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エピローグ
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あれから、一年経った。
二人に言われるがままに、半年前に俺はワンルームを、海斗と大地は山城家の豪邸を出た。今は、三人で都内のセキュリティ付きの4LDKのマンションに引っ越し住んでいる。俺は、あの豪邸でも良いよって言ったのだが、彼処は狼の巣だからダメだって言われてしまった。まあ、だとしてもあの兄弟は何かしらと理由をつけてやって来ますけど。
ここでやっと気付いたのだが、都内の一等地のマンションをほいほいと買っていた二人の職業についてだ。海斗は有名な著名人御用達のブティックの社長で、大地は超有名な雑誌専属モデルだった。それは、まぁ山城家の仕事なんてやっている暇はありませんと言うことだ。今になって、聖司の言葉の合間にあった間の意味が分かった。
俺が二人を養う宣言していただけあって、恥ずかしい思いをした。
ここまで有名な二人なのに、なんで誘拐事件の事が大々的に表沙汰になってないんだと良太に聞いたこともあった。
だが、「聞かない方が身の為だ」なんて氷河期が来たかの様な顔で、言われたら聞かない方がいいに違いない。山城家の七不思議としておこう。
今、俺は専業主夫をしている。当然の様に、大学卒業したら職に就くつもりだったのに、二人に大反対されてしまった。
「あきちゃん。俺達の為にお願いだから、家に居て!」
「こんなに可愛いんだよ。また、誘拐されたらどうするの!」
「どうしてもって言うなら、俺の秘書やって!」
「俺のマネジャーでもいいよ!」
という様な感じで押し切れて、結局主夫やるハメになりました。
何だかんだで忙しい一年だったが、今日は二人と恋人になった一年目の記念日だ。
朝、仕事に行く二人は早めに帰ると言っていた。何だかんだでいつも帰宅は二十一時以降になる二人が、気合入れて言っていたので信じて待つ事にした。
それに備えて買い物に行き掃除して、リビングを飾り付けして豪華ではないがそれなりの料理を作って二人の帰りを待っていた。
それなのに、時計が二十一時を回っても二人は帰って来ない。いつもは、どちらか片方が十九時には帰ってくるのに……。
何度も時計と玄関につながる扉をみて溜息を吐く。料理も冷めてしまった。
仕方がない、二人は仕事で忙しいんだ。それでも、今日は早く帰って来て欲しかった……。
寂しいと思いながらも、リビングのソファに横になった。眠気が襲ってきていた。色々と張り切っていたせいもあって、疲れていた様だ。段々と落ちてくる目蓋に抵抗できずに眠りに落ちて行った。
「起きて……」
肩を揺すられて、ゆっくりと目蓋を開ける。申し訳なさそうに俺を覗く二人が見えた。
「遅くなってごめんね。急に問題が起きて……いや、言い訳なんて聞きたくないよな」
「そうだね。あきくん、ごめんね」
上半身を起こしながら、二人をみる。スーツ姿の所をみると、帰って来たばかり様だ。
「良いよ。仕事だから仕方がない」
笑って言ったはずなのに、二人が泣きそうな顔をしている。海斗の右手が俺の頬に触れてきた。その右手の指は濡れていた。
俺、泣いていたのか……。
「泣かないで、今日はまだ終わってない」
海斗の言葉に時計を見ると、二十三時になったばかりだった。
「あきくん、聞いて欲しい事があるんだ」
海斗と大地が、互いにポケットから何かを取り出し、俺の目の前に出してきた。
「あきちゃんのお陰で、俺達はここに居る事ができたんだ。この命が終わるまで君と一緒に居たい」
「暗闇に迷う俺達の光となってくれた君に。この先何があってもあきくんを守るよ。だから側に居て欲しいんだ」
二人の手の中にある小さな箱の蓋が開かれた。その中にある指輪が二人の思いを形にしていた。
「「俺達とずっと一緒にいて下さい」」
二人の重なる言葉。流石、双子息ぴったりで驚く。それでも嬉しいと思うのは、愛しい二人からの告白だからだろうか。
「はい。俺の方こそよろしくお願いします」
二人の温かな告白に、ちゃんと笑って応えられたかは、二人が微笑んでくれたことで知った。
海斗の左手薬指には、波の模様のプラチナのリングが嵌っている。俺の左手薬指にはお揃いのプラチナのリングで、小さなピンクダイヤが五連で散りばめられている。
大地の右手薬指には、蔓の模様のプラチナのリングが嵌っている。俺の右手薬指にはお揃いのプラチナのリングで、エメラルドが一つ埋め込まれている。
優しい二人の甘く爽やかな香りに包まれて、愛された俺はこの人生が終わるまで幸せになれると思う。
誘拐されて初めて居たあの白い部屋は、今となって俺は希望の部屋だと思った。
誘拐してくれて、ありがとう。
あの狼の館から救ってくれた二人に感謝を。
