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魔法瓶屋

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「ほら、あそこが祭り会場だ」

 ライトの言葉に行く先を見た。レンガで出来た街の中央の道の両脇には、たくさんの出店が並んでいた。食べ物や飲み物、的当てから輪投げみたいなものまである。久しぶりのお祭りにワクワクしてきた。

「あ! あれは飲み物屋?」

 ある店の前に立ち止まる。大小様々な瓶が沢山並んでいる不思議な店だ。

「あぁ、あれは。魔法瓶だ」

「え? 魔法?」

 レイルの世界に魔法なんてものあったのか? ゲームではそんな設定はなかった筈だ。

「ライト。レイル様は最近市場にも顔を出していらっしゃらないのですよ。そんな説明で、分かる筈が無いじゃないですか」

「あぁ、そうだったな。最近、魔術師達が発明した。簡易的な魔法が詰まった瓶だ」

「使用したい時に、瓶の口を開けるか、割ればいいんです」

「そうなんだ」

 簡易的な魔法。どんな魔法があるのだろう。火や水を操れるとかだろうか。それとも、物を浮かせたりとかだろうか! すごく気になる。

「いらっしゃい! 兵士長殿じゃないですか! これとかどうです? 最近悩んでると聞きましたよ」

「誰が悩んでるって言った! それの世話になるくらいなら、自分で何とかするわ!」

 ライトとお店の人が何やら揉めている。 ライトは、何を勧められたのだろう。気になり、覗こうとした所をグッと後ろへ手を引かれ、ライトから引き剥がされた。振り向くと、グランデが少し困った様な顔をしていた。

「見ない方が良いです。レイル様にはまだまだ先の事ですから」

「どう言う事? ライトは良くて、俺はダメなのか」

「そう言う意味では、ありません。あれは……その……精力剤の一種ですから」

「え……なんて?」

「だから、精力剤です。レイル様にはまだ必要のない物ですから」

「そ、そうだな……」

 グランデとの間に何ともいえない雰囲気が流れる。只でさえ、気まずい雰囲気だったのに、余計に関係が悪化してしまうんじゃないかと不安になった。グランデの顔が怖くて、俯いた。また、あの氷の様な視線が来てるんじゃないかって恐怖と不安で震える両手を握りしめて耐える。

「あ、その……グランデ」

「レイル様。顔を、」

「おぉ、エトワール様ではないですか!」

 ライトと話していた筈のお店の人は、次の標的にグランデを見つけたようだ。俺達の話に割り込んできた。

「エトワール様には、これがオススメですよ。ギンギン間違い」

「要りません」

「それでは、そこの頭巾を被った方。いかがです? 夜のお供に、最高の心地にさせて」

「不要、結構です」

 グランデが俺の前に立つ。店員の持つ、小瓶を隠すような行動だった。

「いや、ですが……」

 グランデの視線を受けながらも、食い下がれるなんて、何と言う商売魂。

「いえ、結構。行きましょう」

 グランデに手を引かれ、そのまま歩き出した。ライトが後から、追いかけてくる。

「いや、参った。まさか裏魔法瓶屋だったとは」

「困ります。あの様な店は! 幼い子達も祭りに参加していると言うのに」

「裏?」

「あぁ、魔法瓶屋では、ごくごく普通の魔法瓶を扱っているんだが、一部の魔法瓶屋がいかがわしい魔法瓶を扱っていてな。それを裏魔法瓶屋と呼んでいるんだ。取り締まりも強化してるんだがな」

「そんな事。覚えなくても大丈夫です。それよりも、違う店に行きましょう」

 結局、グランデと関係修復出来なかった。何かしら、邪魔ばかり入る。このまま、修復出来なかったらどうすれば良いのだろう。不安を抱えたまま、二人の後を追った。
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