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ライトの衣装
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ぎゅっと抱き締められて、何事か分からなくて目が回る。
「レイル様! 可愛いじゃねぇか!」
顔を上げれば、ライトの顔が間近に見えた。頭の上にはグランデ以上に先が尖った黄色の三角耳がピコピコと折れたり伸びたりして揺れる。
「ライト。レイル様が折れてしまいます」
「おぁ、そうだな」
若干緩んだ腕の中から脱出した。ライトを見て、唖然とした。
「き、騎士様?」
「ん? まぁ、レイル様を守る兵士ではあるから、間違ってはいない」
両腕を組んだライトが着ている衣装は、騎士の衣装だった。いつも着ているような兵士の服ではない。城の王を守るような騎士様だ。白銀の上着に紋章が並び、腰から下げられている長剣の鞘に宝石と彫刻がありとても美しい。それとライトの笑みが重なり、完全な太陽の騎士様だ。それと、黄色のふわふわとした尻尾。狐の騎士様。
「かっこいい……」
羨ましい。狐の耳と尻尾を抜いて、騎士の格好はカッコ良すぎる。レイルの華奢な体じゃなく、ライトの体だったらなぁ。
「ありがとうよ。俺達よりも、レイル様は猫か?」
ライトの視線が俺の全身に向けられる。少し恥ずかしい。
「そうみたいだ」
「いい趣味ですね。とても似合っていますよ」
グランデが俺達の側にやってくる。二人の視線に胸がドキドキする。
「俺達の衣装を見た瞬間、絶望したが、レイル様のは正解だな」
「なんだよ! 俺はこんな格好より、二人みたいな方が」
「いえ、レイル様はそれで大丈夫です。とても愛らしいですよ」
「あぁ、可愛い。それ以上の可愛いのとかは危ないからだめだ」
別に可愛さを求めていない。俺は、かっこいいとか男らしい衣装を求めているんだ。それに、この衣装以上の可愛いのは危ないとかよく分からん。
「心配、要りません。私がきちんとエスコート致します」
グランデが俺の足元に跪いた。片手を取られ、上目遣いにドキドキする。
「今夜は、私と共に参りましょう」
お、王子様だ! 姫君に対してするであろうこの対応。惚れない奴がいるのだろうか。
「お、俺その」
ダメだめな領主だけど、お願いします。そう言うつもりだったのに、もう片手を誰かに触られているのを感じ、視線を向けるとそこにはライトがいた。グランデと違い、近くに立ち、片手を取られている。柔らかな笑みのおかげか見下ろされているのに、恐怖や嫌悪感を感じない。
「守ってやる、俺と一緒に行こう」
それから、手の甲に落とされる唇の柔らかさに、唖然とした。俺、キスされたのか。それに気づいた瞬間に頬が熱くなるのを感じる。
「あ、俺……」
「「「キャー!!」」」
鼓膜が破れるかと思った。いや、メイドさん達がいたのをすっかり忘れていた。
「かっこいい」やら「可愛い」やら言葉の乱舞で、俺は顔を伏せ両手で顔を覆った。恥ずかしくて、皆の顔を見れない。
「さぁ、此処は私の部屋ですから、出て行って下さい」
「見せ物じゃねぇぞ!」
グランデとライトの声が聞こえる。二人がメイドさん達を部屋から追い出しているらしい。
「さぁさぁ、皆さん行きますよ」
グレアの声が聞こえ、次に扉の閉まる音が聞こえてきた。
「レイル様。大丈夫ですか」
「すまねぇ。あいつらがいるの忘れちまってた」
両手を外し、顔を上げると二人が申し訳なさそうに、眉を下げていた。その姿を見ていると、悪い事をして反省している犬の様に見える。
「大丈夫。ありがとう」
二人が安心した様に、笑った。
「皆で一緒に行こう」
それが俺の答えだ。二人と一緒に行きたい。優しい二人と一緒なら、きっと楽しいだろう。
「そうですね。それでは、行きましょうか」
「おう、行こうぜ」