そして、これからも、よろしくお願いします。
俺の優しい双子の狼さん。
二人に言われるがままに、半年前に俺はワンルームを、海斗と大地は山城家の豪邸を出た。今は、三人で都内のセキュリティ付きの4LDKのマンションに引っ越し住んでいる。俺は、あの豪邸でも良いよって言ったのだが、彼処は狼の巣だからダメだって言われてしまった。まあ、だとしてもあの兄弟は何かしらと理由をつけてやって来ますけど。
ここでやっと気付いたのだが、都内の一等地のマンションをほいほいと買っていた二人の職業についてだ。海斗は有名な著名人御用達のブティックの社長で、大地は超有名な雑誌専属モデルだった。それは、まぁ山城家の仕事なんてやっている暇はありませんと言うことだ。今になって、聖司の言葉の合間にあった間の意味が分かった。
俺が二人を養う宣言していただけあって、恥ずかしい思いをした。
ここまで有名な二人なのに、なんで誘拐事件の事が大々的に表沙汰になってないんだと良太に聞いたこともあった。
だが、「聞かない方が身の為だ」なんて氷河期が来たかの様な顔で、言われたら聞かない方がいいに違いない。山城家の七不思議としておこう。
今、俺は専業主夫をしている。当然の様に、大学卒業したら職に就くつもりだったのに、二人に大反対されてしまった。
「あきちゃん。俺達の為にお願いだから、家に居て!」
「こんなに可愛いんだよ。また、誘拐されたらどうするの!」
「どうしてもって言うなら、俺の秘書やって!」
「俺のマネジャーでもいいよ!」
という様な感じで押し切れて、結局主夫やるハメになりました。
何だかんだで忙しい一年だったが、今日は二人と恋人になった一年目の記念日だ。
朝、仕事に行く二人は早めに帰ると言っていた。何だかんだでいつも帰宅は二十一時以降になる二人が、気合入れて言っていたので信じて待つ事にした。
それに備えて買い物に行き掃除して、リビングを飾り付けして豪華ではないがそれなりの料理を作って二人の帰りを待っていた。
それなのに、時計が二十一時を回っても二人は帰って来ない。いつもは、どちらか片方が十九時には帰ってくるのに……。
何度も時計と玄関につながる扉をみて溜息を吐く。料理も冷めてしまった。
仕方がない、二人は仕事で忙しいんだ。それでも、今日は早く帰って来て欲しかった……。
寂しいと思いながらも、リビングのソファに横になった。眠気が襲ってきていた。色々と張り切っていたせいもあって、疲れていた様だ。段々と落ちてくる目蓋に抵抗できずに眠りに落ちて行った。
「起きて……」
肩を揺すられて、ゆっくりと目蓋を開ける。申し訳なさそうに俺を覗く二人が見えた。
「遅くなってごめんね。急に問題が起きて……いや、言い訳なんて聞きたくないよな」
「そうだね。あきくん、ごめんね」
上半身を起こしながら、二人をみる。スーツ姿の所をみると、帰って来たばかり様だ。
「良いよ。仕事だから仕方がない」
笑って言ったはずなのに、二人が泣きそうな顔をしている。海斗の右手が俺の頬に触れてきた。その右手の指は濡れていた。
俺、泣いていたのか……。
「泣かないで、今日はまだ終わってない」
海斗の言葉に時計を見ると、二十三時になったばかりだった。
「あきくん、聞いて欲しい事があるんだ」
海斗と大地が、互いにポケットから何かを取り出し、俺の目の前に出してきた。
「あきちゃんのお陰で、俺達はここに居る事ができたんだ。この命が終わるまで君と一緒に居たい」
「暗闇に迷う俺達の光となってくれた君に。この先何があってもあきくんを守るよ。だから側に居て欲しいんだ」
二人の手の中にある小さな箱の蓋が開かれた。その中にある指輪が二人の思いを形にしていた。
「「俺達とずっと一緒にいて下さい」」
二人の重なる言葉。流石、双子息ぴったりで驚く。それでも嬉しいと思うのは、愛しい二人からの告白だからだろうか。
「はい。俺の方こそよろしくお願いします」
二人の温かな告白に、ちゃんと笑って応えられたかは、二人が微笑んでくれたことで知った。
海斗の左手薬指には、波の模様のプラチナのリングが嵌っている。俺の左手薬指にはお揃いのプラチナのリングで、小さなピンクダイヤが五連で散りばめられている。
大地の右手薬指には、蔓の模様のプラチナのリングが嵌っている。俺の右手薬指にはお揃いのプラチナのリングで、エメラルドが一つ埋め込まれている。
優しい二人の甘く爽やかな香りに包まれて、愛された俺はこの人生が終わるまで幸せになれると思う。
誘拐されて初めて居たあの白い部屋は、今となって俺は希望の部屋だと思った。
誘拐してくれて、ありがとう。
あの狼の館から救ってくれた二人に感謝を。
そして、これからも、よろしくお願いします。
俺の優しい双子の狼さん。
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