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採寸から続く
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痛む頭を押さえながら、薬を飲んだ。その後、着替えをしようと、ベッドから立ち上がるとテーブル上にある黒い物体が視界に入った。近づくとそれは執事服である事に気が付いた。隣に裁縫道具も置かれている。
グランデが用意してくれたのだろうか。執事服を手に取って、広げてみると上質な繊維で作られているのか手触りが良く、重量も軽く紺色の執事服は動きやすそうだった。
だが、案の定手足は長めだ。寝巻きのワンピースを脱ぎ、白のシャツを着てから、試しに上着を羽織ってみる事にした。
上着を羽織り、姿見の前に立った。率直に言おう。ちんちくりんだ。袖口が指の先程まで長く、丈も太腿の半分まで長い。ズボンも穿いてみるがどこぞのお殿さまみたいに裾を引き摺ってしまう程長い。
これは、根本的に直さないといけないかもしれない。まずは採寸をして、それから裾上げや丈を直さないとならない。動きづらい為、ズボンを脱いでから裁縫道具の中を漁ろうとした。その時、ノックの音が部屋の中に響いた。
「レイル様、起きていらっしゃいますか?」
この声、グランデだ。そういえば、メリーナがグランデが来るって言っていたっけ。
「あぁ、起きてる。入ってもいいぞ」
「失礼致しま……す」
扉を開けて入ってきたグランデが俺を見て、立ち止まった。その言葉の間は何だろう。
「どうした?」
「ゴホン! 着替え……いえ、採寸中でしたか」
俺と裁縫道具をグランデの視線が行き来している。その言葉と視線で自分が下半身パンツのみであった事を思い出した。
シャツと少し長めの上着で大事な部分は見えない。恥ずかしがる必要は無いのに、レイルの体は恥ずかしいのか、頬が熱くなってくる。
「あぁ、これから測ろうと思って……」
「それでしたら、私が致しましょう」
「はあぁぁぁああ! 良いって、自分でできるから!」
「何を言っていますか。一人では布が弛んでしまって、きちんとした採寸が出来ないじゃないですか」
「そ、そうだけど……」
そんな事は、わかっている。歪んでいても良いから簡単に採寸を取るつもりだった。そこから、微調整しつつ裾上げすれば良い。それなのに、今ではグランデが裁縫道具から巻き尺とまち針を取り出して、迫ってくるこの状況だ。果たして、グランデに触れられてこの体は大丈夫だろうか。グランデが好きなレイルの体だ、不安しかない。
「さぁ、まずは上着から測りますか」
「あ、いや、やっぱり自分で」
「往生際が悪いです。私が嫌ならライトにでもさせますか?」
「え?」
ライトが採寸を取る? 果たしてそれも大丈夫だろうか。昨日、ライトに触れられただけで、ときめいたこの体。全く、意味がわからない。レイルはグランデとライトどっちが好きなんだろうか。
それとも、まさか……二股!!
「何を考えてるのか分かりませんが、執務に差し支えます。さっさと終わらせますよ」
その言葉に、思想から現実へ意識を戻すと、目の前にグランデの顔があった。キスできる程の近さにビクッと身体が跳ねた。
冷たさを抱えている漆黒の瞳に見つめられ、ドキドキと脈打つ心臓がうるさい。この時、初めてグランデの右眼の黒目の片隅に蒼がある事に気付いた。小さいその蒼をとても綺麗だと思ったのは、俺なのだろうか、それともレイルのなのだろうか。
グランデが更に屈んだ事によって、視界から蒼が消えた。それがとても残念で、落胆した。もっと見て居たかった。
「丈も直す必要がありますね。これなら、新しく仕立てた方が早いと思いますが……」
前身ごろを測る為か、グランデの手の甲が首元に当たった。肌の上を滑るその感触が、擽ったくて何事もない様に演じるのは大変だった。段々と巻き尺が伸びていき、グランデの手の先が大腿に微かに触れた時、我慢出来ず体がビクっと跳ねた。
「どうしました?」
「な、何でもない。勿体無いから、新しく仕立てなくても良い」
「……そうですか」
肌質を楽しむかの様に、円を描き動くその指に大腿を押し付けたくなった。そんな事したら、ただでさえ嫌われているグランデにもっと嫌われてしまうだろう。それでも、触れて欲しくて堪らない。太腿を掌全体で愛撫して欲しい。グランデの手の先が不埒に太腿の付け根をなぞり上げて、ゾクゾクとした感覚と羞恥心に、頬が熱くなっていく。
「どうします……」
「も、もっと……」
「もっと、何ですか?」
分かっているだろうに、俺から言葉を引き出そうとしているグランデは意地悪だ。
「……さ、触って」
「何をです?」
「そ、それは……意地悪しないで」
「意地悪ではありません。貴方様は領主であり、私の雇い主でもあります。命令なしで貴方に触れるのは反逆罪にあたります」
「そう、なのか」
「はい。なので命令して下さい。さすれば、全ては貴方様の思うがまま」
その言葉は甘い様で、冷たい。グランデの気持ちが何一つ入っていない愛撫なんて悲しすぎる。それでも良いから、快感が欲しいと訴えてくる体に抵抗できない。
「お、お、ちん……ちん」
「はい」
「触っ……て」
「よく出来ました」
グランデが笑った。その表情を間近で見れて嬉しいと思ったのに、どこか違和感を感じる。そう、この光景どこかで見たような気がした。
