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グランデ・エトワールの視点『祭り』
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私の部屋に朝早く現れた二人。目の前には、ライトとレイル様が並んでいる。以前、二人の間にあった距離が少しなくなっている様に見える。ちくちくと刺さるような痛みが胸を襲ってくる。これは何というものだろう。
「それで、朝早く何様ですか?」
レイル様の方へ視線を向けると、気まずそうに俯き視線を外された。自らの原因で避けられる様になったとはいえ、辛い。
「レイル様と街に行こうと思ってな」
「な、何を言っているんです!! 暗殺者に狙われているというのに!」
「分かってる。だがな、ずっと屋敷にばかり居たら滅入るだろ。少しくらい、気分転換が必要だと思ってな」
「それは、そうですが……」
「心配はいらない。俺がレイル様の護衛として一緒に行くし、兵士の中でも最強のエリート連中も連れて行くからよ」
「この事は、レイル様が言い出されたのですか?」
「いや、俺が誘ったんだ」
「……分かりました」
二人がホッとした様な表情をした。先を越されてしまった様だ。
「その代わり、私も同行します」
「グランデも行くのか!」
レイル様の驚く様な声が、苦しい。本当なら、キエナが来なければ、誘っていたのは私だったのに……。
「いけませんか?」
「そんな事は……」
「よし! それなら、祭だし盛大にいくか!」
暖かくなり春の訪れを喜ぶ祭りが、フロワード領の最大都市であるグランドフライにて開催される。多くの出店や見せ物が通りに立ち並び、三日三晩行われる大きな祭りの一つだ。
「それはどうでしょうか。あまり大所帯で行くと、目立ちます。こじんまりと行った方がいいでしょう。それと、夜会に備えて仮装を用意しなければなりません」
昼は、春を祝う祭。夜は仮装し酒やこの季節に採れた作物を飲み食いながら、身分など無しに交流を深める場となっている。
「メイド達が用意してくれるだろ」
「そうかもしれませんが、レイル様はいいのですか? 自身で決めなくても」
そう問いかけられた彼は、唖然としていた。
「か、そう……」
もしかすると、彼が住んでいた所ではあまり仮装する文化がなかったのかもしれない。それに、ライトが詳しく祭りの内容を伝えていない可能性もありうる。
「はい、夜に仮装をして酒を飲み交流を深めるのですが……ライトから聞いていませんでしたか?」
「い、いや! 祭りの内容くらい知ってる!」
あくまでも、知っていると言う事で通す気でいるらしい。怒っている様だが、頬を赤らめている姿を見ると、怖いというよりも何とも愛らしい様に見えてしまう。
「そうですよね。それで、どうされるのですか?」
「お、俺は別に服には興味ないし、メイド達に任せる」
彼と視線がなかなか合わない。ちょこちょこ此方を見ては、俯き視線を外される。胸の内が苦しいが、それも後少しの我慢だ。予定は狂ったが、今日の夜会が終わった後、彼との仲を修復させる。
「分かりました。そう伝えておきます」
「そう決まったら、朝飯食べたら行こうぜ!」
「おう!」
ライトに手を取られ、嬉しそうに頷く彼。食堂へと向かう為、離れていく後ろ姿を視界から消えるまで見ていた。
「それで、朝早く何様ですか?」
レイル様の方へ視線を向けると、気まずそうに俯き視線を外された。自らの原因で避けられる様になったとはいえ、辛い。
「レイル様と街に行こうと思ってな」
「な、何を言っているんです!! 暗殺者に狙われているというのに!」
「分かってる。だがな、ずっと屋敷にばかり居たら滅入るだろ。少しくらい、気分転換が必要だと思ってな」
「それは、そうですが……」
「心配はいらない。俺がレイル様の護衛として一緒に行くし、兵士の中でも最強のエリート連中も連れて行くからよ」
「この事は、レイル様が言い出されたのですか?」
「いや、俺が誘ったんだ」
「……分かりました」
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「その代わり、私も同行します」
「グランデも行くのか!」
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「いけませんか?」
「そんな事は……」
「よし! それなら、祭だし盛大にいくか!」
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昼は、春を祝う祭。夜は仮装し酒やこの季節に採れた作物を飲み食いながら、身分など無しに交流を深める場となっている。
「メイド達が用意してくれるだろ」
「そうかもしれませんが、レイル様はいいのですか? 自身で決めなくても」
そう問いかけられた彼は、唖然としていた。
「か、そう……」
もしかすると、彼が住んでいた所ではあまり仮装する文化がなかったのかもしれない。それに、ライトが詳しく祭りの内容を伝えていない可能性もありうる。
「はい、夜に仮装をして酒を飲み交流を深めるのですが……ライトから聞いていませんでしたか?」
「い、いや! 祭りの内容くらい知ってる!」
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「そうですよね。それで、どうされるのですか?」
「お、俺は別に服には興味ないし、メイド達に任せる」
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「分かりました。そう伝えておきます」
「そう決まったら、朝飯食べたら行こうぜ!」
「おう!」
ライトに手を取られ、嬉しそうに頷く彼。食堂へと向かう為、離れていく後ろ姿を視界から消えるまで見ていた。
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