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出会い、そして別れ

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 3日目の朝、雅司が起きて仕事をしているとRYOがベッドルームから出てきた。にこにこして近寄り「おはよ」と笑顔。そして頬にチュッとキスしてきた。雅司が真っ赤になる。RYOは雅司の隣にぴったりとくっついて座る。
「お願いがあるんだけど……」
 上目遣いで雅司を見るRYOはあざと可愛い。
「何ですか?」
 昨夜の快感を体が覚えていて反応しそうになる。それを悟られないよう冷静を装って返事する。
「残りの5日間限定の恋人になってくれない?」
 RYOは唐突に言う。
「今まで恋愛なんてできる身分じゃないとあきらめてた。神様がそんな俺を不憫に思って、こんな機会をくれたのかなと思うんだ」
 雅司は言葉に詰まる。
 恋人……いつもだったら、もう少し人となりを知ってから好きになるかどうか考える。
(その結果、今までは恋愛に至らず終わっていた。RYOは確かに不憫だ。5日間くらい恋人になってあげてもいいかもしれない。……というか、なりたい)
「俺で良ければ」
 雅司は恥ずかしくて下を向きながら言う。RYOはぱーっと花が開いたように喜ぶ。
「林さんがいい。林さんだから恋愛したい。運命だもの」
(運命……なんだよな……)
 ぴったりとくっついて隣に座っているだけで、ふわふわいい香りがし、ピリピリ電気が流れる。RYOは腕を絡ませ、頭を雅司の肩にもたれさせた。
 ドキンドキン
 雅司は煩悩と戦うのに必死だった。
(RYOは恋愛がしたいのであって、すぐセックスしたいは違う。ロマンを大事にしないと)
「まーくん」
 RYOは顔を接近させ囁く。
「まーくんって呼んでいい?」
「いいですけど」
「ふふ」

 ぴったりくっついたまま時間が過ぎる。雅司はどうしていいか分からず挙動不審になる。
「あの……」
「俺、本名、りょういちって言うの。名前で呼んで」
 りょういちが笑う。
「りょう……いち?」
「なに、まーくん」
「……」
 にこにこしているりょういちを見るといじらしいやら可愛いやら感情がごちゃまぜになる。
「お腹、すきませんか?」
「朝、食べてないもんね。もー昼か。なんか食べる?」
「何、頼みますか?」
 ルームサービスのメニューを開く。りょういちはにこにこしてメニューではなく雅司を見つめる。
「まーくんの食べたいものでいいよ」
「そう言われても……」
 雅司はりょういちに選んでもらおうとするが、りょういちは完全に遊んでしまい、真面目に選ぼうとしない。
(そう言えば、チョコ喜んで食べてたな。甘い物が好きなのかな)
「このホテル特製パンケーキは?」
「パンケーキ? 食べたことない。美味しそう。それがいい」
 電話するのをにこにこして見る。電話を終えた雅司の手をぺたぺた触る。
「手、大きいね。ほら」
 自分の手と合わせて、大きさを調べている。りょういちの手は白く、指がすっと長かった。爪は桜色にピカピカ光っている。
「綺麗な手だね」
「大事な商売道具だからね。手が荒れているとお客さんが痛かったら困るから」
「……」
 話をしていると地雷を踏んでしまう。

 パンケーキがやってきた。りょういちは目を丸くして喜んで食べ始める。
「甘い物、好きなんですね」
「俺、今の店で生まれ育ったんだけど、食事が質素で。おかみさん曰くケチってるのではなくダイエット食らしいんだけど。だから、甘い物なんてあまり食べたことなかったんだ。今、自由に食べられるようになって爆発してるの。虫歯もできなかったし、いい食生活だったんだろうけどね」
「店で生まれ育ったの?」
「うん。母親がキャスト。父親は誰か客」
 りょういちは食べながら答える。反応に困る暗い境遇だ。
 雅司が困っているのを見て、りょういちはふっと笑い、小さく切ったパンケーキをフォークに刺して、雅司の口に寄せる。
「はい、あーん」
 雅司はモゴモゴ食べる。
「俺の話、暗いよね。まーくんの話、しようよ。まーくんの弟、男性オメガって言ってたよね。結婚相手って運命の番なの?」
「違うけど、すごく愛し合ってるよ」
「そっか。愛し合ってるのが一番だね。弟さんは何かお仕事してるの?」
「調理師目指してたけど、子供すぐできちゃったから、今は専業主夫してる」
「子供生むのも、専業主夫も大事な仕事だよ。調理師目指してたっていうことは料理上手なんだ」
「祖母が調理師でね。定食屋経営してたんだ。弟は小さい頃から祖母に教えてもらってた。まあまあ上手だと思うよ」
「いいな。俺、家事したことなくて、なんにもできないんだよ。せっかく借金返して、寮を出れたのに、家政婦さん雇わなくちゃいけなくなっちゃった。こんなんじゃ結婚してくれる相手もいないよね」
「りょういちくらい綺麗だったら、家事出来なくてもいてくれるだけで嬉しいっていう人もいるんじゃないですか?」
「俺も人形じゃないからね、なんにもしないっていうのも詰まらないかも。……やっぱり、できる限り、風俗やってくしかないかな」
 りょういちと雅司は無言になる。
「Hしよっか」
 りょういちは雅司に口づけながら服を脱がす。りょういちのフェロモンで雅司も陶然として体を重ねる。
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