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グランデ・エトワールの視点『犯人について』

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 レイル様がゆっくりと瞳を閉じ、眠られた。今にも消えてしまいそうな切ない表情が和らぎ、穏やかに寝息を立てている。

 戦場や暗殺を何度も経験した男が、今更になって恐怖し寂しがるなんてしない。やはり、レイル様が改心したと言うのは無いに近い。操られている様子もみられない。二重人格だったなんて話は聞いた事もない。それならば、レイル様の中に何か霊的又は魔術的なものが入り込んだと考えるべきなのだろうか。だとしたら、その者にとって死とは身近な物ではなかったのかも知れない。レイル様と違って穏やかなその者……いや、彼と呼ぼう。穏やかな彼はどこから来たのだろう。きっと、平穏な生活を送ってきたに違いない。

「グランデ」

 レイル様のベッドを挟んで反対側からライトが声をかけてきた。その表情は、さっきまでレイル様に向けていたものからガラッと変わって、真面目なものになっている。

「何です?」

「犯人についてだ。お前は思いつく奴いるか?」

「屋敷の中にはいないですね。屋敷内の人間の顔は把握しているので。もし、いるのだとしたら、屋敷に出入りしている商人や客人とかでしょうか」

「それは変だろ。商人や客人も、お前が把握してんじゃないのか」

「えぇ、把握していますが、内通者がいれば話は別です。レイル様は敵が多いですから、私の眼を盗んで忍び込む事は可能です。ライト、貴方の方はどうなんですか?」

「兵士達の中には、レイル様が言った特徴の奴はいない。念の為、怪しい奴が居ないか確認はする」

「では、私の方も確認してみます」

「俺の方でも調べてやる」

そう言って、ライトとの話に割り込んできたのはマルバールだった。

「毒や薬のルートについては、医師の俺の方がツテがあるからな」

「良いのですか? 貴方に危険が及ぶ可能性だってあります。それに、民間人の貴方に迷惑をかける訳には」

「今更だ。毒の治療をした時点で、犯人の邪魔をした事に変わりは無い」

「そうだぜ。グランデ、先生もこう言っているんだ。使えるコマは使わないと。それに、味方は少ないだろうしな」

 ライトの言う通りだ。味方は限りなく少ないだろう。

 ライトは、風邪で意識が朦朧としているレイル様を暗殺しなかった。マルバールは、医師として治療をしてくれた。二人は犯人ではないかもしれない。だが、内通者の可能性はある。

まぁ、彼らからしたら、私も十分怪しいだろう。

「分かりました。無理はしない様にお願い致します」

「分かった」

 二人が頷くのを見届けた。これから、もう一つの話をしなければならない。文句を言われるかも知れないが、やらなければならない。拒否られたとしても、私一人でもやり抜くつもりだ。レイ……いや、彼の為だと覚悟を決めた。
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