79 / 97
1
闇の深淵
しおりを挟む
いくつもの扉を通り過ぎ、やっと目的の扉が見えてきた。
「そこの扉だ!」
狼が体当たりで扉を乱暴に押し開き、中へと飛び入った。グランデが椅子に座ってこちらを見ている。驚いた表情をしているが、その姿はなぜか少しやつれている様に見える。
「レイル様、どうなされたのですか!?」
椅子から立ち上がったグランデ。特に異変はない様に見える。
「グランデー!!」
「れ、レイル様!」
狼から飛び降り、グランデに抱きつく、その体を両手で摩りながら無事を確かめる。怪我はなさそうだ。何事もなかった事に安堵した時、グランデの体から引き離され、グランデが俺の顔を覗いてきた。
「何があったんです?」
「あ、俺……その、そうだ!! ら、ライトが!!」
グランデが無事だった事に安堵している場合ではない。ライトと虎が、今この時にも戦っているのだ。虎がいるとしても、体の自由が効かないライトは、圧倒的に不利だ。
「ロッドが! ライトが殺されちゃう!」
何をどう言っていいのかわからない。焦ってばかりで頭が働かず、言葉にならない。グランデが困ったような顔をしている。
「レイル様、落ち着いて……そうですか。一から、聞いている暇もない様ですね」
グランデの視線が、俺から離れ後ろへと移っていく。その視線を追っていくと、開け放れている扉から、悠々とロッドが入って来ていた。
「逃げてんじゃねぇよ」
ロッドが、ここにきてしまった。という事は……。
「あ、あぁ。ら、ライトは」
「あの男か……お前の所為でいなくなったさ」
ゆらりとロッドの持つ長剣の切先が俺に向く。鮮血に濡れている刃がお前の選んだ道は間違っていたという。ライトのいないこんな世界なんて……現実にしてはダメだ。どうすれば良かったんだ。どうすれば、死を回避できるんだ……。死ねば、戻れるのだろうか。いや、夢のレイルが言っていた条件が分からない以上、死ぬのは避けなければならない。消えた光を追いかけるのも許されないのだ。ライトが、もう……この世に居なくなった……。
崩れ落ち、膝をつく。また、俺の所為で大事な人がいなくなった。いくつ俺は、人を殺し続けるんだ。両手で溢れる涙を隠す。
「お前に、泣く権利なんてない」
そうだ。俺は泣く事は許されない。
「お前の選択に、いくつ命が葬られたか」
そうだ。俺の所為で、人が死ぬ。
「お前がいなければ。助かった命がいくつある」
そうだ。俺がいなければ……生まれなければ良かったのに……。
ロッドの言葉に傷ついていくのは、俺なのか。レイルなのか。分からなくなった。
足元が崩れ落ち、暗闇の深淵に落ちていくのは、俺なのか。レイルなのか。いっそのこと、地獄まで落ちてしまえばいい。それなら、罰をもらえるのかもしれない。
どうか、俺を許して。
「そこの扉だ!」
狼が体当たりで扉を乱暴に押し開き、中へと飛び入った。グランデが椅子に座ってこちらを見ている。驚いた表情をしているが、その姿はなぜか少しやつれている様に見える。
「レイル様、どうなされたのですか!?」
椅子から立ち上がったグランデ。特に異変はない様に見える。
「グランデー!!」
「れ、レイル様!」
狼から飛び降り、グランデに抱きつく、その体を両手で摩りながら無事を確かめる。怪我はなさそうだ。何事もなかった事に安堵した時、グランデの体から引き離され、グランデが俺の顔を覗いてきた。
「何があったんです?」
「あ、俺……その、そうだ!! ら、ライトが!!」
グランデが無事だった事に安堵している場合ではない。ライトと虎が、今この時にも戦っているのだ。虎がいるとしても、体の自由が効かないライトは、圧倒的に不利だ。
「ロッドが! ライトが殺されちゃう!」
何をどう言っていいのかわからない。焦ってばかりで頭が働かず、言葉にならない。グランデが困ったような顔をしている。
「レイル様、落ち着いて……そうですか。一から、聞いている暇もない様ですね」
グランデの視線が、俺から離れ後ろへと移っていく。その視線を追っていくと、開け放れている扉から、悠々とロッドが入って来ていた。
「逃げてんじゃねぇよ」
ロッドが、ここにきてしまった。という事は……。
「あ、あぁ。ら、ライトは」
「あの男か……お前の所為でいなくなったさ」
ゆらりとロッドの持つ長剣の切先が俺に向く。鮮血に濡れている刃がお前の選んだ道は間違っていたという。ライトのいないこんな世界なんて……現実にしてはダメだ。どうすれば良かったんだ。どうすれば、死を回避できるんだ……。死ねば、戻れるのだろうか。いや、夢のレイルが言っていた条件が分からない以上、死ぬのは避けなければならない。消えた光を追いかけるのも許されないのだ。ライトが、もう……この世に居なくなった……。
崩れ落ち、膝をつく。また、俺の所為で大事な人がいなくなった。いくつ俺は、人を殺し続けるんだ。両手で溢れる涙を隠す。
「お前に、泣く権利なんてない」
そうだ。俺は泣く事は許されない。
「お前の選択に、いくつ命が葬られたか」
そうだ。俺の所為で、人が死ぬ。
「お前がいなければ。助かった命がいくつある」
そうだ。俺がいなければ……生まれなければ良かったのに……。
ロッドの言葉に傷ついていくのは、俺なのか。レイルなのか。分からなくなった。
足元が崩れ落ち、暗闇の深淵に落ちていくのは、俺なのか。レイルなのか。いっそのこと、地獄まで落ちてしまえばいい。それなら、罰をもらえるのかもしれない。
どうか、俺を許して。
41
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる