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助っ人は三男でした

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 隣を見ると、拓也が目元を押さえて唸っていた。

「聞いてられない。聖司の兄貴。あんまり虐めるのはやめようぜ」

「拓也。貴方は黙ってて下さい」

「黙ってられんって、可哀想だろ。最後に伝えて欲しい事が元気に過ごせだぁ。健気過ぎてもうダメだ」

「拓也!」

「それに、俺達を一撃で言うこと聞かせる事ができる切符を使ってこないなんて、良い子過ぎるだろ」

え? そんな最強兵器どこにあるんだよ。

「ふわふわちゃん、いや、彰。俺達は、お前に返し切れないほどの恩がある」

恩? 俺、彼らに何かしただろうか。思い出せない。

「お前を贄として誘拐していなかったら、今頃俺達は居なかった」

もしかして、良太の自殺未遂のことだろうか。しかし、それがどうして最強兵器なるのだろう。

「その顔、分かってないな。良太の兄貴や聖司の兄貴、俺に海斗と大地、幸平もこの世界から居なくなってしまうと所だったといえば分かるか?」

いや、余計に分からん。

「まあ、その話は追々だな。お前は俺達に未来をくれたと言う事だけ覚えていてくれ」

未来? 

「拓也、言い過ぎです」

「さぁ、考えろ。お前なら聖司の兄貴を叩きのめせるぞ」

俺がした事によって、皆んなに未来をあげれた? どう言うことだ。良太の自殺を止めた。その事によって何かが変化したとしたら……。そうか、良太を唆した奴だ。そいつが何かを企んでいたとして、それに必要な事が良太の自殺だった? それを防いだ俺は皆んなの命の恩人って事で良いのか? 何か違うような気もするが……。
 いや、今はそれで行くしかない。折角、拓也がチャンスをくれたんだ。この情報を利用しなければ。


「聖司、俺は海斗と大地に逢いたい! 俺、何をして皆んなを助けたのかよく分からない。だけど、俺がした事で貴方達の未来を救えたんだとしたら、俺の未来にもチャンスを下さい!」

沈黙の間が嫌になる。何にか言ってくれ。

「貴方と言う人は、欲ってものが無いんですか」

そう言われて呆然としてしまった。
いや、言ってるだろ。海斗達に逢いたいって言うのは、欲に入らんというのか。

「私でしたら、もっと大きな事を言いますけどね。お前達の残りの人生寄越せとか。俺の為に一生尽くして、一生遊んで暮らせるように貢げとか」

いや、どこの王様、貴族様だよ。別にそんなものいらん。でも、海斗と大地の残りの人生は欲しいかも……。だとしても尽くせと言うより、一緒に生きて行きたいのが本音だ。

「それは遠慮したい」

「まぁ、それも貴方のいい所って事ですかね」

聖司の中の俺はどんな人なんだろうか。想像するだけで恐ろしい。

「会わせてあげます。ただし、誰にも私達と会った事を言わないで下さいね」

その言葉をどれ程待ち侘びていたか。

「本当か!」

思わず席から立ち上がってしまう程、嬉しかった。海斗と大地に逢えるんだ。この時を、何年待っていたか。

「えぇ、貴方の行動力の勝ちです」

「行動力?」

俺の行動力って、どう言うことだ。

「えぇ、拓也の隣に座った時点で貴方の勝ちです」

「え?」

拓也の隣の席ってどう言うことだ。沢山の疑問符が頭を駆け巡る。

「拓也と賭けをしてました。貴方が私の隣に座ったら、海斗達の事は諦めてもらう。拓也の隣なら、どんな願いでも叶えると」

俺は、思考をやめてしまった。俺の今までの戦略的思考は無意味だったと言う事か。

「私の負けです。私を懐柔する為、隣に座ってくると思ったんですけどね」

「いや、こいつの事だ。正々堂々ぶつかってくると俺は思ってたぜ」

そう言いながら、聖司と拓也が少し冷めてしまった珈琲を口にしている。
こいつら、人を賭け事に使いやがって。段々と苛立ってきた。

「ですが、決め手は貴方の彼らへの想いですよ」

苛立っていた気持ちが聖司のその言葉で、治っていく。二人への想い……。

「貴方なら、弟達を任せても大丈夫だと思ったからです。弟達を宜しくお願いします」

「双子の扱いは、なかなか大変だと思うが宜しくな」

そう言った二人は、優し気に笑っていた。弟思いの優しい兄達につられて、一緒に笑ってしまった。
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