上 下
32 / 43
ドロティア国との戦争

2 出発前夜 *

しおりを挟む
 湊への手紙を書きながら、湊の事を思い出していた。

 ドロティア国王を倒し、王位をレティシアの子供に譲る。自分は隠居して北の辺境伯に戻ろう。湊はプロポーズしたら来てくれるだろうか。2人で仲良く静かに暮らそう。

 ドロティア国王に対する恐怖が薄れた。もしかしたら、死ぬかもしれないのに、上手くいって、湊と2人で暮らせる未来ばかり考えてしまう。

 コンコン

 ノックの音がしてヒルダが入ってきた。

「母上、どうされたのですか?」
 問いかけながら、ヒルダの背後から現れた人を見て驚く。
「湊、さん!」
 トロツカ村に帰ったとばかり思っていた。明日、出立時に投函しようと、湊宛の手紙を書いていたのだ。

「湊さんに頼んで、アスティア国に残ってもらっていたの。私の秘書として働いてもらってたの」

 知らなかった。結婚式からは忙しくて、ヒルダとほとんど話をしてなかった。レティシアが休暇をとったので、3人でとっていた夕食会も忙しさにまぎれ、個々人でとるようになっていたのだ。

「湊さんと過ごすといいわ。明日からドロティア国攻めに行かなければならないから」
 ヒルダはそう言い残し、湊を置いて去っていった。

「湊さん……」
 アイザックの目は驚きでまん丸になっていたが、事態を把握して微笑んだ。
「今、湊さんに手紙を書いていたんだ」

「え? なんて?」

「なんだと思う?」
 いたずらっぽく笑う。子供のような表情を見せるアイザックに湊は驚く。

「え? わかんない……」
 湊は恥ずかしくなり下を向く。アイザックが湊の方にやってきて手をとる。

「ドロティアとの戦いが終わったら、私は王位をルクスに譲るんだ」
 ラテン語で光という意味のレティシアとルイザの子供。
「私は隠居する。レティシアはルイザとルクスと3人で暮らすんだ」

「そうしたら、アイザック様は1人で?」
 湊は心配して聞き返す。アイザックは湊にふふっと笑いかける。

「湊さん、私と一緒に生きてくれませんか?」

 ?

 アイザックの言葉の意味が分からない。分からないんではなく、自分の思ってる通りでいいのか自信ない。また。勘違いしちゃってる?

 目を白黒させている湊の頬に手を当てる。

「湊さんも私の事、好いてくれてると思ってたのに……、私の勘違いだった?」
 アイザックは湊の首に鼻を寄せる。抱かれて、湊はパニックになる。

「好き……でしょ。こんないい香させて……。私達は運命なんだよ」

 自分の匂いは分からないけど、アイザックからはとても良い香りがする。

 最初にアイザックに惹かれたのは、航大に似ているからだった。でも、途中から航大の事は忘れていた。そのアイザックから告白されている。夢みたい。夢……じゃない。

「僕でいいんですか?」
 なんだか、泣きそうになる。

「湊さんがいい。湊さんは感じない? 私からの愛情フェロモン」
  アイザックからは、いい香りが放たれている。ずっと嗅いでいたいような、いい香り。湊をくるんで安心させる香り。安心だけじゃなくて、ちょっとムラムラする香り。

「……はあ……」
 湊の呼吸が荒くなる。なんだか熱っぽい。風邪かな。でも、具合は悪くない。というよりアイザックと触れている所がぞわぞわして気持ちいい。

「……湊さん、もしかして、ヒート?」

「ふぇ?」

 これがヒートなんだろうか。ふわふわしてアイザックに触れてもらっている所が全部気持ちいい。
 もっともっと触って欲しい。

 アイザックが慌てて離れる。

「なんでぇ……」
 アイザックが離れたことに傷つく。泣きそうになる。

「わ、私はアルファだから、ヒートのオメガには近づけない」
 アイザックの声が震える。じりじりとあとずさりする。

「なんでぇ」
 湊は立っていられなくて座りこんでしまう。べそべそ泣き出す。

「アイザック様の嘘つき。僕の事、好きじゃないんだ」
「それは違う。でも、そんな甘い匂いを立てられると、私の理性が持たない。湊さんを大事にしたいんだ」

 湊は座り込んだまま、両手を差し出す。
「大事にして。抱っこ……」

 ヒートで理性の飛んだ湊は本能のままにアイザックを求めた。運命の番の可愛らしいおねだりに逆らえるアルファはいない。観念して湊の前に神妙に座る。

「ん……」
 湊は当然のように両手を差し伸べる。アイザックは湊の腰を引き寄せ、たくましい両腕で抱きしめた。

「きちんと、結婚してからと思ってたのに。湊さんのせいだから……」
 うわ言のようにつぶやくとアイザックは湊の唇に噛みついた。湊の唇と歯を分厚い舌で舐め、開いた瞬間に湊の舌を吸った。二人とも、お互いの唾液の甘さに酔うように口づけをし続けた。