二人に挟まれて、手を繋ぐ。右手はグランデ、左手はライト。手の大きさも指の細さも違う二人の手だけれど、共通して言えるのはとても柔らかく温かいと言う事だった。
「レイル様! 可愛いじゃねぇか!」
顔を上げれば、ライトの顔が間近に見えた。頭の上にはグランデ以上に先が尖った黄色の三角耳がピコピコと折れたり伸びたりして揺れる。
「ライト。レイル様が折れてしまいます」
「おぁ、そうだな」
若干緩んだ腕の中から脱出した。ライトを見て、唖然とした。
「き、騎士様?」
「ん? まぁ、レイル様を守る兵士ではあるから、間違ってはいない」
両腕を組んだライトが着ている衣装は、騎士の衣装だった。いつも着ているような兵士の服ではない。城の王を守るような騎士様だ。白銀の上着に紋章が並び、腰から下げられている長剣の鞘に宝石と彫刻がありとても美しい。それとライトの笑みが重なり、完全な太陽の騎士様だ。それと、黄色のふわふわとした尻尾。狐の騎士様。
「かっこいい……」
羨ましい。狐の耳と尻尾を抜いて、騎士の格好はカッコ良すぎる。レイルの華奢な体じゃなく、ライトの体だったらなぁ。
「ありがとうよ。俺達よりも、レイル様は猫か?」
ライトの視線が俺の全身に向けられる。少し恥ずかしい。
「そうみたいだ」
「いい趣味ですね。とても似合っていますよ」
グランデが俺達の側にやってくる。二人の視線に胸がドキドキする。
「俺達の衣装を見た瞬間、絶望したが、レイル様のは正解だな」
「なんだよ! 俺はこんな格好より、二人みたいな方が」
「いえ、レイル様はそれで大丈夫です。とても愛らしいですよ」
「あぁ、可愛い。それ以上の可愛いのとかは危ないからだめだ」
別に可愛さを求めていない。俺は、かっこいいとか男らしい衣装を求めているんだ。それに、この衣装以上の可愛いのは危ないとかよく分からん。
「心配、要りません。私がきちんとエスコート致します」
グランデが俺の足元に跪いた。片手を取られ、上目遣いにドキドキする。
「今夜は、私と共に参りましょう」
お、王子様だ! 姫君に対してするであろうこの対応。惚れない奴がいるのだろうか。
「お、俺その」
ダメだめな領主だけど、お願いします。そう言うつもりだったのに、もう片手を誰かに触られているのを感じ、視線を向けるとそこにはライトがいた。グランデと違い、近くに立ち、片手を取られている。柔らかな笑みのおかげか見下ろされているのに、恐怖や嫌悪感を感じない。
「守ってやる、俺と一緒に行こう」
それから、手の甲に落とされる唇の柔らかさに、唖然とした。俺、キスされたのか。それに気づいた瞬間に頬が熱くなるのを感じる。
「あ、俺……」
「「「キャー!!」」」
鼓膜が破れるかと思った。いや、メイドさん達がいたのをすっかり忘れていた。
「かっこいい」やら「可愛い」やら言葉の乱舞で、俺は顔を伏せ両手で顔を覆った。恥ずかしくて、皆の顔を見れない。
「さぁ、此処は私の部屋ですから、出て行って下さい」
「見せ物じゃねぇぞ!」
グランデとライトの声が聞こえる。二人がメイドさん達を部屋から追い出しているらしい。
「さぁさぁ、皆さん行きますよ」
グレアの声が聞こえ、次に扉の閉まる音が聞こえてきた。
「レイル様。大丈夫ですか」
「すまねぇ。あいつらがいるの忘れちまってた」
両手を外し、顔を上げると二人が申し訳なさそうに、眉を下げていた。その姿を見ていると、悪い事をして反省している犬の様に見える。
「大丈夫。ありがとう」
二人が安心した様に、笑った。
「皆で一緒に行こう」
それが俺の答えだ。二人と一緒に行きたい。優しい二人と一緒なら、きっと楽しいだろう。
「そうですね。それでは、行きましょうか」
「おう、行こうぜ」
二人に挟まれて、手を繋ぐ。右手はグランデ、左手はライト。手の大きさも指の細さも違う二人の手だけれど、共通して言えるのはとても柔らかく温かいと言う事だった。
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