死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

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的当て屋

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 グランデとライトに挟まれながら、その他の店をまわった。甘いジュース屋や、米を柔らかく生地にし、クレープ程に伸ばした煎餅みたいなものを売るお菓子屋やシャボン玉の様に浮くボールを、吹き矢でうつ的当てみたいな店等沢山巡った。買い食いをし、楽しく過ぎていく時間がとても嬉しかった。だが、そんな時間もあっという間に無くなってしまう。それは、ある露店の前にあった的当て屋が始まりだった。

 得点の書かれた的に向かって、小型のナイフを三本投げて、合計得点で賞品が貰えるシステムだった。その前を通り掛かった時に、目に入った大きな猫ぬいぐるみに対して、純粋な意見としてデカいと言ったのが悪かった。

「本当だな。レイル様は、あぁいうの好きなのか?」

「え? まぁ、可愛いとは思うけど」

「取ってやろうか?」

「え?」

 猫に向けていた視線をライトの方へと向けた。思っていたよりも近いライトの顔にドキドキしてしまう。

「ライト、貴方では無理ですね」

 声の主はグランデだ。相変わらずの氷結の言葉に凍えそう。俺じゃなくて良かった。

「はぁ! 俺が無理だって言うのか!?」

 ライトとグランデが俺を挟んで睨み合っている。何だか、太陽と北風みたいだ。

「貴方は、近距離では無敵だと思いますが、遠距離となるとブレが出ます。弓矢では私より上手く射抜けた事無いじゃ無いですか」

「何だと!」

「まぁまぁ! ライトもグランデも、喧嘩は」

「それでは、どっちがあの猫取れるか勝負しましょう」

「臨むところだ!」

「うそ……だ」

 あの効率主義のグランデから、ライトに仕掛けるなんて。そんなにもイライラしているのだろうか。



 ゲームのルールとして、スタート地点から、的に三本の短剣をなげ、当たった場所に書かれた得点を合計して出た点に合わせて賞品が貰えると言うもの。的の中心から、十点、八点、五点、三点、一点と外側に行くほど点が低くなっていく。ちなみに、猫のぬいぐるみは、二十八点で貰える。

 初めに投げるのは、ライトだ。三本の短刀を持ち、スタート位置ついたライトが俺に向け、一礼してくる。両手を両脇に揃えるキッチリとした一礼だ。

 何故だかわからず、一礼を返そうとした所をグランデに止められた。

「あれは、仕える主に対しての敬意と誓いを示すものです。貴方はただ、頷けば良いのですよ」

 グランデに耳打ちされた事に従い、頷くとライトは的に向かった。その瞬間、圧迫感の様な何かが周りを覆った気がした。その場を離れたくなるような威圧と緊張に体が震える。その発生源は明らかにライトだ。あれが、兵士長と言われる男の威厳。

「少しは、覇気を抑えて欲しいものです。レイル様が怖がるじゃないですか」

「うるせぇ!」

 その言葉と共に放たれた短刀は、真っ直ぐに的へ突き刺さった。刃の根元まで突き刺さた的が、強力な威力であると物語っていた。

「チッ」

 刃が刺さった位置は、ど真ん中のように見えたが、どうやら若干ずれている様だった。八点だ。

「言ったじゃないですか。貴方はブレがあると、もう少し落ち着いてやれば、中央取れますよ」

「わかってる!」

 いや、だとしても五メートル先の的に短剣投げて当たる方がすごいと思うのだが。

 ライトは、果たして真ん中に当てることが出来るのだろうか。いつの間にか、両手を合わせる様に握りしめ、祈っていた。ライトが真ん中当たりますようにと願っていた。

 そのお陰かどうかわからないが、その後、二本とも真ん中へと突き刺さり、合計二十八点で終わった。

 この時点で猫のぬいぐるみは手に入ったも同然だが、店の人に頼んで待ってもらい。グランデの番となった。

 グランデも俺に向かって、一礼をした。その姿勢はとても美しく、凛としたものだった。片手を胸元に当て、優雅に礼をするその姿は、執事というよりも、姫君に礼をする王子様の様に見えた。

 あまりの美しさにぼんやりしていると、戻ってきたライトに肩を叩かれた。

「ほら、頷いてやらんと」

「あ、おう」

 俺の頷きを確認したグランデが、的へと視線を移した。ライトの様な、威圧は感じないが、何とも言えない静けさが周りを包み込んだ。さっきまでがやがやとしていた喧騒がいつの間にか、止んでいた。皆、グランデの一投を今か今かと待っているのだ。
だが、それは、一瞬で終わっていた。

「終わりました」

「ふぇ?」

 いつの間にか、目の前にグランデが立っている。何が、起こったんだ? 俺は確かに、目を開けていた。グランデが投げる仕草も見た。それなのに、的には短刀が三つ突き刺さっている。それも、全てど真ん中だ。速すぎて、見えなかったという事なのだろうか。

「くそ!」

 悔しそうに、地団駄を踏むライトが見えないのかグランデが、淡々と帰りの支度を始めた。

「それでは、賞品を頂いて、帰りましょう。仮装の準備もあります」

「あ、おう」

「あの、大変申し訳ないのですが……」

 俺たちの会話に割り込んできた的当ての主人が持って来たものを見て俺たちは、唖然とする羽目になった。

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