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海外で日本人に会う感覚
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風神達と戯れが終わってから、なんだかんだ仕事をして、夕方近くになった。最後の書類にサインをして、グランデに渡した。
「はい、お疲れ様でした」
「あぁ、お疲れ」
正直疲れたから、風呂に入って、飯食って寝たい。けど……。
「それでは、準備をして部屋で待っていて下さい」
「その、準備って何を」
グランデの表情はいたって普通で、何を考えているのか読めない。
「心配いりません。メリーナに全て頼んでありますので」
「え? メリーナにって……女の子に頼んだっていうのか!」
「男がいいってことですか」
グランデの声色が一気に下がった。地雷を踏んだようだ。訂正しなければ、氷像にされてしまう。
「そうじゃなくて、メリーナだって嫌だと思うんだけど」
「そうでしょうか。しかし、屋敷内で準備できる人物は、私とメリーナ、グレア様くらいですが」
えぇ、そんなに少数の人しかできない準備ってなんだ。もしかして、暗殺とかじゃないだろうな。
「そ、そんなに少ないんだ」
「それでは、私も準備してまいりますので」
そう言ったグランデは、早々に部屋を出て行った。
「どういうことなんだよ」
ぼそっと言った独り言は、虚無に消えていった。
とうとう辿り着いた自室の扉の前で、俺は佇んでいた。この先に一体何があるというのだろうか。グランデの求める褒美ってなんだ。ドアノブを掴もうと手を上げると震えていた。落ち着けと深呼吸をする。どうあっても、開けざるおえないのだ。あぁ、どうか死にませんように。
ドアノブを掴み、扉を開けた。部屋の中にあるものを見て、驚いた。この世界にあるとは思わなかった。海外旅行で日本人に会ったような感覚。
「ブレイド様、こちらにきて下さい。早くしないと間に合いませんよ」
「間に合わないって、今日は何かあるのか?」
「それはもう、特別な日ですから」
それから、俺はメリーナにあるものを着せて貰った。いや、着付けてもらうのが正しい。
鏡の前で、俺は紫の生地に牡丹の刺繍がされた着物に紺色の袴を着ていた。
「とてもお似合いですよ」
メリーナはそう言ってくれるが、男であるレイルが牡丹の刺繍が入る着物を着るってありなのだろうか。
「あのさ、刺繍が入ってないのとかないの?」
「え? エトワール様とご一緒に行かれるんですよね?」
「そうだけど」
どういうことだ。
「刺繍が入っていないものを着ていくのは、相手を探していると言っていると同じですよ」
その声に、振り返るとグランデが部屋に入って来るところだった。銀色の生地に同じく牡丹の刺繍をした着物に黒の袴だ。漆黒の瞳と黒髪にとても似合ってる。和服のグランデ、カッコいい。
「相手を探してる?」
メリーナの方を向く。少し困ったような表情をしている。
「はい、刺繍なしの方はその……お付き合いしたい方を探しているという意思表示になります。その反対に、探していない方は何かしらの刺繍が入ったものをお召しになってます」
「そうか」
「全く、常識をであるというのに、勉強不足なものも困ったものですね」
相変わらずの毒舌。それよりも、なぜにグランデと同じ刺繍。それなら、別の刺繍でもいい筈だ。
「ぐっ。それより、なんで同じ刺繍なんだよ」
「レイル様に、皆が唆されたりしたら困りますから」
レイルに唆される奴っているのだろうか。確かに、綺麗な外見はしているが、中身が最悪なのは皆、周知済みだろう。
「どういう」
どういう意味かと問おうとした時、メリーナがこっそりと耳打ちしてきた。
「ブライド様。同じ刺繍を召し上がるのは」
「メリーナ。不要です」
グランデの制止によって、メリーナは黙ってしまった。同じ刺繍だと何があるっていうんだ。
「え? どういうことだよ」
「さぁ、行きますよ」
グランデに左手を掴まれ引っ張られる。急に、引っ張られるものだから、足がもたつく。
「いや、教えろよ!」
「エトワール様、羽織はどうなさいます」
「心配いりません。今日は、私がいますので」
待て、羽織がないとまずいのか! グランデがいれば大丈夫って、どういうことだ!
