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最後

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 頬を叩かれる感覚で快楽に染まった頭が段々と霧が晴れていく様に覚醒していく。

「ブレイド様。ほら、貴方は罪深いと思いませんか」

 何が罪深いというか。俺が何をしたというのか。犯されただけだ。何も悪い事なんてしてない。それなのに、何故か見たくないと思う。見てはいけない。見てはならないと誰かが言ってくるのに、霧がかっていた視界が晴れていく。

「健気に従ってくれる者へ、何という仕打ちだ」

 晴れた視界に映ったものは、とても残酷だった。

「ら、ライト……」

 ライトの髪、顔には、俺の吐き出した白濁が付着していた。ライトを汚した。俺の所為だ。俺のせい……。

「レイル様……」

 ライトの瞳が陰っている。綺麗だった青い瞳が台無しだ。こんなにも悪い事をしてしまったんだ。謝らなければ。ライトは俺の所為でこんな事になったんだから。ごめんなさいと謝らなければならない。

「ライト、ごめぐぅぅ!」

「レイル様ぁあああああ!!!!!」 

 腹の奥で熱いものが広がるのを感じると共に、激痛が俺を襲う。痛みを訴える場所を見下ろすと、赤黒い切先が俺の胸から突き出ていた。

「謝ってんじゃねーぜぇ!」

 傷の男のものと剣が俺の体から抜かれた瞬間、溢れ出ていく命と白濁。支えを失った俺は崩れ落ちた。痛い痛いイタイイタイ、いたい……どこが痛いのだ。胸なのかそれとも、心なのか。どんどんと体から命が溢れ出ていく。熱かった体は段々と凍えそうな程さむくなっていった。

「レイル様! レイル様ぁあああ!!」

 俺に血と白濁に汚れたライトが、ゆっくりと右手を伸ばしてくるのがぼやけた視界に映る。どうしてもライトの表情がぼやけて見えない。厄介な俺がいなくなって嬉しく思って笑っているのか。それとも、悲しんでいてくれているのかライトの顔が最後に見たかった。

「心配するな。お前も一緒だからよ」

 ぼんやりとした傷の男の陰がライトに向かっていく。やめてくれ! ライトは何もしていない。殺される理由なんてないのに、ただ俺と一緒に居ただけなのに。いや、それが罪だというのか。それだけだというのに。

 やめろと叫びたかった。それなのに、溢れるのは声じゃなくて、血と嗚咽だけだ。

「レイル様。お守りできず、申し訳」

 ライトの伸びていた右手が赤黒く染まった絨毯に落ちるのを見たのが、俺の記憶の最後だった。

 ライトに謝れなかった。それだけが、心にいつまでも張り付いて、苦しい。後悔してもしきれない。白い世界にただただ浮かぶ俺は、ライトに謝り続ける。ごめんなさい、ごめんなさいと、許してくれるその人はもう居ないのに。
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