営してたんだ。弟は小さい頃から祖母に教えてもらってた。まあまあ上手だと思うよ」
「いいな。俺、家事したことなくて、なんにもできないんだよ。せっかく借金返して、寮を出れたのに、家政婦さん雇わなくちゃいけなくなっちゃった。こんなんじゃ結婚してくれる相手もいないよね」
「りょういちくらい綺麗だったら、家事出来なくてもいてくれるだけで嬉しいっていう人もいるんじゃないですか?」
「俺も人形じゃないからね、なんにもしないっていうのも詰まらないかも。……やっぱり、できる限り、風俗やってくしかないかな」
りょういちと雅司は無言になる。
「Hしよっか」
りょういちは雅司に口づけながら服を脱がす。りょういちのフェロモンで雅司も陶然として体を重ねる。
「お願いがあるんだけど……」
上目遣いで雅司を見るRYOはあざと可愛い。
「何ですか?」
昨夜の快感を体が覚えていて反応しそうになる。それを悟られないよう冷静を装って返事する。
「残りの5日間限定の恋人になってくれない?」
RYOは唐突に言う。
「今まで恋愛なんてできる身分じゃないとあきらめてた。神様がそんな俺を不憫に思って、こんな機会をくれたのかなと思うんだ」
雅司は言葉に詰まる。
恋人……いつもだったら、もう少し人となりを知ってから好きになるかどうか考える。
(その結果、今までは恋愛に至らず終わっていた。RYOは確かに不憫だ。5日間くらい恋人になってあげてもいいかもしれない。……というか、なりたい)
「俺で良ければ」
雅司は恥ずかしくて下を向きながら言う。RYOはぱーっと花が開いたように喜ぶ。
「林さんがいい。林さんだから恋愛したい。運命だもの」
(運命……なんだよな……)
ぴったりとくっついて隣に座っているだけで、ふわふわいい香りがし、ピリピリ電気が流れる。RYOは腕を絡ませ、頭を雅司の肩にもたれさせた。
ドキンドキン
雅司は煩悩と戦うのに必死だった。
(RYOは恋愛がしたいのであって、すぐセックスしたいは違う。ロマンを大事にしないと)
「まーくん」
RYOは顔を接近させ囁く。
「まーくんって呼んでいい?」
「いいですけど」
「ふふ」
ぴったりくっついたまま時間が過ぎる。雅司はどうしていいか分からず挙動不審になる。
「あの……」
「俺、本名、りょういちって言うの。名前で呼んで」
りょういちが笑う。
「りょう……いち?」
「なに、まーくん」
「……」
にこにこしているりょういちを見るといじらしいやら可愛いやら感情がごちゃまぜになる。
「お腹、すきませんか?」
「朝、食べてないもんね。もー昼か。なんか食べる?」
「何、頼みますか?」
ルームサービスのメニューを開く。りょういちはにこにこしてメニューではなく雅司を見つめる。
「まーくんの食べたいものでいいよ」
「そう言われても……」
雅司はりょういちに選んでもらおうとするが、りょういちは完全に遊んでしまい、真面目に選ぼうとしない。
(そう言えば、チョコ喜んで食べてたな。甘い物が好きなのかな)
「このホテル特製パンケーキは?」
「パンケーキ? 食べたことない。美味しそう。それがいい」
電話するのをにこにこして見る。電話を終えた雅司の手をぺたぺた触る。
「手、大きいね。ほら」
自分の手と合わせて、大きさを調べている。りょういちの手は白く、指がすっと長かった。爪は桜色にピカピカ光っている。
「綺麗な手だね」
「大事な商売道具だからね。手が荒れているとお客さんが痛かったら困るから」
「……」
話をしていると地雷を踏んでしまう。
パンケーキがやってきた。りょういちは目を丸くして喜んで食べ始める。
「甘い物、好きなんですね」
「俺、今の店で生まれ育ったんだけど、食事が質素で。おかみさん曰くケチってるのではなくダイエット食らしいんだけど。だから、甘い物なんてあまり食べたことなかったんだ。今、自由に食べられるようになって爆発してるの。虫歯もできなかったし、いい食生活だったんだろうけどね」
「店で生まれ育ったの?」
「うん。母親がキャスト。父親は誰か客」
りょういちは食べながら答える。反応に困る暗い境遇だ。
雅司が困っているのを見て、りょういちはふっと笑い、小さく切ったパンケーキをフォークに刺して、雅司の口に寄せる。
「はい、あーん」
雅司はモゴモゴ食べる。
「俺の話、暗いよね。まーくんの話、しようよ。まーくんの弟、男性オメガって言ってたよね。結婚相手って運命の番なの?」
「違うけど、すごく愛し合ってるよ」
「そっか。愛し合ってるのが一番だね。弟さんは何かお仕事してるの?」
「調理師目指してたけど、子供すぐできちゃったから、今は専業主夫してる」
「子供生むのも、専業主夫も大事な仕事だよ。調理師目指してたっていうことは料理上手なんだ」
「祖母が調理師でね。定食屋経営してたんだ。弟は小さい頃から祖母に教えてもらってた。まあまあ上手だと思うよ」
