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グランデ・エトワールの視点『以前と違う行動』

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 朝食なんて食べなかった男が、唐突に食べると言い出した。誰かに言い伏せられたのか? いや、それはありえない。レイル様の独壇場であるこの屋敷で、言い伏せられる者なんて、私以外にいない。

 という事は、どういう事になるのだろうか。改心したのか? いや、それこそありえない。朝食の件だけじゃない。レイル様は何を考えているのだ。

 何度、何を考えているのかと問いかけても、特に何もないとしか言わないレイル様を怪しんだ。いつもなら、こちらが何か聞かずともベラベラと話してくるのに、無言で何かを考えて俯く様子が多々ある。

 それだけではなく、いつも以上に感情を表面へと出し過ぎている。言葉が少ない反面、驚いたり、残念そうにしたり、嬉しそうに微笑したり、ライトに抱きしめられて頬を染めたりと表情は豊かだ。以前と違う行動ばかりに怪しさしか感じない。

 鎌をかける為、いつものレイル様になら絶対しない吐き気がする行動を取ってみた。いつもの彼なら、絶対に喜んで抱きついてくるだろう状況で、今日のレイル様は体を跳ねさせて私から離れた。頬を紅く染め、恥ずかしそうに自らの体を両腕で抱きしめるその仕草に、胸が痛くなった。

 なんだこの痛みは……。その痛みを隠すようにレイル様から離れ、カートを押し応接用のテーブルに近づいた。一呼吸置いてから動揺しているレイル様に、問いを投げかけた。

 私の問いと視線から逃げるように俯いたレイル様。問い掛けに対しての答えが、驚いたからと言うだけだ。確かに、一般的な答えではある。だが、それは以前のレイル様だったとしたらおかしな回答だ。もし、この恥ずかしがる行動がレイル様の考えた思惑だったとして、問い詰められた状況になった途端「お前が近いからだ!」と怒鳴り散らすのが答えになるからだ。それをしないレイル様はおかしくなったのか、それとも誰かに操られているのか、もしくは誰かがレイル様に成りすましているのだろうか。

 このまま質問責めをし続ければ、何か分かるかもしれない。それなのに、胸の痛みがそれを押し止める。何かに追い詰められているようなレイル様の苦しそうな表情に戸惑ったのは事実だ。長い間、一緒にいた筈なのに、見た事のない感情を表すレイル様に何を思ったのか自分でも分からない。

 私が作った朝食を美味しそうに食べるレイル様を見て、痛みを訴えていた胸が静まった。レイル様の食事を作っているのは私だ。料理長でさえレイル様の食事を作るのを怖がる様になってしまった為、仕方がなく作る羽目になった。何を作っても良い悪いの感想を言わない人の為に、料理を作るのは何とも無意味だ。味なんてどうでもいいと無関心で食べていた彼が、美味しそうに頬を緩ませて頬張る姿は、悪政を考えるような人とは思えない程に和やかだ。

 それと、食べる前に両手のひらを合わせて「頂きます」と言うのは、どういう意図があっての行動だろうか。こっそりとしていた為、見逃してしまうところだったのだが。その行動も何かの意味があるのだろうか。

 レイル様が動けば動く程、以前と違う所が目に付いてしまう。このまま何も言わず、もう少しだけ様子を見ても良いのかもしれない。何の根拠もないのに、そう思った私はいつもの私ではなかったのかも知れない。
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