絶望の白 〜狼の館から脱出せよ〜

番傘と折りたたみ傘

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煽る言葉

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 ぼんやりとする頭で、大地が陰茎の先にキスを落としてから離れて行くのを見ていた。あぁ、絶対に飲まれてしまいそうだ。そう思った時、大地の喉仏が上下に動いたのが見えた。

 恥ずかしい。だが、幸平にされた時に感じた嫌悪は感じなかった。逆に、愛されていると感じて、嬉しかった。

「ここじゃ狭いから、ベット行こうか」

 そう言った海斗が俺に両手を伸ばす。おいでって言っているように、微笑んでいる。初めての時の様に、強引に連れて行くつもりは無い様だ。俺の意思で来てほしいかの様に、一歩手前で待ってくれている。

 以前の俺ならば、逃げるチャンスだと思って拒否し、突き飛ばそうとしただろう。

 しかし、今はそんな行動に嬉しく思ってしまう。俺の意思を尊重してくれている。俺の存在を認めてくれるそんな行動に優しさを感じてしまう。

 俺は、自らの意思で海斗の身体に両手を回した。甘く優しい香りに包まれる。このままで居たいと心が訴える。身体もしっくりと海斗の腕の中に収まり、心地よい。心と身体が初めて同じ願いを口にしているように思えた。

 海斗に抱き上げられて、俺はある部屋に連れて行かれた。その部屋に入って、すぐにここは海斗の部屋だと分かった。本人と同じ、甘い香りと優しい雰囲気を漂わせている。

 六畳位の部屋の中にある家具は意外と少ない。机と椅子、クローゼットに、シングルサイズのベットだけだ。

 ベットの上にそっと寝かされる。

「ごめんね。屋敷のベットより小さいけど、スプリングは負けてないから」

 海斗の言う様に柔らかなベットは屋敷と同じ柔らかさだ。

「大丈夫。それよりも海斗の甘い匂いがするから好きだ」

 その言葉を聞いた海斗が、溜息を吐く。大地も頭を抱えている。二人の反応に、もしかして気持ち悪いこと言ってしまったのではと思い、不安になる。

「あきちゃん、俺を暴走させたいの?」

 暴走? どう言うことだ。まさか、それ程気持ち悪い事だったのか!? 弁解しなければ。このまま二人と別れるなんて嫌だ。

「違う、本当に好きなんだ。海斗の甘くて優しい匂いが好きなんだ。大地の爽やかな匂いも大好きなんだって!」

 俺の言葉に、海斗と大地の頬が赤く染まった。あれ、何だか思っていた反応と違う。ここは、そうかと言って微笑んでくれると思っていたのに。

「やばい、俺、理性ぶっ飛びそう」

 大地の瞳が肉食獣の様に、鋭くなる。

「あきちゃん、優しく抱いて欲しいなら、俺達を煽らないでくれ」

 そう言った海斗の瞳も俺の全てを喰らいそうに鋭くなる。
 煽る? 少し考えてみた。自分が何も考えないで言った言葉達を整理する。……まずい。もし気持ち悪いと思われていなかった場合、俺が口にした言葉は完全に相手を煽る言葉に変わる。

「あ、あの、勘違いしてた」

「そう、勘違いだったんだね。だけど、責任取ってもらわないとね」

「そうだな。申し訳ないが、ここまで煽られると流石に抑えられない」

 どうやら、墓穴を掘ってしまったようだ。


 大地に上半身を抱えられ、大地の胸に背中から寄りかかる体勢にされてしまう。見上げると大地の欲望に支配された瞳が間近に見えた。
 そこから下に目線を下げていくと唇に目がいく。ふっくらとして艶のある唇がさっきまで俺のを咥えていたのを思い出し、恥ずかしくなる。それなのに、キスして欲しいと思ってしまった。俺のものを咥えた唇とキスしたいって、以前の俺なら考えられない事だ。それでもして欲しいと願ってしまうのは、大好きな相手だからだろうか。


 キスをして欲しくて、強請る様に身体を起こそうとした。もう少しで届きそうなのを、大地の手に口元を抑えられる。

「後でね。ほら、今なら良いもの見れるよ」

 大地の視線を追う様に前方を見ると、そこには海斗がワイシャツのボタンを外していた。

「良いものじゃない。大地も脱げよ。もう、禁止されているんじゃないんだから」

「勿論、脱ぐよ。後で」

 二人がそんな話をしているのをぼんやりと聞きながら、海斗のワイシャツのボタンが外れた隙間から見える身体から目が離せない。綺麗に割れた筋肉、張りのありそうな肌、良太とやり合った時に負ったであろう痣が淫靡だった。守って貰って負わせてしまった怪我に欲望を感じてしまうなんて、俺は罪人だ。

「海斗、ごめん」


 俺の視線を追った海斗がその言葉を理解したのか、ふわりと笑った。笑った海斗に疑問を感じる。怒らないのだろうか。普通なら、お前の所為だとか言われそうだ。

「これはね、君を無事に守れたって証だよ。とても大切な証さ。それに、もう痛くない」

 そう言い放った海斗が一気にワイシャツを脱ぎ捨て、ベットに上がってくる。両足の間に陣取られ、海斗の両手に両膝裏を持ち上げられて開かされた。

 二人の眼下に俺の陰茎と後孔が晒される。慣れないその行為に頬が熱くなり、無意識の内に閉じようと足に力が入る。それを宥める様に大地の両手が俺の内腿を撫ぜた。柔らかな快感に身体が震える。

「綺麗だよ。リラックスして、俺達に身を任せてごらん」

 優しく微笑む二人包まれた俺は、とても幸せ者だ。例えこの後離れ離れになったとしても、俺はこの想いを幸福を忘れない。
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