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氷の刃
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グランデが振り返った時、氷の王子様が降臨していた。久しぶりの氷の王子様に背筋が伸びる。
「レイル様」
「はい!!」
「庭で待っていて下さいと言いませんでしたか?」
「はい」
「分かっているんですか? 貴方は暗殺されそうになったんですよ」
「分かっています……」
「いえ、貴方は全然分かっていません。命が狙われているというのに、一人で屋敷内を歩き回って、私達の苦労を分かっているのですか」
「分かってるって」
段々と、強くなっていく言葉が刃の様に突き刺さる。
「これだから、貴方という人は肯定ばかりで話を聞かない。貴方の命を守る人達の思いってものを知ろうとする努力を少しでもしたらどうですか?」
「……するから」
そう呟き、俯いた。グランデの顔を見ていられなかった。俺を射抜く冷たい瞳に全て凍らされてしまいそうだ。
「から、なんですか? そうやって、自分の都合の悪い話を直ぐに終わろうとするのは、どうかと思いますが」
「おい、グランデ。そう、いじめんなって」
ライトの優しい声が聞こえてくるが、震えが止まらない。
「いじめてなんかいません。これは」
「もう、分かったって!!」
もう、声を抑えられなかった。分かっているんだ。グランデやライト、色んな人達に助けれて俺は生かされているって。それでも、それでも、俺は!!
「れ、レイル様!!」
「おい!」
持っていたカゴを廊下に叩きつけて、駆け出す。もう、誰にも会いたくない。一人になりたい。階段を駆け上がり、レイルの寝室に入り鍵を内側からかけた。
扉を背に、力無く座り込む。怒り、悲しみ、切ない、苦しい。心の中はそんなモノでぐちゃぐちゃだ。なんでこんなにも、辛いのだろう。普通、異世界に転生とか転移とかした主人公は、チートの能力とか、世界最強の力を持っているんじゃないのか。そして、面白おかしく異世界生活を送るんじゃないのか。此処に来て、分からない事ばかりなのに、冷たくされて、体調を崩して、毒殺されそうになって、やっと何もかも好調になって来たと思ったのにまた怒られてしまった。俺の所為だって事は分かっているんだ。グランデの言いたい事も理解している。あの時、勝手な事をしないで、あの場で待って居れば良かった。
帰りたい。元の俺に戻りたい。何もない日々がこんなにも平和で幸せだったなんて知りもしなかった。
溢れる涙に濡れた両手を持ち上げ、手のひらを見てみる。綺麗な雪程に真っ白な手ひらの中には、何もない。傷とあかぎれの指をもつ俺の手はどこにあるのだろう。
もう、疲れた……ダメかもしれない……。
止まらない涙と叫びは部屋に満ちていく様に思えた。ずっと続くと思った涙も、だんだんと枯れて、少しずつ落ち着いてきた。それでも、胸の中に巣食う痛みは消えない。
ゆっくりと立ち上がり、ノソノソと歩いてベッドへと向かう。綺麗に整えられた布団中へと潜り込んだ。着替えるのも億劫で、そのまま体を横たえる。ふわふわの布団に誘われて、眠りへと落ちていく。お願いだ……もう、目覚めないで。そう願って意識を手放した。
「レイル様」
「はい!!」
「庭で待っていて下さいと言いませんでしたか?」
「はい」
「分かっているんですか? 貴方は暗殺されそうになったんですよ」
「分かっています……」
「いえ、貴方は全然分かっていません。命が狙われているというのに、一人で屋敷内を歩き回って、私達の苦労を分かっているのですか」
「分かってるって」
段々と、強くなっていく言葉が刃の様に突き刺さる。
「これだから、貴方という人は肯定ばかりで話を聞かない。貴方の命を守る人達の思いってものを知ろうとする努力を少しでもしたらどうですか?」
「……するから」
そう呟き、俯いた。グランデの顔を見ていられなかった。俺を射抜く冷たい瞳に全て凍らされてしまいそうだ。
「から、なんですか? そうやって、自分の都合の悪い話を直ぐに終わろうとするのは、どうかと思いますが」
「おい、グランデ。そう、いじめんなって」
ライトの優しい声が聞こえてくるが、震えが止まらない。
「いじめてなんかいません。これは」
「もう、分かったって!!」
もう、声を抑えられなかった。分かっているんだ。グランデやライト、色んな人達に助けれて俺は生かされているって。それでも、それでも、俺は!!
「れ、レイル様!!」
「おい!」
持っていたカゴを廊下に叩きつけて、駆け出す。もう、誰にも会いたくない。一人になりたい。階段を駆け上がり、レイルの寝室に入り鍵を内側からかけた。
扉を背に、力無く座り込む。怒り、悲しみ、切ない、苦しい。心の中はそんなモノでぐちゃぐちゃだ。なんでこんなにも、辛いのだろう。普通、異世界に転生とか転移とかした主人公は、チートの能力とか、世界最強の力を持っているんじゃないのか。そして、面白おかしく異世界生活を送るんじゃないのか。此処に来て、分からない事ばかりなのに、冷たくされて、体調を崩して、毒殺されそうになって、やっと何もかも好調になって来たと思ったのにまた怒られてしまった。俺の所為だって事は分かっているんだ。グランデの言いたい事も理解している。あの時、勝手な事をしないで、あの場で待って居れば良かった。
帰りたい。元の俺に戻りたい。何もない日々がこんなにも平和で幸せだったなんて知りもしなかった。
溢れる涙に濡れた両手を持ち上げ、手のひらを見てみる。綺麗な雪程に真っ白な手ひらの中には、何もない。傷とあかぎれの指をもつ俺の手はどこにあるのだろう。
もう、疲れた……ダメかもしれない……。
止まらない涙と叫びは部屋に満ちていく様に思えた。ずっと続くと思った涙も、だんだんと枯れて、少しずつ落ち着いてきた。それでも、胸の中に巣食う痛みは消えない。
ゆっくりと立ち上がり、ノソノソと歩いてベッドへと向かう。綺麗に整えられた布団中へと潜り込んだ。着替えるのも億劫で、そのまま体を横たえる。ふわふわの布団に誘われて、眠りへと落ちていく。お願いだ……もう、目覚めないで。そう願って意識を手放した。
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