 アイザックは唇を離して、湊を見つめる。湊はとろけきった表情をしていた。

「湊……さん?」
「やめちゃ、やだぁ」
 湊は唇を尖らして、アイザックの顔中についばむ様にキスした。

「そんなことしたら、私は止められないよ」
 アイザックは湊に言い聞かせる。
「止めなくていいのに。何でしてくれないの」
 湊はベソベソ泣きながらアイザックに拙いキスを続けた。

 アイザックは理性の限界だった。湊のシャツの裾から手をいれる。湊の腰から背中を撫でた。

「……ふぁ……」
 気持ちよさそうに撫でられている湊を見て、シャツのボタンを外し始めた。可愛い胸の尖りが見えてきたので親指で触れる。

「ひゃん……」
 湊の体がびくつく。

「痛い?」
 慌ててアイザックが聞く。湊が恥ずかしそうに下を隠す。甘い香りが隠した下から香ってるのに気づいたアイザックは夢中になって湊のズボンを脱がせた。湊の下は屹立して甘い匂いの蜜を溢れさせていた。隠そうとする手を払いのけて、アイザックは湊の下をやわやわと擦る。先端を少し強めにこするとびくついて簡単に蜜を吐いた。手に受けた蜜を湊の後孔にのばす。湊の後孔は愛液で濡れそぼっていた。

 後ろに指を1本いれる。1本は入るがかなりきつかった。広げようと慣らしていると、湊が我に返ってきた。
 何をされているのか、湊には分かっていた。両足を上にあげ、アイザックがしやすいように協力した。アイザックもそれに気が付き、ちゅっとキスをしてくれた。

 アイザックの強いフェロモンに当てられて、軽いヒートになったけど、未発達の湊の体はまだ固い様だった。アイザックが指を2本入れると違和感が強すぎて、湊は唇を噛みしめた。ちらりとアイザックの下に目をやる。  
 たぶん、かなり大きい。
 湊は目をつぶり、覚悟を決めた。

 湊の体から力が抜けたのに気が付いたアイザックは湊を見つめた。覚悟を決め、しかめっつらになった湊を見てアイザックは苦笑した。湊からのフェロモンも減ってきていた。

「大丈夫、心配しなくても。今日はもうしないよ」
 アイザックは湊の額に口付けると、指を抜いた。湊は、ほっとしたような寂しいような複雑な気持ちになった。

「僕ばっかり、気持ちよくしてもらって。アイザック様はどうするの?」
 アイザックの下の膨らみを見つめる。
「僕、手か口でしてみましょうか?」

 アイザックは湊の小さな手と小さな口を見る。
「いや、いいよ。自分で何とかするから」

 アイザックは遠慮するので、湊は膨れる。
「入れたっていいのに。僕、我慢できる」

「それじゃ、いやなの。湊が私のコレで気持ちよくなるようじゃないと」

「ごめんね。僕、未発達で」
 湊はしょんぼりする。やっぱり、こんな自分は嫌われちゃうかな。
 しょんぼりした湊を見て、アイザックは考えを変えた。

「やっぱり、少し付き合ってもらおうかな。後ろ向いて、太ももを締めて」
 お尻にアイザックの昂りを感じた。背中にアイザックの胸が押し付けられる。太ももの隙間にアイザックの昂りが入る。そしてアイザックが動き出した。湊の昂りの裏筋がアイザックの昂りにこすりつけられ、気持ちよくなり屹立した。アイザックの手は背後から湊の胸の尖りを捏ねた。胸の尖りから屹立まで快感がつながっていく。

「あ……ン……」
 湊はまた蜜を吐いてしまう。アイザックの動きの速度が増した。

「ふ……ン……」
 アイザックの動きが止まり湊の太ももの間にあるものがびくびくと震え、大量に蜜を吐く。湊は脚が震えた。アイザックは湊のうなじを首輪の上から口づけ続けた。本番の行為のようなそれに、湊もすっかり気持ちよくなってしまい、何度か達した。疲れ果てた湊にどろりとした睡魔がやってくる。湊は意識を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【短編】劣等αの俺が真面目くんに付き纏われているのはなぜだ? 〜オメガバース〜

cyan
BL
ダイナミクス検査でαだと発覚した桐崎賢斗だったが、彼は優秀ではなかった。 何かの間違いだと言われ、周りからαのくせに頭が悪いと馬鹿にされた。 それだけが理由ではないが、喧嘩を繰り返す日々。そんな時にクラスメイトの真面目くんこと堂島弘海に関わることになって……

【完結】うたかたの夢

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
 ホストとして生計を立てるサリエルは、女を手玉に取る高嶺の花。どれだけ金を積まれても、美女として名高い女性相手であろうと落ちないことで有名だった。冷たく残酷な男は、ある夜1人の青年と再会を果たす。運命の歯車が軋んだ音で回り始めた。  ホスト×拾われた青年、R-15表現あり、BL、残酷描写・流血あり  ※印は性的表現あり 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 全33話、2019/11/27完

アルファ嫌いの子連れオメガは、スパダリアルファに溺愛される

川井寧子
BL
オメガバース/オフィスラブBL/子育て/スパダリ/溺愛/ハッピーエンド ●忍耐強く愛を育もうとするスパダリアルファ×アルファが怖いオメガ●  亡夫との間に生まれた双子を育てる稲美南月は「オメガの特性を活かした営業で顧客を満足させろ」と上司から強制され、さらに「双子は手にあまる」と保育園から追い出される事態に直面。途方に暮れ、極度の疲労と心労で倒れたところを、アルファの天黒響牙に助けられる。  響牙によってブラック会社を退職&新居を得ただけでなく、育児の相談員がいる保育園まで準備されるという、至れり尽くせりの状況に戸惑いつつも、南月は幸せな生活をスタート!  響牙の優しさと誠実さは、中学生の時の集団レイプ事件がトラウマでアルファを受け入れられなかった南月の心を少しずつ解していく。  心身が安定して生活に余裕が生まれた南月は響牙に惹かれていくが、響牙の有能さが気に入らない兄の毒牙が南月を襲い、そのせいでオメガの血が淫らな本能を剥き出しに!  穏やかな関係が、濃密な本能にまみれたものへ堕ちていき――。

アルファ貴公子のあまく意地悪な求婚

伽野せり
BL
凪野陽斗(21Ω)には心配事がある。 いつまでたっても発情期がこないことと、双子の弟にまとわりつくストーカーの存在だ。 あるとき、陽斗は運命の相手であるホテル王、高梨唯一輝(27α)と出会い、抱えている心配事を解決してもらう代わりに彼の願いをかなえるという取引をする。 高梨の望みは、陽斗の『発情』。 それを自分の手で引き出したいと言う。 陽斗はそれを受け入れ、毎晩彼の手で、甘く意地悪に、『治療』されることになる――。 優しくて包容力があるけれど、相手のことが好きすぎて、ときどき心の狭い独占欲をみせるアルファと、コンプレックス持ちでなかなか素直になれないオメガの、紆余曲折しながらの幸せ探しです。 ※オメガバース独自設定が含まれています。 ※R18部分には*印がついています。 ※複数(攻め以外の本番なし)・道具あります。苦手な方はご注意下さい。 この話はfujossyさん、エブリスタさんでも公開しています。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

正婿ルートはお断りいたしますっ!

深凪雪花
BL
 ユーラント国王ジェイラスの四番目の側婿として後宮入りし、一年後には正婿の座を掴むヒロイン♂『ノア・アルバーン』に転生した俺こと柚原晴輝。  男に抱かれるなんて冗談じゃない! というわけで、溺愛フラグを叩き折っていき、他の側婿に正婿の座を押し付けようとするが、何故か溺愛され、正婿ルートに突入してしまう。  なんとしても正婿ルートを外れるぞ、と日々奮闘する俺だけど……? ※★は性描写ありです。

落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす
BL
 αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。  努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。  世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。  失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。  しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。  あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?  コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。  小説家になろうにも掲載。

処理中です...