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出会い

3 レティシアの婚礼衣装

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 湊は早速、婚礼衣装の準備をした。チカット国に問い合わせたレティシアのサイズから衣装を仮縫いして持ってきている。湊はこれをレティシアに着せて合わせる予定だ。土台は白のシルクのシンプルなロングドレスで、上から総レースを被せる形である。湊がアスティア国で土台のドレスを仕上げる。今、トロツカ村の手芸グループが総がかりで編んでいるレースが出来上がったら、運んでもらい土台のドレスに取り付けて完成だ。

 アイザックの方もサイズが先に分かっていたので、衣装を仮縫いして持ち込んでいる。アイザックに着てもらい、サイズを合わせて、本縫いをしていく予定だ。

「想像してたよりシンプルなドレスなのね」
 湊の仕事を横で見て、ルイザが言う。
「今回は急ぎの仕事だったから。でも、今、総動員でレース編んでて、この上に被せるから、とても素敵になるよ」
「レース……」
 ルイザの目が輝く。
「トロツカ村のレースは高級品なのよ。人間ではできない細い糸を細い針で編んでいるから」
 湊は嬉しくなる。
「知ってるの?」
「有名よ。でも、数が少ないから、お金を積んでも買えないって聞いたわ」
「そうなんだ」
 湊は得意な気持ちになる。

「ただいま」
 レティシアが帰ってきた。今日は仮縫いがあるので早めの帰宅だ。ずんずんと湊に近づく。
 湊はお辞儀をする。
「君がトロツカ村から来た衣装係かい?」
 レティシアは湊を見つめる。強い視線に湊は驚く。
「は、はい。榊原湊と申します。よろしくお願いいたします」
 レティシアはじろじろ湊を上から下まで見つめた。

 なんだろう。僕、なんかした?

 湊はたじたじとなる。
 レティシアはふっと笑い、柔らかい表情になる。
「いやいや、失礼。オメガだから大丈夫、と言われていたけど、オメガでも男性なのだから後宮に入れてはいけないのじゃないかと疑ってて。男性オメガを初めて見たので用心したんだ」

 そっか、男だから、ね。
 でも、その笑いは男でも大丈夫、という笑いか。

「じゃ、早速、仮縫いする?」
 湊はお辞儀して答える。
「お手数ですが、先に入浴をお願いいたします」
 レティシアは純白のドレスを見て頷いた。
「ルイザ、手伝って」
「……。はい」
 ルイザが顔を赤らめてレティシアと浴室に向かった。

 入浴を終えたレティシアが肌着1枚で湊の前に立つ。すらりとした長身で脚が長い。胸は大きく、ウエストはくびれている。ヒップは上むきだ。完璧なプロポーションの美人が肌着1枚で立っているのに、やはり湊の性欲センサーは動かない。しいて言えば羨ましさはある。自分もこんな美女だったら、航大に積極的に迫れるのにと。

 淡々と衣装を着せ、多少大き目に作っているので待ち針を打って補正していく。
「少し、お痩せになりましたか?」
 多少大き目に作ってあるとはいえ、ウエストは、かなりゆとりがあった。
「ダイエット成功かな?」
 レティシアはにこっと笑う。
「レティシア様はダイエットが必要な体型ではございません。チカット国から聞いていたサイズよりかなり落ちています。今の体型に合わせて作りますので、ここからはもうお痩せにならないでください」
「わかった、わかった」
 衣装合わせ終了し、待ち針で体を傷つけない様にそろそろと脱がせた。
「私の仕事は以上です。お疲れ様でした。またレースができてきたら、最後の合わせをお願いします」
 お辞儀してレティシアの部屋を去った。これからは夜を徹して本縫に入る予定だ。

「大丈夫、でしょ」
 ルイザはレティシアに笑いかける。
「そうね。彼は多分、女性には全く興味ない人だね」
「私、トロツカ村の職人の仕事に興味があるの。1人だと退屈だから、見学してもいいわね」
「うん、邪魔にならないようにね」
「もう」
 ルイザは子ども扱いされたので膨れる。レティシアは笑って抱きしめる。
 レティシアのウエストに腕を回して、先ほど湊が言っていたことを確認する。
 確かに細くなった。
 ルイザはレティシアの笑顔を見つめる。
 アスティア国に来てから、ずっと闇魔術を払う仕事をしている。一緒に来た巫女達もへとへとの様子で帰ってくるとすぐ部屋に入って休んでしまう。
 レティシアの体が心配だけど、私が不安がるとレティシアの心に負担をかけてしまう。
 ルイザは精一杯微笑んだ。
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