89 / 101
助っ人は三男でした
しおりを挟む
隣を見ると、拓也が目元を押さえて唸っていた。
「聞いてられない。聖司の兄貴。あんまり虐めるのはやめようぜ」
「拓也。貴方は黙ってて下さい」
「黙ってられんって、可哀想だろ。最後に伝えて欲しい事が元気に過ごせだぁ。健気過ぎてもうダメだ」
「拓也!」
「それに、俺達を一撃で言うこと聞かせる事ができる切符を使ってこないなんて、良い子過ぎるだろ」
え? そんな最強兵器どこにあるんだよ。
「ふわふわちゃん、いや、彰。俺達は、お前に返し切れないほどの恩がある」
恩? 俺、彼らに何かしただろうか。思い出せない。
「お前を贄として誘拐していなかったら、今頃俺達は居なかった」
もしかして、良太の自殺未遂のことだろうか。しかし、それがどうして最強兵器なるのだろう。
「その顔、分かってないな。良太の兄貴や聖司の兄貴、俺に海斗と大地、幸平もこの世界から居なくなってしまうと所だったといえば分かるか?」
いや、余計に分からん。
「まあ、その話は追々だな。お前は俺達に未来をくれたと言う事だけ覚えていてくれ」
未来?
「拓也、言い過ぎです」
「さぁ、考えろ。お前なら聖司の兄貴を叩きのめせるぞ」
俺がした事によって、皆んなに未来をあげれた? どう言うことだ。良太の自殺を止めた。その事によって何かが変化したとしたら……。そうか、良太を唆した奴だ。そいつが何かを企んでいたとして、それに必要な事が良太の自殺だった? それを防いだ俺は皆んなの命の恩人って事で良いのか? 何か違うような気もするが……。
いや、今はそれで行くしかない。折角、拓也がチャンスをくれたんだ。この情報を利用しなければ。
「聖司、俺は海斗と大地に逢いたい! 俺、何をして皆んなを助けたのかよく分からない。だけど、俺がした事で貴方達の未来を救えたんだとしたら、俺の未来にもチャンスを下さい!」
沈黙の間が嫌になる。何にか言ってくれ。
「貴方と言う人は、欲ってものが無いんですか」
そう言われて呆然としてしまった。
いや、言ってるだろ。海斗達に逢いたいって言うのは、欲に入らんというのか。
「私でしたら、もっと大きな事を言いますけどね。お前達の残りの人生寄越せとか。俺の為に一生尽くして、一生遊んで暮らせるように貢げとか」
いや、どこの王様、貴族様だよ。別にそんなものいらん。でも、海斗と大地の残りの人生は欲しいかも……。だとしても尽くせと言うより、一緒に生きて行きたいのが本音だ。
「それは遠慮したい」
「まぁ、それも貴方のいい所って事ですかね」
聖司の中の俺はどんな人なんだろうか。想像するだけで恐ろしい。
「会わせてあげます。ただし、誰にも私達と会った事を言わないで下さいね」
その言葉をどれ程待ち侘びていたか。
「本当か!」
思わず席から立ち上がってしまう程、嬉しかった。海斗と大地に逢えるんだ。この時を、何年待っていたか。
「えぇ、貴方の行動力の勝ちです」
「行動力?」
俺の行動力って、どう言うことだ。
「えぇ、拓也の隣に座った時点で貴方の勝ちです」
「え?」
拓也の隣の席ってどう言うことだ。沢山の疑問符が頭を駆け巡る。
「拓也と賭けをしてました。貴方が私の隣に座ったら、海斗達の事は諦めてもらう。拓也の隣なら、どんな願いでも叶えると」
俺は、思考をやめてしまった。俺の今までの戦略的思考は無意味だったと言う事か。
「私の負けです。私を懐柔する為、隣に座ってくると思ったんですけどね」
「いや、こいつの事だ。正々堂々ぶつかってくると俺は思ってたぜ」
そう言いながら、聖司と拓也が少し冷めてしまった珈琲を口にしている。
こいつら、人を賭け事に使いやがって。段々と苛立ってきた。
「ですが、決め手は貴方の彼らへの想いですよ」
苛立っていた気持ちが聖司のその言葉で、治っていく。二人への想い……。
「貴方なら、弟達を任せても大丈夫だと思ったからです。弟達を宜しくお願いします」
「双子の扱いは、なかなか大変だと思うが宜しくな」
そう言った二人は、優し気に笑っていた。弟思いの優しい兄達につられて、一緒に笑ってしまった。
「聞いてられない。聖司の兄貴。あんまり虐めるのはやめようぜ」
「拓也。貴方は黙ってて下さい」
「黙ってられんって、可哀想だろ。最後に伝えて欲しい事が元気に過ごせだぁ。健気過ぎてもうダメだ」
「拓也!」
「それに、俺達を一撃で言うこと聞かせる事ができる切符を使ってこないなんて、良い子過ぎるだろ」
え? そんな最強兵器どこにあるんだよ。
「ふわふわちゃん、いや、彰。俺達は、お前に返し切れないほどの恩がある」
恩? 俺、彼らに何かしただろうか。思い出せない。
「お前を贄として誘拐していなかったら、今頃俺達は居なかった」
もしかして、良太の自殺未遂のことだろうか。しかし、それがどうして最強兵器なるのだろう。
「その顔、分かってないな。良太の兄貴や聖司の兄貴、俺に海斗と大地、幸平もこの世界から居なくなってしまうと所だったといえば分かるか?」
いや、余計に分からん。
「まあ、その話は追々だな。お前は俺達に未来をくれたと言う事だけ覚えていてくれ」
未来?