「いいな。俺、家事したことなくて、なんにもできないんだよ。せっかく借金返して、寮を出れたのに、家政婦さん雇わなくちゃいけなくなっちゃった。こんなんじゃ結婚してくれる相手もいないよね」
「りょういちくらい綺麗だったら、家事出来なくてもいてくれるだけで嬉しいっていう人もいるんじゃないですか?」
「俺も人形じゃないからね、なんにもしないっていうのも詰まらないかも。……やっぱり、できる限り、風俗やってくしかないかな」
りょういちと雅司は無言になる。
「Hしよっか」
りょういちは雅司に口づけながら服を脱がす。りょういちのフェロモンで雅司も陶然として体を重ねる。
10
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話
十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。
ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。
失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。
蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。
初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。
愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】
華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。
そんな彼は何より賢く、美しかった。
財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。
ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?
君は俺の光
もものみ
BL
【オメガバースの創作BL小説です】
ヤンデレです。
受けが不憫です。
虐待、いじめ等の描写を含むので苦手な方はお気をつけください。
もともと実家で虐待まがいの扱いを受けておりそれによって暗い性格になった優月(ゆづき)はさらに学校ではいじめにあっていた。
ある日、そんなΩの優月を優秀でお金もあってイケメンのαでモテていた陽仁(はると)が学生時代にいじめから救い出し、さらに告白をしてくる。そして陽仁と仲良くなってから優月はいじめられなくなり、最終的には付き合うことにまでなってしまう。
結局関係はずるずる続き二人は同棲まですることになるが、優月は陽仁が親切心から自分を助けてくれただけなので早く解放してあげなければならないと思い悩む。離れなければ、そう思いはするものの既に優月は陽仁のことを好きになっており、離れ難く思っている。離れなければ、だけれど離れたくない…そんな思いが続くある日、優月は美女と並んで歩く陽仁を見つけてしまう。さらにここで優月にとっては衝撃的なあることが発覚する。そして、ついに優月は決意する。陽仁のもとから、離れることを―――――
明るくて優しい光属性っぽいα×自分に自信のないいじめられっ子の闇属性っぽいΩの二人が、運命をかけて追いかけっこする、謎解き要素ありのお話です。
コンサル上手なΩの伴侶が有能過ぎて尻に敷かれそうです
天汐香弓
BL
βだと思っていた優は検査でΩだと告げられてしまう。病院の帰り道助けてくれた男と触れた瞬間雷に打たれたような衝撃が走り逃げ出すが、数日後、鷹臣財閥の子息が優を迎えにやってくる。運命の番である優を手にいれた鷹臣は優をふさわしい立場にするため手を焼く。ただαに依存するだけではない優は鷹臣の気遣いを逆手に社交界だけでなく……
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
【完結】運命の番じゃないけど大好きなので頑張りました
十海 碧
BL
拙作『恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話』のスピンオフです。
東拓哉23歳アルファ男性が出会ったのは林怜太19歳オメガ男性。
運命の番ではないのですが一目惚れしてしまいました。アタックしますが林怜太は運命の番に憧れています。ところが、出会えた運命の番は妹のさやかの友人の女子高生、細川葵でした。葵は自分の将来のためアルファと結婚することを望んでおり、怜太とは付き合えないと言います。ショックを受けた怜太は拓哉の元に行くのでした。
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる