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春の訪れ
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その後、俺とデリックは椅子に座り、色々な話をした。花の話や、領地内の情勢について等、特にデリックは街中の事についてとても詳しく教えてくれた。後、レイルの事を領民はどう思っているのかをデリックに聞いてみた。この世界は、領民にも好感度が設定されている。その為、どうしてもレイルの現在の好感度を知る必要があったのだ。グランデやライトに聞く事もできるが、二人は詳しくは教えてくれないだろう。嫌われてますよーとかで、終わりそうだ。
言うのを嫌がるデリックに、怒らないから教えてくれと頭を下げようとした俺。それを寸前で止め、諦め顔をしたデリックが、教えてくれた内容はこうだ!
一つに、レイルの人気は下の下の下の下、最下位に位置しているとか。二つに、レイルなんか死んでしまえと皆陰口を叩いているとか。三つに、誰かレイルを暗殺してくれないかと願っているとか。四つに、次の領主はグランデが良いのでは、いや、ライトが良いのではと、裏で投票を集めているとか。なんだか、とても切なく悲しくなった。
「だから、嫌だったんです」
「そう、だな……。まあ、俺の所為でもあるしな……」
「レイル様……」
デリックの顔を見ていられない。慰めようと、思案しているのが目に見える。話を変えてしまおう。
「そ、そうだ。紅茶で、何かお菓子を作れないだろうか」
「お菓子ですか?」
「そう、いつも世話になっているグランデにお菓子でもやろうと思って、あと、ライトにも酒を使って何かと思っているのだが……」
「お酒に関して、私はあまり詳しくはありません。ですが、紅茶であれば、茶葉を使って、カップケーキとかいかがですか?」
「茶葉でカップケーキとか作れるのか?」
「はい。詳しくは、料理人に相談された方が良いかと思います。お酒を使った料理も何かわかるかもしれません」
「そうか!! ありがとう! それじゃ、今から相談してくる!」
椅子から立ち上がった瞬間、デリックに右手を掴まれた。その手は、父とは違い日に焼け、逞しく健康的な手だった。
「お待ち下さい! 私の手製になりますが、丁度良い茶葉があります。お持ち致しますよ」
「え? でも、良いのか? デリックが大事に作ったものじゃ……」
「構いません。また作れば良いのです。この暖かな庭に居られる様になったのですから」
デリックが笑った。その笑みはぎこちないものだったが、とても嬉しそうだった。もし、あの時、父の気持ちに沿った言葉を伝えていればこんな笑みが見られたのだろうか。少しの切なさと、ほかほかとした気持ちが心に染み渡った。
春が訪れ暖かくなった庭の真ん中で、俺達は笑った。
言うのを嫌がるデリックに、怒らないから教えてくれと頭を下げようとした俺。それを寸前で止め、諦め顔をしたデリックが、教えてくれた内容はこうだ!
一つに、レイルの人気は下の下の下の下、最下位に位置しているとか。二つに、レイルなんか死んでしまえと皆陰口を叩いているとか。三つに、誰かレイルを暗殺してくれないかと願っているとか。四つに、次の領主はグランデが良いのでは、いや、ライトが良いのではと、裏で投票を集めているとか。なんだか、とても切なく悲しくなった。
「だから、嫌だったんです」
「そう、だな……。まあ、俺の所為でもあるしな……」
「レイル様……」
デリックの顔を見ていられない。慰めようと、思案しているのが目に見える。話を変えてしまおう。
「そ、そうだ。紅茶で、何かお菓子を作れないだろうか」
「お菓子ですか?」
「そう、いつも世話になっているグランデにお菓子でもやろうと思って、あと、ライトにも酒を使って何かと思っているのだが……」
「お酒に関して、私はあまり詳しくはありません。ですが、紅茶であれば、茶葉を使って、カップケーキとかいかがですか?」
「茶葉でカップケーキとか作れるのか?」
「はい。詳しくは、料理人に相談された方が良いかと思います。お酒を使った料理も何かわかるかもしれません」
「そうか!! ありがとう! それじゃ、今から相談してくる!」
椅子から立ち上がった瞬間、デリックに右手を掴まれた。その手は、父とは違い日に焼け、逞しく健康的な手だった。
「お待ち下さい! 私の手製になりますが、丁度良い茶葉があります。お持ち致しますよ」
「え? でも、良いのか? デリックが大事に作ったものじゃ……」
「構いません。また作れば良いのです。この暖かな庭に居られる様になったのですから」
デリックが笑った。その笑みはぎこちないものだったが、とても嬉しそうだった。もし、あの時、父の気持ちに沿った言葉を伝えていればこんな笑みが見られたのだろうか。少しの切なさと、ほかほかとした気持ちが心に染み渡った。
春が訪れ暖かくなった庭の真ん中で、俺達は笑った。
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