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死の足音
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何が起こったのか分からず、ぼんやりとしてしまった。段々と、なにが起こったのか理解していく。足元へ視線を下ろしてみると、崩れ落ちたライトが倒れていた。
「ライト!」
倒れたライトに近寄り、首筋に指をあて脈をとる。トクトクと伝わってくる振動に安堵した。良かった。生きてる。しかし、ライトは身動きひとつしない。
「くそ! 動けない……れ、レイル様、逃げろ!」
「ライト?」
逃げろって、どうして……こんな状態のライトを置いていくなんて俺には、できない。早く、医者を呼ばなければ。
「そ、そんな事よりも」
「悪運が強いとは、こう言う事か」
背後から、聞こえてくる声に恐怖で身体が震えてくる。ひたひたと死が近づいてくる。
「あの毒から、よく復活したのもだな。ブレイド様よ」
振り返ると、そこには俺に毒を注射してきた傷の男がいた。ライトが逃げろと言ったのは、そういうことだったのか。右手に持つ長剣の切先が俺の首筋にあった。殺される。死にたくない。少しでも時間を稼ぎたくて、言葉を無理やり吐き出す。
「ど、どうして、俺を狙う」
「どうしてだと。よくその口が言えたものだ」
元々、重低音だった声が、更に低く唸る様になった。怒らせてしまった。首筋に痛みが走る。どうやら、少し切られた様だ。このまま首を刎ねられるかもしれないと、さらに恐怖が襲ってくる。
「ご、ごめんなさい。殺さないで……」
喉奥から出てきた声は、震えていた。俺は誰にも何もしていないのに、謝ってしまった。レイルの行いで、殺されてしまうのか。
「……随分と、女々しくなったものだな。以前の覇気は無くしたのか。つまらん男だ」
「やめろ! 手を出すな!!」
ライトの悲痛な声が、部屋中に響く。その声を聞いた傷の男はくっくっと笑った。不気味な笑み。何かろくでもない事を考えついたような表情を浮かべている。
「もの好きもいると言うことか……面白い。ただ殺すのもつまらんからな」
傷の男が長剣を鞘におさめ、ニヤついた顔で俺へと左手を伸ばしてくる。その手から逃れようと立ちあがろうとしたが、立てなかった。足に力が入らない。それだけではない。身体からも力が抜けていく。何が起こっているんだ。
「やっと効いてきたか。ブレイド様に痺れ霧はなかなか効きずらいようだな」
痺れ霧ってなんだ。魔法の一種だろうか。
荷物を運ぶように、肩に担がられる。男の肩が腹に食い込み、苦しい。わざと、自重がかかる様に担がれている様だ。
「何をする! レイル様を離せ!」
「何をするかって。大事なものが傷ついていくのを見ているんだな」
運ばれた先は、ベッドだった。乱暴にベッドへ放り投げられる。逃れようとしたが、傷の男の顔が目の前にあった。
「さぁ、始めようか」
※次回は残酷な表現があります。苦手な方はお気をお付けて下さい。
「ライト!」
倒れたライトに近寄り、首筋に指をあて脈をとる。トクトクと伝わってくる振動に安堵した。良かった。生きてる。しかし、ライトは身動きひとつしない。
「くそ! 動けない……れ、レイル様、逃げろ!」
「ライト?」
逃げろって、どうして……こんな状態のライトを置いていくなんて俺には、できない。早く、医者を呼ばなければ。
「そ、そんな事よりも」
「悪運が強いとは、こう言う事か」
背後から、聞こえてくる声に恐怖で身体が震えてくる。ひたひたと死が近づいてくる。
「あの毒から、よく復活したのもだな。ブレイド様よ」
振り返ると、そこには俺に毒を注射してきた傷の男がいた。ライトが逃げろと言ったのは、そういうことだったのか。右手に持つ長剣の切先が俺の首筋にあった。殺される。死にたくない。少しでも時間を稼ぎたくて、言葉を無理やり吐き出す。
「ど、どうして、俺を狙う」
「どうしてだと。よくその口が言えたものだ」
元々、重低音だった声が、更に低く唸る様になった。怒らせてしまった。首筋に痛みが走る。どうやら、少し切られた様だ。このまま首を刎ねられるかもしれないと、さらに恐怖が襲ってくる。
「ご、ごめんなさい。殺さないで……」
喉奥から出てきた声は、震えていた。俺は誰にも何もしていないのに、謝ってしまった。レイルの行いで、殺されてしまうのか。
「……随分と、女々しくなったものだな。以前の覇気は無くしたのか。つまらん男だ」
「やめろ! 手を出すな!!」
ライトの悲痛な声が、部屋中に響く。その声を聞いた傷の男はくっくっと笑った。不気味な笑み。何かろくでもない事を考えついたような表情を浮かべている。
「もの好きもいると言うことか……面白い。ただ殺すのもつまらんからな」
傷の男が長剣を鞘におさめ、ニヤついた顔で俺へと左手を伸ばしてくる。その手から逃れようと立ちあがろうとしたが、立てなかった。足に力が入らない。それだけではない。身体からも力が抜けていく。何が起こっているんだ。
「やっと効いてきたか。ブレイド様に痺れ霧はなかなか効きずらいようだな」
痺れ霧ってなんだ。魔法の一種だろうか。
荷物を運ぶように、肩に担がられる。男の肩が腹に食い込み、苦しい。わざと、自重がかかる様に担がれている様だ。
「何をする! レイル様を離せ!」
「何をするかって。大事なものが傷ついていくのを見ているんだな」
運ばれた先は、ベッドだった。乱暴にベッドへ放り投げられる。逃れようとしたが、傷の男の顔が目の前にあった。
「さぁ、始めようか」
※次回は残酷な表現があります。苦手な方はお気をお付けて下さい。
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