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祝いと黒歴史
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グランデと共に執務室に戻ってきた時、ライトはソファに座ったまま料理を見つめていた。てっきり、先に食べていると思っていたので少し驚いた。
俺達が入って来た事に気づいたライトは、ソファから立ち上がり、少し不安そうにこちらを見てきた。
「大丈夫か」
このライトの言葉には、多分二つの意味が込められていると思う。グランデへの心配に対するものと、俺に対する心配。
「もう大丈夫ですよ」
グランデがそう言って、ライトが俺へと視線を向けてくる。多分、俺の返答を待っているんだ。
「大丈夫だ」
俺はそう伝えた。それを聞いて、ライトがやっと笑った。あたたかな笑顔で迎えて貰えたのだ。
「よかった。レイル様に解決して貰えたんだな」
ライトも心配していたんだ。
「はい、お二人にご迷惑をかけました」
「そんな事ないぜ! お前はお前だからよ!」
ライトがグランデの肩を叩いている。グランデとライトの仲の良さを見て、嬉しくなった。二人の繋がりは確かなものだ。親友とも呼べる程だろう。
「さぁ、二人とも食べよう」
二人に着席を促し、食卓を囲む。
「グランデの快気祝いに乾杯だな!」
「そんな大袈裟に言わないで下さい。ですが、ありがとうございます」
「それじゃ「「「乾杯!!」」」
打ち鳴らされるグラス。和気あいあいとした雰囲気に心が躍る。これからも、二人と一緒に居たい。そう願った時、少し心のどこかでチクッした痛みを感じた。それが何なのか、俺にはよく分からなかった。
夕食を食べ終わり、いつの間にか三人で風呂に入る事になった。なぜそうなかったのか分からない。多分だが、グランデとライトに酒が入ったからだ。それも、仮装の夜会の時以上に飲んでしまっている。ライトは大酒飲んでも陽気になるだけだが、グランデは大いに普段と違った。ぼんやりとして何というか艶めかしい。
ちなみに俺は、コップの半分しか入っていない酒をチビチビとしか飲まなかったから、大分しらふに近い。
「三人で風呂だなんて、すごく久しぶりだな。それこそ、戦時代以来か」
ライトの声はとても楽しそうに聞こえた。多分、本当に久しぶりなんだろうなと思う程だ。
「戦と言っても、大分前です。傷がしみて痛いと大袈裟に泣いたのはライトです」
「グランデ、大丈夫か? 会話になってないよ」
俺の言葉も届いていない様で、俯くグランデの背中をさする。
「良いじゃねぇか! 無礼講だ!!」
ガハハハと笑うライト。正直ライトを直視できなかった。鍛え上げられた筋肉を何度見ても、慣れなくて、心臓がドキドキしてうるさい。酒も入っているのも確かだが、好きな人と裸で一緒に風呂に入るのってやば過ぎる。それも、好きな人と好きな人に挟まれるってどういう状況なんだろう。グランデが俺の肩に寄り掛かってくる。さっきから、会話になってないし、調子悪くなる前に、湯から出た方がいい。だが、グランデの吐息やら、触れ合う肌に、もっとドキドキしてしまう。
いや、俺じゃなくて、グランデを好きなのはレイルであって……あれ? ライトも好きなのもレイルなのか? それとも、俺がライトの事……まさか。
「レイル様。顔赤いぞ、あがるか」
「そ、そうする」
「ほら、グランデ。あがるぞ。掴まれ」
ライトがグランデを湯船から出してくれて助かった。荷物の様に、グランデを肩に担いで行ってしまった。あの力を俺もあれば、苦労しなさそうだ。
そろそろと湯船から出て、立ち上がった時、ライトが一人で俺の目の前に立っていた。驚いて転ばなかった俺を褒め称えたい。グランデはもう、脱衣場に置いて来たのだろうか。
「大丈夫か」
「あぁ、大丈夫だ」
「転んだら、困るだろう。運んでやる」
「え?」
グランデもだがライトも過保護すぎるだろう。レイルの年で、転んだとしても怪我や死ぬ確率は低い。痛くてのたうち回るだけだ。
「いや、歩いていける」
「頼むから、運ばせてくれ」
そう言ったライト、いつもと全く違う顔をしていた。真顔でそう言われて、断れる人は少ないだろう。いつも、笑いながら冗談混じりに言ってくる筈なのに、何かあったのだろうか。
「わかった」
そう俺が答えると、ライトは何も言わずに俺を抱え上げてきた。
「すまない。感謝しているんだ」
「ライト」
「グランデをありがとうな」
ライトの言葉に心があたたくなった。そう、心の一部は温かい……。
「あぁ、気にするな……だから、この運び方はやめろ!」
「お姫様を運ぶのは、この方法に決まってるだろ!」
お姫様抱っこってヤツだ。そういえば、グランデもしてきたな。あれか、この二人はこれが好きなのか! ライトに真面目に対応したのが間違えだった。
「グランデは荷物を運ぶ様に、担いでいただろ! 俺だってそれでいい!」
「何を言ってるんだ。グランデは同僚で、レイル様は領主様だ。格が違うんだから、運び方だって上流階級で行かないとな」
「なんか違う! こんなの違う! いいから、おろせ!!」
「心配するな。ちゃんと脱衣場まで運んでやる!」
「おおいいい!! 聞けって!!」
俺の言葉なんかお構いなしに、ライトにお姫様抱っこされたまま俺は運ばれてしまった。俺の黒歴史に、男に二回もお姫様抱っこされて、風呂から運ばれたが記入された。
