死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

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ふわふわともこもこ

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 強い衝撃が俺を襲ってきた。

「ぐぅ!!」

 痛みはなかった。苦しさもない。それもそうだ。苦しげに蹲っているのは、俺じゃない。

「グルルゥゥ」

 灰色のふわふわが目の前にある。獣の唸り声は、このふわふわが出している様だ。その隣に、虎柄のもこもこもいる。どこから来たのか分からない二つのふわふわは、ロッドを突き飛ばし、俺を救ってくれたようだ。

「くそ! なんで、魔ぐるみがここにあるんだ」

「魔ぐるみ……」

 魔ぐるみってなんだ。そういえば、部屋の隅に飾ってあった筈の犬のぬいぐるみと猫のぬいぐるみがない。まさか、あのぬいぐるみ達が動き出したと言うことなのか。

「レイル様……」

「ライト」

「逃げろ。魔ぐるみに掴まって、グランデの所まで」

「ライトを置いていく訳にはいかない」

「心配するな。少しずつだが、動けるようになってきている」

「だけど、俺はライト」

「行け! 狼!! レイル様を主人の元へ連れていけ!!」

 俺の元へ犬……いや、狼が駆け寄ってきた。乗れと、漆黒の瞳が訴えてくる。俺がここにいても邪魔になるだけ、グランデを呼びにいくのが賢明だって分かっている。それでも、狼の背に跨るには決意が必要だった。不安を押さえつけ、ライトを置いていく。それが、これほども辛いなんて思いもしなかった。溢れそうな感情を抑えようとしても、ダメだった。レイルはこんな事で泣いたりなんてしない。それなのに、溢れてしまう。

「すぐに、戻ってくる……だから」

「レイル様、どうかご自愛を」

 ライトの言葉で、決意が揺らでしまわない内に狼に跨った。扉へと駆け出す狼に振り落とされないよう必死になってふわふわの毛皮に掴まった。

「逃すかぁぁ!!」

 ロッドの声に振り返ると、こちらへと短剣が飛んで向かってくるのが見えた。真っ直ぐと向かってくるそれは、確実に俺の首元へと突き刺さるだろう。やられると思ったその時に、それを防ぐ様に、虎柄……虎の魔ぐるみが短剣を猫パンチで叩き落とした。

「ガアアァァァ!」

 虎が両前足を振り上げて、ロッドに襲いかかる場面で、俺は自室から狼に乗って脱出した。

 静かすぎる屋敷の中を狼に乗って駆け抜ける。唯一聞こえてくる音は、毛足の長い絨毯の上でもドンドン重く響く狼の足音だけだ。レイルの部屋であんなにドタバタしているというのに、おかしすぎる。何が起こっているんだ。

 グランデに何かあったら、どうしようと不安が込み上げてくる。グランデも襲われていたら……。

「頼む、急いでくれ」

 俺の想いを汲んでくれたのか狼は速度を上げて駆けていった。
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