「拓也、言い過ぎです」
「さぁ、考えろ。お前なら聖司の兄貴を叩きのめせるぞ」
俺がした事によって、皆んなに未来をあげれた? どう言うことだ。良太の自殺を止めた。その事によって何かが変化したとしたら……。そうか、良太を唆した奴だ。そいつが何かを企んでいたとして、それに必要な事が良太の自殺だった? それを防いだ俺は皆んなの命の恩人って事で良いのか? 何か違うような気もするが……。
いや、今はそれで行くしかない。折角、拓也がチャンスをくれたんだ。この情報を利用しなければ。
「聖司、俺は海斗と大地に逢いたい! 俺、何をして皆んなを助けたのかよく分からない。だけど、俺がした事で貴方達の未来を救えたんだとしたら、俺の未来にもチャンスを下さい!」
沈黙の間が嫌になる。何にか言ってくれ。
「貴方と言う人は、欲ってものが無いんですか」
そう言われて呆然としてしまった。
いや、言ってるだろ。海斗達に逢いたいって言うのは、欲に入らんというのか。
「私でしたら、もっと大きな事を言いますけどね。お前達の残りの人生寄越せとか。俺の為に一生尽くして、一生遊んで暮らせるように貢げとか」
いや、どこの王様、貴族様だよ。別にそんなものいらん。でも、海斗と大地の残りの人生は欲しいかも……。だとしても尽くせと言うより、一緒に生きて行きたいのが本音だ。
「それは遠慮したい」
「まぁ、それも貴方のいい所って事ですかね」
聖司の中の俺はどんな人なんだろうか。想像するだけで恐ろしい。
「会わせてあげます。ただし、誰にも私達と会った事を言わないで下さいね」
その言葉をどれ程待ち侘びていたか。
「本当か!」
思わず席から立ち上がってしまう程、嬉しかった。海斗と大地に逢えるんだ。この時を、何年待っていたか。
「えぇ、貴方の行動力の勝ちです」
「行動力?」
俺の行動力って、どう言うことだ。
「えぇ、拓也の隣に座った時点で貴方の勝ちです」
「え?」
拓也の隣の席ってどう言うことだ。沢山の疑問符が頭を駆け巡る。
「拓也と賭けをしてました。貴方が私の隣に座ったら、海斗達の事は諦めてもらう。拓也の隣なら、どんな願いでも叶えると」
俺は、思考をやめてしまった。俺の今までの戦略的思考は無意味だったと言う事か。
「私の負けです。私を懐柔する為、隣に座ってくると思ったんですけどね」
「いや、こいつの事だ。正々堂々ぶつかってくると俺は思ってたぜ」
そう言いながら、聖司と拓也が少し冷めてしまった珈琲を口にしている。
こいつら、人を賭け事に使いやがって。段々と苛立ってきた。
「ですが、決め手は貴方の彼らへの想いですよ」
苛立っていた気持ちが聖司のその言葉で、治っていく。二人への想い……。
「貴方なら、弟達を任せても大丈夫だと思ったからです。弟達を宜しくお願いします」
「双子の扱いは、なかなか大変だと思うが宜しくな」
そう言った二人は、優し気に笑っていた。弟思いの優しい兄達につられて、一緒に笑ってしまった。
0
お気に入りに追加
461
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる