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交戦 現る二人

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「それなら、私達もやりますか。大地」

 聖司の両手にグローブが嵌められている。まさか、聖司が武道をやるのか。

「聖司兄さん、俺強くなったよ。以前よりね!」

 聖司まで一気に距離を詰めた大地の右ストレートが繰り出される。それを瞬時に躱した聖司の左フックが大地を襲う。

 ギリギリの所でガードした大地が苦しそうに呼吸している。ただの一撃をガードしただけなのに、それだけの威力があるのか。

「まだまだですね。ちゃんと相手を見て、予測しなさいと教えたでしょう」

「聖司兄さんの教え、なかなか難しくてね。できれば、そばに居て教えて欲しかったよ!」

 大地の渾身のハイキックが聖司を襲ったが、ガードされてしまった。それも息一つ乱れずに。だが、大地の言葉に対して、申し訳なさそうな表情が見えた。

「私にもやらないといけない事があったのですよ。貴方達のためにも」

「どう言う事だよ……」

 困惑した大地が、ハイキックの姿勢から、ゆっくりと体勢を戻した。

「大地。このままでは、ダメなんです。もう、時間がない」

「時間?」

「お願いですから、子羊ちゃんを渡してください」

「それは、無理だって言ってんだろ!」

 右フックを言葉と共に大地が打ち込んだ。それを簡単に防いでしまう聖司。

「そうですよね。貴方を気絶させて奪う事にします。さようなら、大地」

 聖司の連続フックが大地を襲う。攻撃が威力を増しているのが、離れていても衝撃でわかる。大地が防戦を強いられている。

 なんなんだ。聖司がみんなの為にやらないと行けなかった事。このままだとダメになる。時間がない。聖司が抑えていた事。ぐるぐると思考していたその時、硬い物同士が当たり合う音が響いた。その先へと視線を向ける。


 良太と海斗が衝突していた。何度か打ち合いしていた様だ。海斗が苦し気に呼吸をしているに対して、良太は呼吸は乱れていない。

「さぼっていたか。前よりダメだな」

「くっ」

「そんな事では、守れないよ。大事なあの子」

 良太の視線が俺を貫く。射抜かれた様に良太の視線から逃れられない。恐怖を植え付ける様な冷たい視線に身体が震えてくる。それに気付いたのか海斗の姿が良太の視線から俺を守ってくれた。

「守るさ。良太兄さんこそ、何でいなくなった! 居て欲しかったのに!」

 海斗の想いがこもった一撃をいとも簡単に防ぐ良太。

「言っただろ。お前達は知らなくても良い、ただ無事で居てくれればそれで」

「分からない! 何でだよ!!」

「分からなくて良いんだよ。白くんが犠牲になれば、僕達は救われる」

「違う! そんな事させない!!」

 心を乱された海斗の叩きつける様な乱暴な剣技は、いとも簡単に防がれていく。

「もう、終わりだ。海斗。つまらない」

 そう言った良太の剣技が海斗を追い詰めていく。防ぐだけで一杯一杯だ。


 良太がそこまで、頑なになる理由って何だ。知らなくても良い。無事で居てくれれば。
 あれ……なんだ。何かを見落としている。もう少しで真実が見えそうなのに見えない。

 その時、肩を誰かが叩いた。考え事をしていた所為で、目の前に人が立っている事にも気付かなかった。

「すまない」

「ごめんね」

 二つの声に茫然とした。何で、ここにいるんだ。

 拓也、幸平……。
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