*シリアス・鬱な展開は一応ここまでとなります。ご覧になり、ありがとうございました。次回から、通常展開になります。
俺達が入って来た事に気づいたライトは、ソファから立ち上がり、少し不安そうにこちらを見てきた。
「大丈夫か」
このライトの言葉には、多分二つの意味が込められていると思う。グランデへの心配に対するものと、俺に対する心配。
「もう大丈夫ですよ」
グランデがそう言って、ライトが俺へと視線を向けてくる。多分、俺の返答を待っているんだ。
「大丈夫だ」
俺はそう伝えた。それを聞いて、ライトがやっと笑った。あたたかな笑顔で迎えて貰えたのだ。
「よかった。レイル様に解決して貰えたんだな」
ライトも心配していたんだ。
「はい、お二人にご迷惑をかけました」
「そんな事ないぜ! お前はお前だからよ!」
ライトがグランデの肩を叩いている。グランデとライトの仲の良さを見て、嬉しくなった。二人の繋がりは確かなものだ。親友とも呼べる程だろう。
「さぁ、二人とも食べよう」
二人に着席を促し、食卓を囲む。
「グランデの快気祝いに乾杯だな!」
「そんな大袈裟に言わないで下さい。ですが、ありがとうございます」
「それじゃ「「「乾杯!!」」」
打ち鳴らされるグラス。和気あいあいとした雰囲気に心が躍る。これからも、二人と一緒に居たい。そう願った時、少し心のどこかでチクッした痛みを感じた。それが何なのか、俺にはよく分からなかった。
夕食を食べ終わり、いつの間にか三人で風呂に入る事になった。なぜそうなかったのか分からない。多分だが、グランデとライトに酒が入ったからだ。それも、仮装の夜会の時以上に飲んでしまっている。ライトは大酒飲んでも陽気になるだけだが、グランデは大いに普段と違った。ぼんやりとして何というか艶めかしい。
ちなみに俺は、コップの半分しか入っていない酒をチビチビとしか飲まなかったから、大分しらふに近い。
「三人で風呂だなんて、すごく久しぶりだな。それこそ、戦時代以来か」
ライトの声はとても楽しそうに聞こえた。多分、本当に久しぶりなんだろうなと思う程だ。
「戦と言っても、大分前です。傷がしみて痛いと大袈裟に泣いたのはライトです」
「グランデ、大丈夫か? 会話になってないよ」
俺の言葉も届いていない様で、俯くグランデの背中をさする。
「良いじゃねぇか! 無礼講だ!!」
ガハハハと笑うライト。正直ライトを直視できなかった。鍛え上げられた筋肉を何度見ても、慣れなくて、心臓がドキドキしてうるさい。酒も入っているのも確かだが、好きな人と裸で一緒に風呂に入るのってやば過ぎる。それも、好きな人と好きな人に挟まれるってどういう状況なんだろう。グランデが俺の肩に寄り掛かってくる。さっきから、会話になってないし、調子悪くなる前に、湯から出た方がいい。だが、グランデの吐息やら、触れ合う肌に、もっとドキドキしてしまう。
いや、俺じゃなくて、グランデを好きなのはレイルであって……あれ? ライトも好きなのもレイルなのか? それとも、俺がライトの事……まさか。
「レイル様。顔赤いぞ、あがるか」
「そ、そうする」
「ほら、グランデ。あがるぞ。掴まれ」
ライトがグランデを湯船から出してくれて助かった。荷物の様に、グランデを肩に担いで行ってしまった。あの力を俺もあれば、苦労しなさそうだ。
そろそろと湯船から出て、立ち上がった時、ライトが一人で俺の目の前に立っていた。驚いて転ばなかった俺を褒め称えたい。グランデはもう、脱衣場に置いて来たのだろうか。
「大丈夫か」
「あぁ、大丈夫だ」
「転んだら、困るだろう。運んでやる」
「え?」
グランデもだがライトも過保護すぎるだろう。レイルの年で、転んだとしても怪我や死ぬ確率は低い。痛くてのたうち回るだけだ。
「いや、歩いていける」
「頼むから、運ばせてくれ」
そう言ったライト、いつもと全く違う顔をしていた。真顔でそう言われて、断れる人は少ないだろう。いつも、笑いながら冗談混じりに言ってくる筈なのに、何かあったのだろうか。
「わかった」
そう俺が答えると、ライトは何も言わずに俺を抱え上げてきた。
「すまない。感謝しているんだ」
「ライト」
「グランデをありがとうな」
ライトの言葉に心があたたくなった。そう、心の一部は温かい……。
「あぁ、気にするな……だから、この運び方はやめろ!」
「お姫様を運ぶのは、この方法に決まってるだろ!」
お姫様抱っこってヤツだ。そういえば、グランデもしてきたな。あれか、この二人はこれが好きなのか! ライトに真面目に対応したのが間違えだった。
「グランデは荷物を運ぶ様に、担いでいただろ! 俺だってそれでいい!」
「何を言ってるんだ。グランデは同僚で、レイル様は領主様だ。格が違うんだから、運び方だって上流階級で行かないとな」
「なんか違う! こんなの違う! いいから、おろせ!!」
「心配するな。ちゃんと脱衣場まで運んでやる!」
「おおいいい!! 聞けって!!」
俺の言葉なんかお構いなしに、ライトにお姫様抱っこされたまま俺は運ばれてしまった。俺の黒歴史に、男に二回もお姫様抱っこされて、風呂から運ばれたが記入された。
*シリアス・鬱な展開は一応ここまでとなります。ご覧になり、ありがとうございました。次回から、通常展開になります。
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