絶望の白 〜狼の館から脱出せよ〜

番傘と折りたたみ傘

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二人の愛をその身に

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 ゆっくりと大地の両手が俺の上半身を撫ぜる。太腿から下腹、横腹を通る。擽ったくて、身震いする。その間、海斗が何処からともなく出したローションを逆さまにして両手に塗り合わせている。

「ふぁ!」

 大地の指がいつの間にか胸に到着していて、悪戯に胸の飾りを弾き、優しく摘まれる。チリチリとした快感に気持ち良くて腰を浮かせる。

「顔真っ赤だ。可愛い」

 目の前で、欲望に目を輝かせた大地から言われて恥ずかしくなる。両手で顔を隠したのを、そっと外される。

「ダメだよ。見たいんだ、あきくんが気持ち良くて堪らなくなる所」

「だって俺恥ずかし、ふぁああ!!」

 後孔からの快楽に頭が真っ白に染まった。ぐちゅぐちゅという水音と共に、快感が襲ってくる。

「俺も、あきちゃんの顔見たいな」

 その言葉に誘われ海斗の方を見る。ローションを纏った右手の人差し指と中指が後孔の中に埋め込まれていた。抽送しながら、腸壁を濡らす様に動く指が弱い所を突く。びりびりとした強い快感に追い込まれていく。

「あ、あ、ん、ああ」

 段々と早まる抽送に、嬌声が上がる。自分の口から出ているなんて思えないほど、甘い喘ぎに自ら聴覚を犯される。

 もう少しでイきそうな時に、指が引き抜かれていく。行かないでと縋る身体を優しく押さえ付けられた。いつの間にか、スラックスと下着を脱ぎ捨てていた海斗の硬く熱いものが後孔に当てがわれる。

「愛してるよ」

 その言葉と共にゆっくりと労る様に海斗の屹立が後孔を割開いて挿入されていく。

「ふぁあ! あ、んん……」

 気持ちが良い。俺の弱い所を突きながら抽送をし、奥へ奥へと挿れられる。このままだと、イってしまう。

「あ、あ! かぁ、い、とぉ……」

 俺を突きながら、海斗が上半身を倒して近づいてくれる。情欲に染まり頬を赤らめた海斗が、どうしたと言う様に首を傾げた。その仕草に胸がきゅんきゅんする。愛おしい。伝えたい、この想いを以前抱かれている時に言えなかったこの言葉を。

「あ、ふあ……。しゅ、あ、きぃ」

 海斗の動きが止まった。あれ、どうしたんだろう。

「くぅぅ、俺も好きだよ」

 俺の中の海斗の屹立が脈動し大きくなった気がする。

「ごめん。もう、我慢できない」

「ああ!」

 深く腰を叩きつけられる。びりびりとした強い快感に飲み込まれていく。段々と早まる抽送。結合部から聞こえる水音。自ら上がる嬌声。愛しい二人からの視線。全てが快感に直結して、頭が真っ白に染まる。

「あぁぁああああ!」


 一気に駆け上がり、落とされた。陰茎から薄くなった白濁が零れ落ちる。イった感覚に頭がぼやける。お腹の中に熱いものが吐き出される感覚が広がった。

 最初の頃は、お腹の中に出された事を悲観していた。だが、今はとても嬉しい。愛おしい人が気持ち良くなってくれたんだと思うと心が温かくなる。

 気怠そうな海斗が俺を覗いてくる。

「好きだ」

 そう言われて、触れるだけの優しいキスが唇に落とされた。俺も好き。そう言葉にしようとしたが、突如抱き起こされて海斗の胸に背中から寄りかかる体勢にされた。背中に温かな海斗の身体を感じる。

「それじゃ、今度俺ね」

 大地の顔が目の前にあった。その瞳は、海斗と俺の情事をみて情欲に染まっている。恥ずかしくて俯こうとした時、大地の唇が目に入る。そう言えば、さっきキスし損なった事を思い出した。キスしたい。生唾をごくりと飲み込んだ。

