死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

文字の大きさ
上 下
71 / 97
1

死の足音

しおりを挟む
 何が起こったのか分からず、ぼんやりとしてしまった。段々と、なにが起こったのか理解していく。足元へ視線を下ろしてみると、崩れ落ちたライトが倒れていた。

「ライト!」

 倒れたライトに近寄り、首筋に指をあて脈をとる。トクトクと伝わってくる振動に安堵した。良かった。生きてる。しかし、ライトは身動きひとつしない。

「くそ! 動けない……れ、レイル様、逃げろ!」

「ライト?」

 逃げろって、どうして……こんな状態のライトを置いていくなんて俺には、できない。早く、医者を呼ばなければ。

「そ、そんな事よりも」

「悪運が強いとは、こう言う事か」

 背後から、聞こえてくる声に恐怖で身体が震えてくる。ひたひたと死が近づいてくる。

「あの毒から、よく復活したのもだな。ブレイド様よ」

 振り返ると、そこには俺に毒を注射してきた傷の男がいた。ライトが逃げろと言ったのは、そういうことだったのか。右手に持つ長剣の切先が俺の首筋にあった。殺される。死にたくない。少しでも時間を稼ぎたくて、言葉を無理やり吐き出す。

「ど、どうして、俺を狙う」

「どうしてだと。よくその口が言えたものだ」

 元々、重低音だった声が、更に低く唸る様になった。怒らせてしまった。首筋に痛みが走る。どうやら、少し切られた様だ。このまま首を刎ねられるかもしれないと、さらに恐怖が襲ってくる。

「ご、ごめんなさい。殺さないで……」

 喉奥から出てきた声は、震えていた。俺は誰にも何もしていないのに、謝ってしまった。レイルの行いで、殺されてしまうのか。

「……随分と、女々しくなったものだな。以前の覇気は無くしたのか。つまらん男だ」

「やめろ! 手を出すな!!」

 ライトの悲痛な声が、部屋中に響く。その声を聞いた傷の男はくっくっと笑った。不気味な笑み。何かろくでもない事を考えついたような表情を浮かべている。

「もの好きもいると言うことか……面白い。ただ殺すのもつまらんからな」

 傷の男が長剣を鞘におさめ、ニヤついた顔で俺へと左手を伸ばしてくる。その手から逃れようと立ちあがろうとしたが、立てなかった。足に力が入らない。それだけではない。身体からも力が抜けていく。何が起こっているんだ。

「やっと効いてきたか。ブレイド様に痺れ霧はなかなか効きずらいようだな」

 痺れ霧ってなんだ。魔法の一種だろうか。

 荷物を運ぶように、肩に担がられる。男の肩が腹に食い込み、苦しい。わざと、自重がかかる様に担がれている様だ。

「何をする! レイル様を離せ!」

「何をするかって。大事なものが傷ついていくのを見ているんだな」

 運ばれた先は、ベッドだった。乱暴にベッドへ放り投げられる。逃れようとしたが、傷の男の顔が目の前にあった。

「さぁ、始めようか」




※次回は残酷な表現があります。苦手な方はお気をお付けて下さい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...