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大きなぬいぐるみ
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周囲からの視線を感じる。小声で「凄い」や「大きい」等、コソコソと聞こえる。
「まさか、こうなるとは思いませんでした」
グランデの疲労感漂う声が聞こえてくる。
「同じく」
ライトも同じ様に疲れている様だ。
「二人とも、俺、どっちか持つよ」
大きなぬいぐるみを抱えた二人に申し訳なさげに言う。
「ダメです。レイル様が持って、前が見えなくて転んだらどうするんです?」
「そうだ。俺たちがちゃんと部屋まで持っていてやるから。心配すんな」
「それは、有難いけど」
的当ての主人が持ってきたもの。それは、大きな犬のぬいぐるみだった。直径130cmはあろう犬のぬいぐるみ。満点者への景品だそうで、グランデが抱えている。
ライトが持っている猫のぬいぐるみでさえ、直径120cmはありそうなのに、俺の部屋に入るのだろうか。いや、違った。ついつい、日本の自分の部屋を思い浮かべてしまった。レイルの部屋はバカでかいんだった。
二人は、何故だか俺……レイルにぬいぐるみをくれると言う。嫌われ者のレイルにプレゼントしてくれるというのは、どういう心情なのだろう。ライトが言うには、ぬいぐるみに埋もれたレイルを見たいからだと言うが、それを見て何が嬉しいのだろう。よくわからない。
トボトボと歩きながら、街の入り口で待たせている馬車へと向かう。
その途中、露店の中びっしりと並ぶ本屋が目に入った。店先に近づき、一冊手に取った。タイトルは「神々」と記述されていた。試しに本を開き、ページを捲る。神々は、自身で作り上げた人々に関心を持ち、世話を焼いたと記述されていた。この世界の神々って、人大好きって感じなのか?
「レイル様。何やってんだ」
「あぁ、いや。神々って、人好きなんだと思って」
「いえ、それは違います」
俺の持つ本の覗くように、グランデが近づいてきた。耳の近くで聞こえてくる息遣いに胸のドキドキが止まらない。平常心平常心! 今、ここで避けるような行動を取る訳にはいかない。これ以上、グランデとの溝を広げる訳にはいかないのだ。
「神々には、二種類の神がいまして、恐怖で生き物を従える神と愛で従える神がいるのです。この本に描かれているのは、愛の方の神ですね」
「そうなんだ」
「二種類の神は、対峙していたと言い伝えられています。神々の伝説には多くの言い伝えがあって」
「おい、折角の祭りに勉強は無しにしようぜ」
いつの間にか持っていた本が一瞬で消え、ライトが店の棚に戻していた。
「ライト。少しくらい、勉強されてはどうです? 国や領地を守る者にとって、歴史は少しでも学ぶべき項目だと思うんですが」
「遠慮しておく。それよりも早く戻らないと、だろ」
ライトが、空を指差した。空を見上げると、段々と、茜色の空へと変わっていく所だった。
「それもそうですね。さぁ、急ぎましょう」
グランデ達に急かされ、俺は急ぎ馬車へと急いだ。この時、急いだのを盛大に後悔することになるとは、この時誰も思っていなかった。
「まさか、こうなるとは思いませんでした」
グランデの疲労感漂う声が聞こえてくる。
「同じく」
ライトも同じ様に疲れている様だ。
「二人とも、俺、どっちか持つよ」
大きなぬいぐるみを抱えた二人に申し訳なさげに言う。
「ダメです。レイル様が持って、前が見えなくて転んだらどうするんです?」
「そうだ。俺たちがちゃんと部屋まで持っていてやるから。心配すんな」
「それは、有難いけど」
的当ての主人が持ってきたもの。それは、大きな犬のぬいぐるみだった。直径130cmはあろう犬のぬいぐるみ。満点者への景品だそうで、グランデが抱えている。
ライトが持っている猫のぬいぐるみでさえ、直径120cmはありそうなのに、俺の部屋に入るのだろうか。いや、違った。ついつい、日本の自分の部屋を思い浮かべてしまった。レイルの部屋はバカでかいんだった。
二人は、何故だか俺……レイルにぬいぐるみをくれると言う。嫌われ者のレイルにプレゼントしてくれるというのは、どういう心情なのだろう。ライトが言うには、ぬいぐるみに埋もれたレイルを見たいからだと言うが、それを見て何が嬉しいのだろう。よくわからない。
トボトボと歩きながら、街の入り口で待たせている馬車へと向かう。
その途中、露店の中びっしりと並ぶ本屋が目に入った。店先に近づき、一冊手に取った。タイトルは「神々」と記述されていた。試しに本を開き、ページを捲る。神々は、自身で作り上げた人々に関心を持ち、世話を焼いたと記述されていた。この世界の神々って、人大好きって感じなのか?
「レイル様。何やってんだ」
「あぁ、いや。神々って、人好きなんだと思って」
「いえ、それは違います」
俺の持つ本の覗くように、グランデが近づいてきた。耳の近くで聞こえてくる息遣いに胸のドキドキが止まらない。平常心平常心! 今、ここで避けるような行動を取る訳にはいかない。これ以上、グランデとの溝を広げる訳にはいかないのだ。
「神々には、二種類の神がいまして、恐怖で生き物を従える神と愛で従える神がいるのです。この本に描かれているのは、愛の方の神ですね」
「そうなんだ」
「二種類の神は、対峙していたと言い伝えられています。神々の伝説には多くの言い伝えがあって」
「おい、折角の祭りに勉強は無しにしようぜ」
いつの間にか持っていた本が一瞬で消え、ライトが店の棚に戻していた。
「ライト。少しくらい、勉強されてはどうです? 国や領地を守る者にとって、歴史は少しでも学ぶべき項目だと思うんですが」
「遠慮しておく。それよりも早く戻らないと、だろ」
ライトが、空を指差した。空を見上げると、段々と、茜色の空へと変わっていく所だった。
「それもそうですね。さぁ、急ぎましょう」
グランデ達に急かされ、俺は急ぎ馬車へと急いだ。この時、急いだのを盛大に後悔することになるとは、この時誰も思っていなかった。
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