俺の下半身へとグランデの手が伸びていく光景を見て、恥ずかしくなり眼を閉じた。触れられる感覚がいつ来るかのか。じっと、待っていたがいつまで経ってもその感覚は来なかった。
グランデが用意してくれたのだろうか。執事服を手に取って、広げてみると上質な繊維で作られているのか手触りが良く、重量も軽く紺色の執事服は動きやすそうだった。
だが、案の定手足は長めだ。寝巻きのワンピースを脱ぎ、白のシャツを着てから、試しに上着を羽織ってみる事にした。
上着を羽織り、姿見の前に立った。率直に言おう。ちんちくりんだ。袖口が指の先程まで長く、丈も太腿の半分まで長い。ズボンも穿いてみるがどこぞのお殿さまみたいに裾を引き摺ってしまう程長い。
これは、根本的に直さないといけないかもしれない。まずは採寸をして、それから裾上げや丈を直さないとならない。動きづらい為、ズボンを脱いでから裁縫道具の中を漁ろうとした。その時、ノックの音が部屋の中に響いた。
「レイル様、起きていらっしゃいますか?」
この声、グランデだ。そういえば、メリーナがグランデが来るって言っていたっけ。
「あぁ、起きてる。入ってもいいぞ」
「失礼致しま……す」
扉を開けて入ってきたグランデが俺を見て、立ち止まった。その言葉の間は何だろう。
「どうした?」
「ゴホン! 着替え……いえ、採寸中でしたか」
俺と裁縫道具をグランデの視線が行き来している。その言葉と視線で自分が下半身パンツのみであった事を思い出した。
シャツと少し長めの上着で大事な部分は見えない。恥ずかしがる必要は無いのに、レイルの体は恥ずかしいのか、頬が熱くなってくる。
「あぁ、これから測ろうと思って……」
「それでしたら、私が致しましょう」
「はあぁぁぁああ! 良いって、自分でできるから!」
「何を言っていますか。一人では布が弛んでしまって、きちんとした採寸が出来ないじゃないですか」
「そ、そうだけど……」
そんな事は、わかっている。歪んでいても良いから簡単に採寸を取るつもりだった。そこから、微調整しつつ裾上げすれば良い。それなのに、今ではグランデが裁縫道具から巻き尺とまち針を取り出して、迫ってくるこの状況だ。果たして、グランデに触れられてこの体は大丈夫だろうか。グランデが好きなレイルの体だ、不安しかない。
「さぁ、まずは上着から測りますか」
「あ、いや、やっぱり自分で」
「往生際が悪いです。私が嫌ならライトにでもさせますか?」
「え?」
ライトが採寸を取る? 果たしてそれも大丈夫だろうか。昨日、ライトに触れられただけで、ときめいたこの体。全く、意味がわからない。レイルはグランデとライトどっちが好きなんだろうか。
それとも、まさか……二股!!
「何を考えてるのか分かりませんが、執務に差し支えます。さっさと終わらせますよ」
その言葉に、思想から現実へ意識を戻すと、目の前にグランデの顔があった。キスできる程の近さにビクッと身体が跳ねた。
冷たさを抱えている漆黒の瞳に見つめられ、ドキドキと脈打つ心臓がうるさい。この時、初めてグランデの右眼の黒目の片隅に蒼がある事に気付いた。小さいその蒼をとても綺麗だと思ったのは、俺なのだろうか、それともレイルのなのだろうか。
グランデが更に屈んだ事によって、視界から蒼が消えた。それがとても残念で、落胆した。もっと見て居たかった。
「丈も直す必要がありますね。これなら、新しく仕立てた方が早いと思いますが……」
前身ごろを測る為か、グランデの手の甲が首元に当たった。肌の上を滑るその感触が、擽ったくて何事もない様に演じるのは大変だった。段々と巻き尺が伸びていき、グランデの手の先が大腿に微かに触れた時、我慢出来ず体がビクっと跳ねた。
「どうしました?」
「な、何でもない。勿体無いから、新しく仕立てなくても良い」
「……そうですか」
肌質を楽しむかの様に、円を描き動くその指に大腿を押し付けたくなった。そんな事したら、ただでさえ嫌われているグランデにもっと嫌われてしまうだろう。それでも、触れて欲しくて堪らない。太腿を掌全体で愛撫して欲しい。グランデの手の先が不埒に太腿の付け根をなぞり上げて、ゾクゾクとした感覚と羞恥心に、頬が熱くなっていく。
「どうします……」
「も、もっと……」
「もっと、何ですか?」
分かっているだろうに、俺から言葉を引き出そうとしているグランデは意地悪だ。
「……さ、触って」
「何をです?」
「そ、それは……意地悪しないで」
「意地悪ではありません。貴方様は領主であり、私の雇い主でもあります。命令なしで貴方に触れるのは反逆罪にあたります」
「そう、なのか」
「はい。なので命令して下さい。さすれば、全ては貴方様の思うがまま」
その言葉は甘い様で、冷たい。グランデの気持ちが何一つ入っていない愛撫なんて悲しすぎる。それでも良いから、快感が欲しいと訴えてくる体に抵抗できない。
「お、お、ちん……ちん」
「はい」
「触っ……て」
「よく出来ました」
グランデが笑った。その表情を間近で見れて嬉しいと思ったのに、どこか違和感を感じる。そう、この光景どこかで見たような気がした。
俺の下半身へとグランデの手が伸びていく光景を見て、恥ずかしくなり眼を閉じた。触れられる感覚がいつ来るかのか。じっと、待っていたがいつまで経ってもその感覚は来なかった。
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