死にゲーの世界のキャラに憑依したと思ったら、BL版の世界でした。 ~最悪領主になりきろうとしたが、日本人気質の所為でばれそうです~

番傘と折りたたみ傘

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医師の診察

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 急に、部屋の中に咳払いが聞こえた。グランデでもライトでもない。

「おい。患者が起きたら、呼びに来いって言った筈だが」

 ライトの隣に、少しムッとしたクリストが急に現れた。

「おぉぃぃ! ノック位しろよ! 驚くだろ!」

 それは、俺のセリフだし、ライトが言える立場ではない気がする。

「兵士長は兎も角、エトワール殿が呼びに来なかったのは意外だった」

「申し訳ありません。どこぞの狂人がベラベラと話し続けるものですから」

「うぉぉぉぃぃ! 俺だけの所為じゃねぇだろ!」

「もう良い。これから診察するから、うるさくするなら出てけ」

 そう冷たい視線をライトに向けたクリストが、鞄を手に俺が横になっているベッドへと近づいてきた。鞄をベッド脇に置かれた机の上に置いて、中を探っている。

「具合はどうだ?」

「少しぼんやりするけど、大丈夫」

「そうか。顔色も少し戻ってきたな。どれ、患部を診るか」

 クリストに左腕をとられて、現状を把握した。左二の腕にはぐるぐると包帯が巻かれていた。痛みを与えない為か、ゆっくりと包帯を外していくクリスト。どうなっているのだろうか。解毒薬を打たれた時は、腫れていたが……。まだ、毒が抜けていなければもう一発あの解毒薬を打つ羽目になるのだろうか。正直、もうあの薬は遠慮願いたい。

「ほう、大分落ち着いたな」

 その声に、包帯から現れた患部を見るとまだ赤みはあるが腫れは治まっていた。

「この位なら、後は化膿止めだけでいけるな。点滴も抜いて良さそうだ」

「点滴?」

 そう俺が呟くと、クリストが俺の足元へと視線をやった。それに続く様に視線を向けると、左足の甲に巻かれた包帯の隙間から管が伸び、その先には透明のパックが吊るされていた。

「腕に針を挿れたかったんだが、暴れて外れても困るから足の方にさせて貰った。あれは栄養剤だが、気休め程度にしかならん。食えそうなら、粥でもいいから食え。その方が早く元気になれる」

「レイル様、風邪を引かれてから四日も食事を摂られていないんですよ」

「そうなんだ」                                                         

 四日、俺よく生きてたな……。だから、頭はぼんやりして、体は気怠いのか。

「あと、他に変わりないか診せてもらう」

「え?」

 クリストの手が、俺の寝巻きのボタンを外してきた。部屋との温度差に、体がぶるりと震える。胸から腹まで皆の眼下に晒されていた。

「おい! 何してんだ!!」

「何って、四日も寝ていたんだ。他に異常がないか診ないとダメだろ」

「それにしたって、もう少し配慮ってものを」

「配慮? そんな言葉が兵士長の頭の中にあったとは驚いた」

 そう言いつつも、クリストの手は止まらない。ズボンに手がかかったのを見て、俺は下げられてしまわぬ様にズボンを掴んだ。

「レイル様?」

「あ、あの! クリスト、それは、ちょっと……」

「大丈夫。ちゃんと治してやるからな」

そう言う事じゃなくて!! 俺の心の声はクリストに届かず、力が入らない手ではろくな抵抗もできずに、足首までズボンを下げられてしまった。

そしてこの時、俺は気付いてしまった。気付きたくなかった。だが、世界は無情で俺の思いなんて塵に等しい。俺、下着穿いてない!? な、何でだよ! 羞恥に、頬が熱くなってくる。すかさず、両手で大事な部分を隠す。

 み、見られた……。俺の体じゃなくてレイルの体だが、それでも恥ずかしい。

「上半身、下半身ともに異常はなさそうだ」

 淡々としたクリストの声が聞こえてくる。クリストの声だけ……。そっと、視線を残りの二人に向け、瞬時に視線を逸らした。

 グランデは目元を片手で押さえて、壁の方を向いていた。それでも、若干見える頬が赤みを帯びている様な気がする。ライトは驚きながらも頬を赤く染め、俺と視線があった瞬間、見ない様になのか背中をこちらに向けた。

「だ、だから!! 配慮しろって!!」

「そ、そうですね。できれば、早めに診察を終えて頂けると助かります。部屋の外で、待っていますから終わったら呼んで下さい。ライト、行きますよ」

「あぁ」

 そう言った二人は、そそくさと部屋から出て行った。

「全く、これからだって言うのに」

 小声だった為、聞きそびれてしまう所だった。これからって……。恐々と、クリストへと視線を向ける。いつ俺の足の甲から、針の抜いたのか分からないが、クリストが点滴の道具を鞄にしまっていた。

「そんな不安そうにするな。痛い事はしない」

 その言葉に、安心した俺は強張っていた体の力を抜いた。そんな時、子どもが悪戯する前にしそうな悪い顔をしたクリストが顔一杯に広がった。

「そう、痛い事はなぁ……」
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