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グランデ・エトワールの視点『護衛について』

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「もう一つ、話は変わりますが、二人にお願いがあります。暫くの間、レイル様の護衛をこの三人でやって行きたいと思うんですが」

「そうだな。俺ら三人が無難だろう。だが、先生は一般人だ。基本は俺とグランデで回して、二人とも手が空かない時に先生にって事でどうだ」

 私が言いたかった事をこの短時間で考え出すとは、さすが兵士長をやっているだけの事はある。

「俺はそれで構わん」

 ライトの提案にマルバールが頷いたのを見た。皆、レイル様の護衛をしないといけない事に対しては文句や意見はないようだ。とても心強い。

 レイル様……いや、彼を暗殺しようと企てたものは一体誰なのだろうか。犯人が身近にいるという恐怖と不安を抱えながらも、話を進めていく。

「それでは、その方向で。後、ライト。朝と昼間は執務上、私が付き添うことが多いので、私がやります。夜の方を交代制にして」

「ちょっ、ちょっと待てよ! 俺も昼間位なら空けれる」

 ライトが急に慌てて、話に割り込んできた。こいつは、また何を言い出してきたんだ。

「何を言ってるんですか。兵士達の稽古や警備の会議等で忙しいじゃないですか」

 ライトは、兵士長だ。戦に備えたり、領地の警備、また軍事の全てを管理している男。只でさえ日々忙しいのに、昼もレイル様の護衛につける余裕なんてある筈がない。決定事項の書類等の提出ですら遅れ気味だって言うのに。その所為で、こちらの仕事に皺寄せが来ているのだ。

「それを言うなら、お前だって屋敷内の指示やら、沢山雑務があるじゃないか」

 何が目的だ。昼までレイル様の護衛につきたい理由って何だ。なぜだか、譲ってはいけない気がする。

「心配は要りません。私が行かずとも、皆きちんと仕事ができる方々なので、大丈夫です!」

「俺の方だって、あいつらなら訓練位自分達で何とかなる!」

「なぁ、お前達。そこまで言っておいて、何でアプローチ掛けないんだ?」

「「は?」」

 ライトとの話の間に割り込んできたクリストの言葉に、唖然とした。

「アプローチって何です?」

 何にアプローチを掛けろというのだ。いまいち分からない。

「あぁ……。分かった」

 クリストが、腕を組み。少し呆れた様な表情をした。何が分かったと言うのだ。

「何が分かったんだ?」

 私の代わりにライトが少し苛立つように、問いかけている。

「言わない」

「何でだよ!」

「こう言う時は、あえて言わない。その内、理解する時がくるさ」

「先生……壊れたか」

「ライト、失礼ですよ」

「兵士長の事はどうでもいい。護衛について、昼はエトワールで、夜は交代制、緊急時は俺の対応で決定だ。俺は疲れたからひとまず帰る。リハビリや薬については明日、用意してくる」

「ライトの事は、置いておいて。分かりました。それでは、明日お待ちしています」

「おい! お前たち! 俺に対して冷たくないか!!」

 今更、気が付いたようだ。結局、昼の護衛は色々と都合のいい私が担当する事になった。あの後もぐちぐちと文句を言っていたが、ライトには絶対譲らない。レイル様の昼の護衛は私のものだ。

 目を閉じ眠られているレイル様に視線を向ける。こんなにも必死になったのはいつぶりだろう。いつもなら、これから大変なことになりそうだと思うと気持ちが沈んでいたが、今は違う。この感情は何なんだろうか。この締め付けられるような胸の痛みに戸惑いしかなかった。
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