「畏まりました。行ってらしゃいませ」
メリーナに見送られて、俺たちは屋敷を後にした。
「はい、お疲れ様でした」
「あぁ、お疲れ」
正直疲れたから、風呂に入って、飯食って寝たい。けど……。
「それでは、準備をして部屋で待っていて下さい」
「その、準備って何を」
グランデの表情はいたって普通で、何を考えているのか読めない。
「心配いりません。メリーナに全て頼んでありますので」
「え? メリーナにって……女の子に頼んだっていうのか!」
「男がいいってことですか」
グランデの声色が一気に下がった。地雷を踏んだようだ。訂正しなければ、氷像にされてしまう。
「そうじゃなくて、メリーナだって嫌だと思うんだけど」
「そうでしょうか。しかし、屋敷内で準備できる人物は、私とメリーナ、グレア様くらいですが」
えぇ、そんなに少数の人しかできない準備ってなんだ。もしかして、暗殺とかじゃないだろうな。
「そ、そんなに少ないんだ」
「それでは、私も準備してまいりますので」
そう言ったグランデは、早々に部屋を出て行った。
「どういうことなんだよ」
ぼそっと言った独り言は、虚無に消えていった。
とうとう辿り着いた自室の扉の前で、俺は佇んでいた。この先に一体何があるというのだろうか。グランデの求める褒美ってなんだ。ドアノブを掴もうと手を上げると震えていた。落ち着けと深呼吸をする。どうあっても、開けざるおえないのだ。あぁ、どうか死にませんように。
ドアノブを掴み、扉を開けた。部屋の中にあるものを見て、驚いた。この世界にあるとは思わなかった。海外旅行で日本人に会ったような感覚。
「ブレイド様、こちらにきて下さい。早くしないと間に合いませんよ」
「間に合わないって、今日は何かあるのか?」
「それはもう、特別な日ですから」
それから、俺はメリーナにあるものを着せて貰った。いや、着付けてもらうのが正しい。
鏡の前で、俺は紫の生地に牡丹の刺繍がされた着物に紺色の袴を着ていた。
「とてもお似合いですよ」
メリーナはそう言ってくれるが、男であるレイルが牡丹の刺繍が入る着物を着るってありなのだろうか。
「あのさ、刺繍が入ってないのとかないの?」
「え? エトワール様とご一緒に行かれるんですよね?」
「そうだけど」
どういうことだ。
「刺繍が入っていないものを着ていくのは、相手を探していると言っていると同じですよ」
その声に、振り返るとグランデが部屋に入って来るところだった。銀色の生地に同じく牡丹の刺繍をした着物に黒の袴だ。漆黒の瞳と黒髪にとても似合ってる。和服のグランデ、カッコいい。
「相手を探してる?」
メリーナの方を向く。少し困ったような表情をしている。
「はい、刺繍なしの方はその……お付き合いしたい方を探しているという意思表示になります。その反対に、探していない方は何かしらの刺繍が入ったものをお召しになってます」
「そうか」
「全く、常識をであるというのに、勉強不足なものも困ったものですね」
相変わらずの毒舌。それよりも、なぜにグランデと同じ刺繍。それなら、別の刺繍でもいい筈だ。
「ぐっ。それより、なんで同じ刺繍なんだよ」
「レイル様に、皆が唆されたりしたら困りますから」
レイルに唆される奴っているのだろうか。確かに、綺麗な外見はしているが、中身が最悪なのは皆、周知済みだろう。
「どういう」
どういう意味かと問おうとした時、メリーナがこっそりと耳打ちしてきた。
「ブライド様。同じ刺繍を召し上がるのは」
「メリーナ。不要です」
グランデの制止によって、メリーナは黙ってしまった。同じ刺繍だと何があるっていうんだ。
「え? どういうことだよ」
「さぁ、行きますよ」
グランデに左手を掴まれ引っ張られる。急に、引っ張られるものだから、足がもたつく。
「いや、教えろよ!」
「エトワール様、羽織はどうなさいます」
「心配いりません。今日は、私がいますので」
待て、羽織がないとまずいのか! グランデがいれば大丈夫って、どういうことだ!
「畏まりました。行ってらしゃいませ」
メリーナに見送られて、俺たちは屋敷を後にした。
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ご感想、ありがとうございます!
ゆっくりとですが、最後まで頑張りたいと思いますので、これからも応援して頂けると嬉しいです。
ありがとうございます✨
更新お疲れ様です。
続きも楽しみにしてます。
このままだと、あまりにも不憫で泣
来月からBL大賞にエントリーできますね。
面白い作品なので、エントリーして続き更新して欲しいです。
応援してます。
ご感想、ありがとうございます。
現在、プライベート事情が少し落ち着いてきており、ゆっくりとですが話を書いています。大変申し訳ありませんが、気長にお待ち頂けるとありがたいです。
BL大賞への参加は考え中な為、未定です。
これからも応援して頂けると嬉しいです。
ありがとうございました!
ご感想、ありがとうございます。面白いと言って頂けて、とても嬉しく思います。
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