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虎の子と狼の子

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 あれから、すぐにグランデは戻ってきた。俺に怒鳴ったことを謝ってくれて、仲直りできたのは良かった。しかし、グランデの笑顔に寂しさを感じたは何故だったのだろう。グランデは笑っているのに、胸の所がなんだかもやもやする。だが、この思いについて深く考える暇は、俺たちには無かった。

 その後、二週間程大忙しだった。ロッドの為の住宅や店の建設予定や、今まで封鎖していたルートの開放、資材や商品の発注、ロッド以外に苦しんでいた者への救済や補助など、猫の手も借りたい程忙しかった。寝る間も削って、やっと終盤まできた。後は、現地でやって貰いながら、対応するだけだ。

 執務室の机の上は、書類や資料で一杯だ。縮こまった筋肉を伸ばす為、両腕を上へと伸ばす。やっと開放されて、ホッとした。ふと視線を右へとずらすと、そこには虎と狼の魔ぐるみが置かれていた。いや、座って大人しくしている。彼らは、魔法で動くぬいぐるみだそうだ。

 魔法陣が中に施されていて、魔力とか気力とかをいれると動き出す。そして、いれる時の感情や思いによって、ぬいぐるみの性格とか、考え方が決まる。虎の子は、とても活発で明るく、甘えん坊。狼の子は、普段は穏やかでのほほんとしているが、俺の欲しいと思ったものを持ってきてくれるなど、その場で気が利くしっかり者。明らかに、グランデとライトが、込めたと思うのだが、二人とも力をいれたのか分からないという。お祭りで獲ってから屋敷に帰るまでの間。その間に無意識にいれたという事なのだろう。虎の子、狼の子と呼んでいたが、呼びづらい為、名前を決める事になった。グランデとライトは俺に任せるというので、虎の子は、雷神で、狼の子は風神と決めた。名前の由来として、雷神は、雷鳴の如く、大きく唸るから。風神は、風の様に素早く動けるからだ。グランデとライト、風神、雷神、皆喜んでくれた。

 ぐ~っと腹がなった。朝食を摂ってから、何も食べていない所為だ。時計を見ると、夕方を指していた。俺の腹の訴えに気づいた風神が、部屋から出ていった。多分、グランデを呼びに行ったのだろう。できた子で助かります。夕食までの間、出来上がった書類をまとめて置こうと視線を書類に落とした時、手元が暗くなった。何事かと顔を上げると、雷神が俺の側に来ていた。ぐるぐると喉を鳴らし俺の太腿の上に首を乗せてきた。耳と耳の間の虎柄の毛並みを撫ぜる。ふわふわですべすべな毛並みで、何ともいえない感覚だ。ぬいぐるみと獣毛の合間の手触りとでも言えば良いのだろうか。小さくぐるぐると鳴く音を聞くと、少しリラックスできた。アニマルセラピーと言う奴だろう。

「レイル様、雷神ばかり構ってますと、風神が妬きますよ」

 声がした方を向くと、グランデと風神が入ってくる所だった。共に、美味しそうな匂いも漂ってくる。

「そんな事ないと思うけど」

 実際は、雷神が擦り寄ってくる率が高いせいだ。雷神は遊んでとよく飛びかかってくるが、風神は寄り添う様に側にいてくれる。

 雷神と風神は、性格が逆じゃないかと思うのだ。虎……猫科の動物ならマイペース、ツンデレとかのイメージだと思う。狼……犬科ならもっと活発的なイメージだ。まぁ、一概に全部がそうとは、言えないのであり得なくはないのだが。

「取り敢えずは、ひと段落したと思いまして。夕食です」

 グランデが夕食の配膳をしてくれている。今夜は、暖かそうなスープとサラダ、カットされた果物、燻製された肉とパンだ。量的にも、二人分。グランデも一緒に食べるという事だろうか。雷神を太ももから退けて、椅子から立ち上がる。用意された席に近づき座った。前回の反省を活かして、何も問わない。食べるのか聞くと、地雷を踏みそうだからだ。

「ありがとう。グランデも食べよう」

「わかりました」

 夕食をグランデと一緒に食べ始めた。
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