「そんなにじっと見なくても、してあげるよ」

 その言葉と共に、大地の右手が顎に添えられる。ゆっくりと大地の唇が近づいてきてそっと、触れるだけのキスが落とされた。もっともっと、深いのが欲しい。離れて行こうとする大地の首に両手を伸ばし、引き寄せて唇を重ねる。驚き、薄っすらと開いた唇の間に舌を挿し入れた。そっと大地の舌に舌を触れさせる。少し苦味を感じて、嬉しく思ってしまった。俺のを口にしてくれた証だ。こんなに苦い物を躊躇なく口にしてくれる程愛されている事に、ときめいてしまう。
 奥に引っ込み気味だった大地の舌が、俺の動きに触発されて挽回を図る様に動き出した。舌を絡ませ、甘噛みされる。舌を吸われて、弱い快感がお腹に溜まる。

「ん、ん、んん」

 完全に主導権を取られた俺は、一時退散と舌を引き抜いたのが悪かった。それを追いかける様に大地の舌が口腔に入ってくる。

 頬の裏や歯肉を舌先で舐られて、逃げ損なった舌を絡め取られる。逃げようと後に上体を倒そうとしたが海斗の胸と腕に、囚われる。抵抗できない様に両手を押さえられる。なす術が無くなった俺は、大人しく大地の甘く独占欲たっぷりのキスを受けた。甘く爽やかな香りに包まれて気持ち良くて、俺、幸せだ。
 このまま居られないのか。二人が警察に行ってお務めが終わったら、また恋人同士になれないのかな。誘拐犯と被害者、無理のなのかな。

 そんな事を考えていた時、舌が抜かれた。いつ脱いだのか分からないが、裸の大地が俺を見下ろしている。腹部に聖司とやり合った時に負ったであろう痣があった。
 俺の視線に気付いたのか大地が腹部に手を当てた。

「大丈夫だよ。君の為なら何でもできる」

 その言葉と同時に後孔に硬く熱いものが当てがわれた。

「それよりも、何か余計な事考えてたでしょ。そんな余裕無くてあげるよ」

 ぐちゅっという水音と共に大地の屹立が後孔に埋められていく。海斗より長いそれは簡単に俺の奥を突く。強い快感に思考が妨害される。

「ああ! あ、ああ……ん、ん」

 考える事を許さないと言う様に、段々と抽送が早くなっていく。奥を突かれる度にじわじわとした快感に襲われる。ダメだ、イかされる。愛してる。大好きだ。

「だぁ、ああ! いっ、ちぃ……」

 俺に呼ばれて、この先を察しているのか大地が優し気に微笑んだ。それでも、抽送をやめない。

「ああ、あい、んん! しぃ、てぇる!」

 叩きつけられる腰と奥を突く屹立に、一際強い快楽を与えられて、イかされた。散々吐き出した陰茎からは薄く微量な白濁が溢れた。お腹の中に熱い感覚が広がっていく。優しく温かなものが心に広がって嬉しい。

 二人が俺の顔を覗いてくる。その顔は切なそうだが、優しげに俺を見ている。
 段々と目蓋が落ちて視界が黒く染まっていく。さっき車で寝てたのに、何でこんなに眠いんだ。頭を振って眠気を吹き飛ばそうとするが、頭の中に絡み付き離れてくれない。
 嫌だ。まだ、二人の顔を見ていたい。優しい声を聞いていたい。甘くて爽やかな香りを嗅いでいたい。温かな腕に抱かれていたい。二人と沢山話をしたい。そんな俺の願いを無視して身体は急速に眠りへと落ちていく。

「あきちゃん、大丈夫だ。寝て良い」

「あきくんが、寝付くまで居てあげるから」

 二人の言葉が優しく俺を眠りへと誘う。

「お願い……側に……。置いて……かないで……」

 それを口にして、ぼんやりと映る視界の中で二人が涙したのを見た光景が最後だった。
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